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Isley Brothers 「Grand Slam」(1981)

 乾いた跳ね過ぎぬファンクを、たっぷりまとめた。

 本盤は、腹八分目。LPサイズでは珍しくないが、30分強のボリュームだ。もう1~2曲あったら、アルバムとしてガッチリ固まった。
 だが内容はみっちり。四隅に隙無く、粘っこくぷるりと詰まってる。

 アイズレー・ブラザーズは、本盤で独特なファンク色をもう一歩進めた。
 ディスコの乾いたビートを基調にしつつ、滑らかなタイトさを個々の楽器で押し重ねる。
 結果的にジャストでクールな、独特のそっけないグルーヴを作った。
 ライブ感ありつつも、テクノ寄りの積み上げたビート感でリズムは躍る。アーニーの歪んだギターと、ボーカルやハーモニーで生々しさを生かした。
 あくまでボーカルを主役に立てながら、バッキングとの相乗効果で成立するサウンドだ。

 アルバムはそっと幕を開けた。
 いきなりダンサブルに盛り上げ、合間にスローを配置しペースを変えるってセオリーの逆張り。
 むしろアリバイのようにスローを冒頭2曲に固め、他はすべてファンキーなアップ・テンポでまとめた。
 ソウルのサウンドで馴染んだ方法論とは、あべこべ。
 
 パンチ力を最初は控え、A3からB面にかけて疾走を続ける本盤の流れは、奇妙な味わいだ。
 どうせなら頭は威勢よく、ゆったりくつろぐためにはB面をかければいい。例えばそんな聴き方を許さない。
 まずは助走をじっくりしなやかにして、焦らすかのよう。いったん火が付いたら止まらない。そんな流れを作ってる。

 アクセントやパターンをそれぞれの楽器がしっかり保持し、反応し合わず並走することでしなやかなうねりを作った。
 ベースがビシバシ暴れ、ギターや鍵盤が間を取りながらそれぞれにスペースを持つ。ドラムやリズム・ボックス、パーカッションもそれぞれのパターンで攻めた。

 全員でアンサンブルを作る役割分担でなく、楽器の集合体が結果的に構築を産んだかのよう。
 このノリを作るため、あえて彼らはバンド・サウンドに拘らずコンガなど外部ダビングを採用した。
 これを綻びと取るか、成熟ととるか。時代の流行とは別に歩み続けた彼らの、価値観がいささかズレ気味な王国の選択肢、と結果的にはなった。

 もっとも本盤は、B面がいくぶん弱め。線の細いボーカルと、ディスコ風に淡々と繰り出すビート感は、この時代に古さを持ち始めていた。
 アイズレーの審美眼だと本盤は絶頂を極めた。けれど時代の流行とは隔絶している。
 リアルタイムで本盤を聴いておらず、後追いの感想ではあるが。

 ちなみに山下達郎ファンならこの盤は外せない。A3は"メリー・ゴー・ラウンド"(1983)の下敷きになり、彼のラジオでも名曲として数度オンエアされた。

 アイズレーのファンなら、このファンクに浸り楽しめる。いわば彼ら独自の小宇宙って観点では、文句ない作品。
 なるたけでかい音で楽しもう。多層的なビートの厚みを浴びるため。


Track list
A1 Tonight Is The Night (If I Had You) 4:57
A2 I Once Had Your Love (And I Can't Let Go) 4:41
A3 Hurry Up And Wait 3:54
B1 Young Girls 5:00
B2 Party Night 4:09
B3 Don't Let Up 5:06
B4 Who Said? 4:18

Personnel
Ronald Isley - lead vocals, background vocals,
O'Kelly Isley - background vocals,
Rudolph Isley - background vocals,
Ernie Isley - background vocals (A2), guitars, drums, percussion
Marvin Isley - background vocals (A2), bass played by, percussion
Chris Jasper - background vocals (A2), keyboards, congas, other percussion

Eve Otto - harp (A1)
Kevin Jones - congas (A1-2, B1-2, B4)
Everett Collins - drums (A1, B4)

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