"Gideon Gaye"(1994) The High Llamas

 おずおずとナイーブなポップス世界を、見事に作品へ具現化させた傑作。

 マイクロディズニーを経たショーン・オヘイガンのバンド、ハイ・ラマズの2ndがこれ。1stの存在を知らず、ソフト・ポップを期待して買った。そして予想以上のドリーミーさに困惑した。

 アルバム一枚使って、ビーチ・ボーイズの"スマイル"か、ビートルズの"ア・デイ・イン・ザ・ライフ"をやってるような、偏執な内省さをまず感じた。実際は複数の曲が集まってるけれど、大きな組曲を聴いてるかのよう。
 まるでポップス好きな男の精神世界を覗いてる気分だった。モーマスに似た繊細さと強烈な自己意識が混在してる。

 あれから何度、本盤を聴いたろう。個々の楽曲をだいぶ認識してきた。けれどもいまだに、アルバム一枚使った組曲に聴こえるところは変わらない。
 本盤を象徴するのが(3)。オルガン風の清純な演奏と、整って涼やかなハーモニーに乗って、か細くひ弱げに歌声が進む。弦が加わって夢見心地はみるみる強化され、甘くも強固な外部骨格が構築されていく。
 遠慮深げだが、やりたいことはきっちり表現する。優しく頑固な性格を象徴した名曲だ。もちろんメロディや演奏の美しさがあってこそ成り立つ。

 EPでシングル・カットの(5)が持つ涼やかさも良いが、僕の好みはもっと内にこもった密室的な世界。すなわち(6)みたいな響きが延々と続いてほしい。
 (7)や(8)のアレンジ世界がまさに、"Pet Sounds"。当時は本盤の神格化って今ほどじゃなかった。知る人ぞ知る、って感じ。いきなり現れた、余りにも類似した世界観が驚きだった。この(6)~(8)が特にメドレーと聴こえてしまう。

 テープの逆編集風な響きは、むしろビートルズ直結の英国バンドっぽい。そういえばハイ・ラマズが英国のバンドって知ったのも、比較的最近だ。

 そして14分にもわたる大作(11)。これもイギリス的なフレーズや展開がもろに現れた。
 ここでは過去の音楽世界を踏まえた、ハイ・ラマズの価値観による独特なインストがたっぷり聴ける。牧歌的だが解放感は希薄で、探るように着実な音像を作った。

 最後の(13)で(6)のリプライズが、アルバムの締め。夢見心地なインストが噴出する。このしつこさが、本盤のメドレーっぽさをさらに強調した。
 
 ハイ・ラマズは寡作ながら着実にアルバムを重ねていく。だが、本盤ほどのナイーブさは無い。本盤の屈折した甘いポップスを下敷きに方向性を模索し続ける。どの盤も悪くない。でも、僕にとっては・・・。
 本盤が、彼らの最高傑作だ。

 シングル・カットな(5)のPV。初めて見た。

 そしてオーディエンス収録ながら、貴重なライブ映像。質感はライブでも再現してることが分かる。どたどたしたドラムと甘いハーモニーがコツか。2011年5月22日、ロンドンのPurcell Roomにて。大体370席の小箱らしい。


Track listing
1 Giddy Strings
2 The Dutchman
3 Giddy And Gay
4 Easy Rod
5 Checking In, Checking Out
6 The Goat Strings
7 Up In The Hills
8 The Goat Looks On
9 Taog Skool No
10 Little Collie
11 Track Goes By
12 Let's Have Another Look
13 The Goat (Instrumental)

Personnel:
Written-by, Arranged By, Arranged By [String], Vocals, Backing Vocals, Guitar, Piano [Upright], Organ [Vox], Glockenspiel, Synthesizer [Moog], Producer – Sean O'Hagan
Piano [Upright], Organ [Vox], Vibraphone, Harpsichord, Arranged By [String], Backing Vocals, Cello – Marcus Holdaway
Bass – John Fell
Drums, Percussion – Rob Allum

Flute – Marcel Corientes
Viola – Jocelyn Pook
Violin – Anne Woods


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