TZ 7705:Shelley Hirsch "The Far In, Far Out Worlds Of Shelley Hirsch" (2002)

 女性ボーカル・インプロバイザーによる演劇的な作品集。

 The Vidzer Family(1~4)、 States(5~8)、War Of Dreams(9)、For Jerry(10~11)、Sitting In A Room(12)と、5種類の作品を収録した。録音時期が書いていないが、各曲の収録場所もアメリカやロンドンと多岐にわたり、過去の作品集かもしれない。

 冒頭のケイト・ブッシュを強烈に連想させる、涼やかで幻想的な多重コーラスにいったんは「聴きやすいじゃん」とうっとりするが。すぐに芝居めいた語りが入り込み、どんどん前衛色が強くなる。その後も多重ハーモニーはそこそこ挿入され、聴きやすくもあるのだが。

 特に前半は音楽的な要素は添え物もしくはBGMな位置づけで、エコーや音声加工された声をサウンドの中心に置いた。歌詞が聴き取れれば、物語として楽しめるかもしれないが、外国人には少々敷居の高いつくりだ。
 素朴な作りにユダヤ文化や政治もしくは歴史へのメッセージ性を込めてると思うが・・・。ライナーには「アンネの日記」から引用も記載あり。

 全編を通じて感じるのは、過去への視点。前衛的な新しさよりも、歴史を踏まえ地に足の着いた表現の模索を感じる。声やのどを駆使した特殊な響きを聴かせても、どこかルーツを見据えた着実さがある。古めかしいバスキングやヨーロッパ風味が、何となく漂った。
 
 その意味でストリングスが厳かに響く最終曲こそが、本盤を象徴してるかも。とにかく本盤は歌詞が分からないと楽しめない。従ってぼくは、今一つ本盤を理解できていない。
 彼女の"音楽性"に触れるなら、内橋和久とのデュオ"Duets"(2002)がお薦め。トラッド風味をうっすら漂わせつつ、奔放な内橋のエレキギターへ彼女の歌声が力強く絡んでいく。
 2015年の今年、Angelica Festivalや別の場所でのライブ映像を内橋自身がYoutubeに上げていた。
 

Personnel:
Vocals - Shelley Hirsch
Effects - Max Lyandvert (tracks: 10, 11)
Electronics - Jerry Hunt (tracks: 10, 11), Shelley Hirsch (tracks: 2 to 4, 9, 10)
Keyboards - David Weinstein (tracks: 1, 3, 4, 9)
Voice Actor - Aida Vidzer (tracks: 1 to 4)
Narrator - Stephen Housewright (tracks: 10)
Cello - Christian Schneider (tracks: 12)
Composed By, Arranged By, Drum Programming, Keyboards, Percussion - Simon Hostettler (tracks: 12)
Double Bass - Mich Gerber(tracks: 12)
Viola - Michael Bollin (tracks: 12)
Violin - Misa Stefanovic, Sybilla Leuenberger(tracks: 12)


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