"風の人" (1998) 明田川荘之

 オカリーナ集の第二弾。実父への追想をテーマに、じわりと自らの音楽を前に出してきた。

 "風の詩 オカリナの調べ"(1994)に続く本作は、前作同様にプロデュースとアレンジへ坂口博樹のクレジットあり。けれども収録曲13曲中、6曲がオリジナル。録音もアケタの店が明確に記載され、エンジニアには当然島田正明の名前が真っ先にクレジットされた。
 シンセを素材にオカリーナを載せるアプローチは変わらないが、前作のヒーリング・ミュージックっぽい毒の無さから、じわりじわりと明田川の個性が滲みだす。数曲のベースに吉野弘志のクレジットもあり。あからさまなジャズはやらないが、単なるオカリーナ独奏者から、演奏形態にも踏み込んでいる。

 オカリーナの涼しげな音色は、前作ともに健在。童謡に代表される、素朴で純粋な音楽性を本盤へこめた気がしてならない。明田川のオリジナルのうち、(2)、(5)、(6)は、彼が9歳の時に作曲という。素朴ではあるが、ほかの曲と並べて稚拙ではない。アレンジの力とも、演奏の滑らかさとも、そしてメロディの力強さのためともいえる。
 だけど(6)でちょっと聞ける不協和音風のオカリーナ二重奏なアプローチは、今回のアレンジとは思うけれど、フリージャズへの萌芽に見えて面白かった。

 (9)は坂口の曲で映画「わたしのだいすきなおじいちゃん」の主題歌を、本盤用に再収録した。
 明田川のオリジナルでピアノ・ジャズの定番レパートリー(11)は、大陸的な雄大さを前面に出したシンセとオカリーナを中心の作りこんだアレンジも、すごく新鮮だ。

 なお(12)は坂口の曲だが、後年の深夜ピアノ・ソロのライブの締めとして、オケをスピーカーから流してオカリーナを生演奏するプログラムを、僕は何回か体験した。
 (1)と(13)は同じ曲。アルバム冒頭では1分程度の短い導入で終わり、アルバム最後では3分程度かけてじっくり演奏している。

 ともすればBGMで気軽に聴き流してしまう心地よさを多分に含んでいる。本盤よりはまっとうなジャズを明田川の作品として強烈に勧めたい。けれども本盤なら、明田川の日本的センチメンタリズムを、見事に消化して披露した盤として、初めて彼の音楽を聴く人でも素直に聴けるのではなかろうか。

収録曲:(★)が明田川のオリジナル

1.風の人(アイ・リメンバー・タカシ)(★)
2.小鳥のワルツ(★)
3.遠い調べ
4.風砂の彼方へ
5.孝の鹿(★)
6.おばちゃまお手をどうぞ(★)
7.吹けよ風
8.風の小径
9.おじいちゃんのいる町
10.風のささやき
11.ALP(アルプ)(★)
12.村時雨
13.風の人(アイ・リメンバー・タカシ)(★)

Personnel:
明田川荘之(ocarina)
坂口博樹(comp,arr,fl,小鼓,中国の笛)
吉野弘志(b on 2,3,6,7)
高麗正史(vc on 4,6,8,11)
友田ストリングス(strings on 2,3,9,12)
のむらあき(g on 9,12)
二村希一(p on 8,9)
小川浩史(el-b on 9,10)
江尻憲和(perc on 7,9,10)

関連記事

コメント

非公開コメント