"Down Blue Marlin Road" John Esposito Trio (2006)

 ハード・バップから欧州のクールなスタイルを通過して、スムーズ・ジャズのフィルター通した熱いナイトクラブ・ジャズ。そんな一枚だ。

 ピアノ・トリオの激しい応酬だが、フリーに炸裂してステージからエネルギー溢れさせるほどではない。けれどもBGMに堕する奥ゆかしさにとどまらない。そんな、中間的な位置づけを感じた。
 演奏拠点はNY。みっちりと個性派ぞろいの街で、立ち位置を定める土性骨はあり。

 ピアニストでリーダーのジョン・エスポジートが主催するレーベル、サンジャンプから06年に発売の本作は、78分みっちりとCD一枚に演奏を詰め込んだ。
 11曲中7曲がスタンダード。しかし曲目クレジットは微妙にタイトルを変えている。
 例えば"It was just one of those things"が"it was just..."に。
 "On green dolphin street""down blue marlin road"へ。スタンダードをそのまま演奏せず、換骨奪胎の意思表示か。

 作曲クレジット無い曲も、オリジナルとは限らない。例えば"April"。和音が膨大に変更されてるが、どっか聞いたことあるメロディだ。"I'll Remember April"じゃないの、これ。3拍子と4拍子が混在する複雑なアレンジに変えた。
 そう、決して本盤の音楽はテンション一発ではない。緻密な楽理と知性の裏付けもある。暴れてるようで、隙が無い。その辺の用意周到さがつまらないともいえるが。

 演奏スタイルは三人が斬り合う。ベースもドラムも単なるリズム・キープではない。オーソドックスに刻みつつも、隙あらばアクセントをずらしノリを変化させるドラム。シンバルを軽やかに鳴らし、ブラシを綺麗に響かせた。どっかテンポが重い。
 ベースはグルーヴを最小限度保ちつつ、ピアノと別のラインを常に提示する。ずっとソロをとってるかのよう。テンポは軽め、かな。
なおこの二人は長いキャリアを持つベテラン。それぞれ下のパーソネル欄にリンクを張った。

 そしてピアノ。個性を主張する曲者二人を立てつつ、独自に奏でる。きっちり左でノリをキープし、右で弾力ある粒のそろったフレーズをばらまいた。指はくるくる回るけれど、どっかいなたい引っかかりあるタッチだ。
 ある意味、ドラムとベースが不要なピアノ。そのうえでドラムとベースを加え、スリリングな音像を狙ったか。

 ジョン・エスポジートは1980年にレコード・デビュー。今までに自レーベルSunjumpをはじめとして、現在までコンスタントにアルバムをリリースし続けてる。ディスコグラフィはこちら

 本盤を聴いてて、寛ぎはちょっと遠ざかる。危なっかしいノリのアンサンブルへ耳が行く。だが演奏に破綻はない。聴いてると、実に細かな気配りを三人が施して、危なげ無いサウンドを作ってることに気付く。
 そんなどっちつかずとも、中途半端ともいえる音作りが楽しめるか否かで、本盤の評価は大きく変わる。

 ぼく?たまに聴く分には、いい。ジャズが洗練され、かといってこじんまりまとまらない。そんな進化の果てみたいな気分を味わうには。尖りまくって個性を押し通した音楽につかれた耳は、むしろ本盤みたいな音楽のほうが癒せる。ずぶずぶのスムーズ・ジャズはかえってイラつくから。

Personnel
John Esposito:p
Ira Coleman:b
Peter O'Brien:ds

このトリオのライブ映像があった。エレピなとこが安っぽいなあ・・・。
本盤発売の2年後、08年11月2日、NYのキングストンにあるビール醸造屋のレストラン、Keegan Aleでの演奏。

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