"いそしぎ"(2009) 片山広明

 衝撃の発掘音源だった。片山広明が25~6歳のライブ演奏だ。


 梅津和時ら"集団疎開"が根城にしてたという、伝説の八王子アローンと、アケタの店でのライブ音源。観客がオープンリールでオーディエンス録音ながら、おおっぴらに収録した音源のため音質はまずまずだ。

 冒頭からテナーが一発、いなないた瞬間に片山の音が聴けるのが面白い。片山は若い時から独特の節回しを持ってたと、よくわかる。
 明田川荘之は1曲のみでゲスト参加。全編参加でないのが残念。ドラムとギターが両ライブ場所共通で、ベースが各場所で異なる。アケタの店は佐藤春樹が加わる2ホーン体制だ。
 片山のパーマネント・バンドでなくセッション的なライブだろうか。
 
 (1)が最大の聴きもの。ぺなっとした音色ながら頼もしいウッド・ベースに導かれ、フリーなサックスがひとしきり吼えた。ホイッスル吹いてるのは佐藤か。オリジナル曲だが作曲者不詳になっている。
 とにかく独特な片山節にやられる。
 さらに、のちの"中央線ジャズ"であるフリーをオーソドックスなジャズに埋め込む、独特の音楽観を既にこの時点で玉成化してることに驚きだ。もっと当時はフリー寄りかと思ってた。

 明田川の色は後半のフリーなタッチのあたりで出てくるが、比較的控えめな演奏だ。しかしリズムとは別の譜割で畳みかけるメロディアスなピアノは彼一流の節回しといえる。
 バタバタするリズムで、粘っこく男っぽいジャズが詰まった。早川と明田川を軸のグルーヴもかっこいい。明田川が27歳。アケタの店開店4年目の演奏か。

 同じアケタの店音源の(3)はフェイドインでいきなり演奏の最中から、ブルーズのジャム・セッションらしい。ここでは堀上高由のエレキギターが、着実なコード弾きで渋い存在感を出す。奔放な片山と畳みかける早川の低音も対照的だ。
 佐藤のトロンボーンは豪放さを抑え、オーソドックスにまとめた。

 八王子アローンの音源は、若干音が歪み気味。(2)はいきなり派手なドラム・ソロ。こちらの石井八允によるベースは、幾分ソロ回しも長めで手堅くまとめた印象あり。
 ただしテーマ部分でノービートになり、ギターとサックスがひとしきりうねったあと、リズムが加わるアレンジはクールだ。

 (4)も(2)同様、スタンダード。八王子アローンでは、ちょっと一般に親しみやすい路線かな?ところどころでフリーな色が漂うけれど。やはり片山のサックスが、頭一つ抜け出ている。強烈な存在感を出す、天賦の才だ。

 録音してくれたこと、リリースしてくれたことが本当に喜ばしい。 

[収録曲]
1.Sombrero Samba
2.The Shadow of your smile
3.The Blues
4.Softly as in a morning sunrise

Personnel;
片山広明(TS) 亀山賢一(DS) 堀上高由(G)
明田川荘之(P on 1)
佐藤春樹(TB on 1,3)早川岳晴(B on 1,3)
石井八允(B on 2,4)

録音:
(1)(3)78年3月25日、アケタの店ライブ
(2)(4)77年7月31日、八王子"アローン"ライブ

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