TZ 7369:John Zorn "Filmworks XX: Sholem Aleichem" (2008)

 映画音楽の第20弾は、欧州バスキング風味の綺麗なアンサンブル。

 19世紀の作家Sholem Aleichem(ショーレム・アレイヘム)のドキュメンタリー映画用に書かれた。クレヅマーを、クラリネットをあえて廃すコンセプトで、ジョン・ゾーンへオファーがあったという。
 ゾーンが本盤で選んだコンセプトは、Masada String Trio+ハープ+アコーディオン。近年のゾーンによる疑似バンドで流麗なピアノをたっぷり披露する、ロブ・バーガーが全編で情感あふれるアコーディオンを弾いた。キャロル・エマニュエルの精妙なハープも美しい。
 本盤を聴いてて、エマニュエルが参加してのちに端整なアルバムを次々発表する、The Gnostic Preludesへの助走みたいな気もした。

 各曲は数分単位で移り変わる。テーマをきっちり演奏し、アドリブ部分を挿入するジャズ・スタイル。あとは映画で好きなように編集してくれ、がゾーンのスタイルらしい。
 そしてインプロを挿入することで、後でこうして音盤化でもじっくり楽しめる構造だ。

 本盤はソロ回しの自由度や刺激を求めてはいけない。その面では、やはり物足りぬ。それよりも破綻無く、残酷なほどに整った美しさと、次の瞬間に身をひるがえし滑らかに即興へ繋がるしなやかさこそを楽しもう。
 (1)での各楽器がフレーズごとに主旋律を受け渡していく、さりげなくも優美なアレンジが凄く好きだ。室内楽の軽やかなフットワークを、見事に票げしてる。

 リズム楽器が無く、フレーズそのものでメリハリを出す。弦のピチカートと、弓使いのアクセント。そしてハープの弦をはじく鋭さ。それらを、のっぺりとしたアコーディオンの息吹が、撫ぜながら歯切れよく立ち上がる。
 メロディはわずかにエキゾティック。ユダヤ音楽風味ってことか。

 ゾーンの順列組合せアンサンブルの一枚ではある。しかし、本盤は味わい深い。いや、耳ざわりは軽く、あっさりと通り抜けてしまう。だがアンサンブルの構成を意識しながら聴いたとき、じつに細かくテーマ部分は構築されている。
 弦が波打ち、ハープが色づけ、アコーディオンがうねる。この多層構造の美しさは、格別だ。 

 映像について触れてなかった。監督はJoseph Dorman。この予告編で本盤の音楽が、優美に響いてる。次々に音が切り替わっていくのも良いな。
 クラシカルで刺激あり、溌剌ながら古めかしい。独特の空気感だな、この音楽は。


Personnel:
Carol Emanuel - harp
Rob Burger - accordion
Mark Feldman - violin
Erik Friedlander - cello
Greg Cohen - bass


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