"My One and Only Love"(2011) AKETA meets KATAYAMA

 最新鋭の明田川トリオを初音盤であり、片山広明の壮絶さを記録した一枚。

 まず明田川トリオの話から。ドラムの楠本は明田川の盟友だが、ベースの畠山芳幸が加わり、めちゃくちゃに強力なアンサンブルが生まれた。
 畠山の特徴はオーソドックスな持ち味ながら、奔放にフレーズを展開させるところ。
 バッキングでありながら、ベースが自在にソロを取るかのよう。楠本のドラミングも微妙にジャストを外したタイミングなため、トリオのノリがハマるとべらぼうにスリリングな音像になる。

 つまり明田川の左手がリズム・キープ役のようになり、ドラムとベースとピアノの右手が盛大にグルーヴし始めるのだ。
 畠山が明田川トリオの一員に、何となくなり始めたのは2011年ごろ。本盤の録音は、そのちょっと前。敢えてトリオ結成前のライブ音源が聴ける、記念すべき盤だ。
 
 同時に本盤は、体調が思わしくなかった片山の様子を封じ込めた一枚でもある。明田川のリーダー作ながら、ここ何枚か続くようなコンセプト。すなわち共演者の様子にも焦点を当てて、スナップ写真のようにアルバム化している。
 片山は近年、体調を崩してた。本ライブの時も、途中から朦朧としてたらしい。だが音楽にはテナーで喰らいつく。片山の才能と意地が本盤で強烈に聴ける。

 明田川と片山の共演歴は長く、数多い。ぼくが観たライブだけでも、04年8月27日同年の10月3日にデュオがあった。うち1回はアケタの店では無く、国立ノートランクスにて。後者の場所でも、何度かデュオで演奏してきた。よほど相性いいらしい。
 明田川は比較的自分のレパートリーをセットリストに入れるが、片山も譲らずに自分の持ち曲を投入しがち。まさに個性派の、がっぷり4つなデュオが楽しめる。本盤で言うと、(5)が片山の持ち曲にあたる。

 さらに本盤は初CD化も2曲収録した。双方がカバー曲となる。リアルタイムのレパートリーを収録した点でも、本盤は貴重だ。
 なお(4)と(7)も明田川のオリジナル扱いだが、即興曲。(4)はフリーだろう。(1)はMCで(6)は馴染な明田川の代表曲。

 片山のブロウは特徴ある音色から、一発でわかるはず。野太いが軋み音もふんだんに混じり、生演奏だとギザギザなエッジが耳へ突き刺さる。調子がいいと吼え音がメロディアスに唸り、ざらつき一筋縄でいかない音色がそそり立つ。
 (2)の冒頭から調子っぱずれ気味のラフな音色で覆いかぶさり、続くメロディでロマンティックに震わせる。この二面性が片山の特徴であり、魅力だ。
 
 本盤に通底する空気は、危うさ。(5)も(6)も、ぐっとテンポを落してじっくり舐めるようにピアノが奏でる。テナーはふらつきながら、吼えた。
 ピアノとサックスのスリリングな立ち位置がポイントだ。張りつめたアンサンブルを、ギリギリのところで成立させてる。ドラムとベースが着実にキープしながら、不安定さは変わらない。

 特に(5)が凄まじい。片山はフレーズでなく、単音やロングトーンで説得力を持たせた。思わしくない体調のせいか。音数は削ぎ落とされ、ときに悲鳴のよう。だが音楽、である。ソロ、である。
 片山の存在感が凄まじい。とにかく、えぐい。体の奥まで演奏し抜いた曲だからこそ、できうる技ではないか。
 
 続く(6)もスリリングで、素晴らしい。フリーとコーダルの間を自在に行き来する。幅広い音楽性を持つ明田川と片山ならではのサウンドだ。
 しかしドラムとベースがいるにもかかわらず、このデュオっぽさは何なんだ。CDにもかかわらず、この演奏のふらつき具合は聴くたびにハラハラする。

<収録曲>
1. イントロダクション
2. 仲直りの道
3. 火山久のアヴェ・マリア
4. ファイアー・マウンテン
5. マイ・ワン・アンド・オンリー・ラヴ
6. アフリカン・ドリーム
7. 片山ブルース

Personnel:
明田川荘之(p, ocarina)
片山広明(ts)
畠山芳幸(b)
楠本卓司(ds)

録音:2010年8月31日、アケタの店ライブ


これは最近のライブ映像から。メンバーは本盤と同じで2015年7月30日の演奏。後者は本盤にも収録されており、聴き比べも楽しい。
 


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