TZ 7347:John Zorn "Filmworks XVI: Workingman's Death" (2005)

 サントラ・シリーズ第14弾。パーカッションとエレクトロニクスを軸に、ゾーン自身の鍵盤演奏もあり。実験精神にあふれた一枚だ。



 Michael Glawogger監督"Workingman's Death"は、6ヶ国で撮影されたドキュメンタリー。ゾーンは映像を見てガムランやタブラ、アフリカン・ビートなど原初的なビートに、イクエ・モリのエレクトロニクスを融合させるアイディアを思いついた。
 ゾーンはたいがいのサントラを、ぱぱっと一日で録音してしまう。けれども本盤は05年の1~3月にかけてじっくりと録音されたらしい。
 各種のパーカッションはシロ・バティスタの手腕。ゾーンは一部の曲でオルガンを弾き、ガムラン・ゴングを叩いてるようだ。

 リズムと電子楽器の混淆がもっとも顕著なのが(1)。うにょうにょと電子音が蠢き、タイトな生リズムが載る。そしてさらにその上で、鍵盤が奔放に動いた。
 背後を飾るパイプオルガン風の荘厳なシンセ。いちおう4拍子の刻み。おもむろに入るインドネシア風のビートが出た。弾力あるバネのパーカッションがコミカルに響き続け、電子音が後ろで微かに鳴る。
 混沌と整然、二つの要素がごく自然に馴染む。ゾーンらしい多面性を綺麗に表現した一曲だ。

 (2)は多重録音なボンゴの生々しいビートが続く。だが単調に陥らぬよう、さらにトーキング・ドラムを足して変化をつけた。テンション高いパーカッションの応酬だ。(3)は一転、アジア風の倍音響く金物の音がいくつか。ガムラン・ゴングもあるようだ。規則性は無く乱打気味に淡々と響く。静かに被る鳥の音みたいな電子音。空気が弾み、脈打ち泡立った。次第に鐘の音がミニマルに鳴り、加速する。即興では無く、同じフレーズを繰り返しながら。

 アフリカ風味の多重パーカッションな(4)は、ドラムセット風に聴こえるがダビングのようだ。これもイクエ・モリのエレクトロニクスが空気を複雑に掻き混ぜた。小刻みに弾む電子音が、パーカッションのアクセントに飾りや揺らぎを付与して聴こえる。
 (5)は一転、混沌な小品。さまざまなパーカッションが高音から低音までランダムに聴こえる。皮ものが多いかな。軋む電子音と混ざって嵐の前の曇り空みたいな風景を描いた。1分40秒くらいから、リズムが定まってパターンを一瞬繰り返す。

 エレクトロニクスの詰まった音によるエイトビートを元に、オルガンが物悲しく響いた(6)。金棒をはじくようなノイズが、彩りを添えた。
 同じフレーズを鍵盤が、ループのように繰り返す。手弾きだと思うが。

 色合いはそのままに、よりノイジーな電子音を前面に出したのが(7)。振動し、膨らみ、金属質に震えた。生音パーカッションはオマケ。明瞭なハーシュノイズ的に、電子音が高らかにそびえた。即興と思うが、積み重なる空虚で奥深い電子音の高まりは、清々しくも悩ましい。
 個人的には、こういう音像は大好きだ。

 (8)でアジアンな倍音多い響きに戻った。前の曲から一転、シンプルで隙間多いものに。ガムラン・ゴングながら、緩やかで訥々な旋律をゾーンは描いた。
 次第に性急なムードに向かうのが、せわしないかもしれない。
 ケチャ風の手拍子な(9)は、オルガン音色の鍵盤が浮遊する危うさと、変わらない日常への諦念を表現か。

 吹きすさぶ寂しげな(10)。これは電子音の風か。残響効かせた生パーカッションと、電子音の粒立ちがみるみる絡んだ。加工された声や、倍音の響き。混沌と不可思議な音像だが、まさにメカニカルな電子音がわずかに小節感を保った。

 ミニマルなパーカッションの長尺が(11)。電子音はざらついた色を風に付与した。こすれ、軋むエレクトロニクス。ときおり新しい音色が加わり変化はつくが、根本は淡々としたビートの連続。涼しく硬質な響きは、爽やかな酩酊を誘う。
 7分辺りでビートが消え、細やかな電子音が無秩序に鳴った。ぽこっと瑞々しく弾ける音がきれいだ。ノービートで次々にはじける。
 
 最終曲(12)は(2)と同様のアフリカン・ジュジュ。ベースとギターのクレジットがあるものの、どこで演奏だろうと思ったら・・・ここか。パタパタと鳴る皮ものパーカッションに、ベースとエレキギターの同じ譜割のリフ。さらに歪ませたエレキギターが鋭く刺さり、エレピがスマートに滑り込んできた。
 勇ましく凛々しい雰囲気を、がっつりバンド・サウンドで響かせる。ミニマルなリフが、上へどんどん流れるエンディングのクレジット・ロールに似合いそう。

トレイラー

本編もYoutubeに上がっていた。これは分割の第一弾。あと、DVDも。日本語版は無いようだ。
 

Personnel:
Cyro Baptista: Percussion
Shanir Ezra Blumenkranz: Bass
Ikue Mori: Electronics
Jamie Saft: Electric Piano, Guitar
John Zorn: Organ, Gamelan



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