"風の詩 オカリナの調べ"明田川荘之 (1994)

 穏やかなオカリーナ曲集。これも、明田川。

 ジャズメン明田川荘之のもう一つの顔として、アケタ・オカリーナの社長がある。オカリーナ界では著名だ。ハードで粘っこい明田川の側面はいったん横に置き、オーガニックでリラクゼーションでヒーリングでニューエイジでアンビエントな楽曲を集めた。アングラ色はまるで無い。

 オカリーナ拡販とか、啓蒙。もしくは寛ぎの音楽を求める聴者狙いの盤。つまり普段、粘っこいジャズを聴いてる層とは全く別のマーケット狙いの盤だ。なにせ監修が斎藤茂太だ。
 したがって特に目の色変える刺激は無いのだが・・・明田川を焦点にあて本盤を聴くと、なかなか興味深い。
 
 もともとオカリーナの音色は素朴で柔らかい。明田川も決して乱暴にオカリーナを吹いていない。一定の滑らかなブレスで、細やかでくっきりしたアタックの音色が明田川の特徴だ。本盤では、柔らかなSEやバッキングで柔らかさを強調しつつも、鋭く吹き荒ぶ強い意志の風も感じさせる。
 
 本盤は相棒に坂口博樹を迎えた。編曲は全て坂口。シンセを中心にトラックをきっちり作り、時にアコギで透明感を強調した。全13曲中、9曲の作曲も坂口。
 あえて明田川はオカリーナを足しただけ、にも見えてしまう。

 だがしたたかに、明田川は自己の音楽も表現した。(8)はジャズの明田川でも演奏してるレパートリーを取り入れた。逆に、ライブでの定番オカリーナ曲をすべてはずし、立ち位置の異なりは明確にした。
 吹きっぱなしではなく(3)や(9)のようにオカリーナのダビングやアンサンブルも施してる。

 たしかに音の表情は坂口の色が強い。オカリーナはソロを取りつつも、今一つ目立たない。けれどもソロの表情に耳を澄ますと、アタックや譜割の揺らぎをうっすら感じさせ、けっして譜面吹いて終わり、ではない。微かながらジャズの色合いを滲ませてる。

 繰り返すが、ジャズの明田川を求めて本盤を聴いてもあまりピンとこない。あくまで明田川ファンとして聴くか、寛ぎのBGMに聴くか。二者択一だ。
 だが前者の立場では、ソロのわずかなフレーズやブレスの雰囲気にアケタの店の風景を思い起こさせるのは確かだ。
 後者の立場では、ちょっと引っかかりあるメロディ使いに、たんなるお仕事で適当に吹いてはいない、奏者のこだわりを感じて欲しい。

 なおギター屋弦は生演奏。バックの演奏も丁寧に作っている。サウンド・アドバイザーに、アケタの店のPAスタッフ島田正明の名が記載あるところも興味深い。自分の名前を冠する以上、明田川サイドもけっこうガッツリ絡んでるんだな。

<収録曲>(★)が明田川のオリジナル
1.太古の風(★)
2.FURUSATO
3.走馬燈
4.風の村
5.Seseragi
6.シメロンの灯(★)
7.初夢(★)
8.風の人~I remember Takashi(★)
9.土の唄
10.花の季節にある限り
11.風神
12.かざぐるま
13.小糖雨

Personnel:
明田川荘之(ocarina)
坂口博樹(comp,arr)
森朗(g)
後藤正光(synth)
土屋玲子(vln)
相原弥生(vln)
酒井まさの(viola)
山形まどか(cello)


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