"三星天洋(バツ)"(1999)オドゥン

 ライブならでは、の熱狂を封じ込めた明田川荘之がゲスト参加の盤。

 副題は「夏ノ日ニ貘ハ浜辺デ夢見ル…」
 オドゥンは林栄一らのバンドで、調べた限りは本盤しかCD化は見つからない。しかし4枚組のボリュームで、たっぷりと彼らの音楽を味わえる。バンド・テーマは異国情緒と日本風味、かな?ライナーには"オキナワ・ラグタイム"ってキーワードが上がってる。

 CDに発売元オフノートから、タイトルの由来が書かれたメモが挿入されている。もとは「三星天洋」を予定してたが、商標権者からクレームが入りタイトルにバッテンを付けるかたちでタイトル決定したという。
 原盤が何枚プレスか不明だが、のちに100枚限定再プレスの宣伝文をディスク・ユニオンのサイトで見かけた。

 アルバム4枚、それぞれテーマを持った作りでメンバーがほぼ平等に自作曲を持ち寄った。渋さ知らズで有名になった"ナーダム"で幕を開ける。
 録音は99年7月3~6日に、沖縄、浦添のライブハウスGrooveで録音された。前半2枚がスタジオ録音で、後半2枚がライブ音源かな。"ナーダム"を筆頭に、数曲が違うテイクで収録されている。
 
 フロント4管の厚みと、鍵盤無しで低音楽器がチューバとベース。独特な編成を持つ盤度で、通底するアルバムのムードは不安定なノスタルジー。浮遊感とセンチメンタリズムで切なさを表現しつつも、どこか突き放した冷静な視点を感じる。情緒へののめり込みや、安定や安心を与えず、どこか胸苦しい躍動が滲む。
 表現が難しいな。つまりダンサブルなビート一辺倒や、静かなバラードで寛ぎを誘発させない。穏やかでなまめかしいチューバと、スリリングなふくよかさのチェロの関係が象徴かもしれない。

 本盤はゲストとして明田川荘之、大工哲弘、国仲勝男、国仲依子を迎えた。他三人が沖縄ゆかりの奏者に対して、敢えて明田川をゲストへ招いたあたりが、奏者から明田川への信頼や思い入れを連想させて嬉しくなる。

 明田川はDisc 3で4曲に参加した。演奏曲は"African Dream","I Love You","Mr.板谷の思い出","Aiergin Rhapsody"。収録曲からみて、同年の明田川ソロ作"Mr. 板谷の思い出"(1999)と姉妹盤、にも見える。
 "I Love You","Mr.板谷の思い出"の2曲がかぶるからだ。たぶん当時のライブで、この2曲は集中的に演奏してたんだろう。他2曲は、明田川の言わずと知れた代表曲だ。

 "I Love You"は明田川のソロで聴ける。"Aiergin Rhapsody"はエンディングにうっすらと"Blue Monk"のテーマへ繋がる様子が残った。
 圧巻はやはり"Aiergin Rhapsody"。23分以上もの長尺テイクで、演奏途中のソロから拍手が飛び始め、エンディングでは大喝采。ライブならではの盛り上がりを味わえる。

 左手の着実なランニングと、前のめりで性急なソロ回しを魅せる"I Love You"のスイング感も美しい。
 分厚いホーン・アレンジが切なさを極倍増させる"Mr.板谷の思い出"もすごい。"African Dream"は無闇にはじけず、じっくりと高まっていく凄みを感じさせた。

 要するに聴き応えあるテイクばかり。この4曲だけは、オドゥンを自分へ引き寄せた明田川ワールドが炸裂してる。たぶんこの夜、オドゥンのオリジナル曲もやったはず。けれど敢えて明田川のレパートリーを並べて、明田川へ敬意を表したオドゥン側の懐深さも高く評価する。

 もちろん他のDiscでも聴き応えはバッチリ。柔らかさ、鋭さ、懐深さ。三者三様の色合いをサックスが表現し、大原と関島の音色は素晴らしく暖かい。
 膨大なボリュームで、ぞんぶんにオドゥンの演奏を堪能できる。

Personnel;
林栄一(as)
宮野裕司(as)
中尾勘二(as)
大原裕(tb)
関島岳郎(tuba)
坂本弘道(cello)
船戸博史(b)
つの犬(ds)

featuring
明田川荘之(p,オカリーナ)
大工哲弘(唄、三絃)
国仲勝男(b)
国仲依子(筝)





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