TZ 7218:八木美知依 "Sizuku" (1999)

 即興の琴が静かで混沌な風を吹き散らかした、1st solo。

 荒木経惟の煽情的なジャケット写真の本盤は、NY録音の琴による即興。売り出して間もない時期、にあたるのかな。帯ではアンビエント路線を謳うが、実際は前衛要素の強いフレーズが飛び交う。
 もともと八木美知依に、ストイックな前衛音楽家のイメージをぼくが抱いてるせいと思う。

 全12曲、基本は作曲モノ。けれども速いフレーズやめくるめく大胆な展開は、即興風に聴こえる場面もしばしば。面白いのは、旋律や間に、強烈な日本風味が立ち上るところ。楽器の構成要素ゆえと、本人の体に染みついた文化蓄積のためと思う。別に不思議なことじゃない。

 ここでのポイントは、無理に西洋文化へすり寄りや、日本文化の切り捨てを八木が行わず、素直に自らの音楽として内包する色合いを素直に出したところ。
 敢えて伝統曲を踏まえた演奏も、ロックなりジャズなりに寄った音使いも、八木はたやすく琴で行えたと思う。だがそんな安易な道を、八木は選ばない。自らの価値観を信じ、追求し、昇華させた。
 
 だからこそ、この音楽は愛おしい。ミニマルなインプロ、不協和な和音、滲み出るジャパネスク。まさに彼女の個性であり、特徴だ。

 いざ音盤で見た場合、かなり硬質でストイック。明確な起承転結を感じさせぬ楽曲が並ぶ。
 ざらついた琴の音色は、針金を爪弾いてるかのよう。高音と低音、双方の音が同時に響くのも同時演奏と思う。ダビングじゃない・・・かな?
 構築に見せかけ、奔放。自由に見せかけ、緻密。相反する色合いが混ざり合う。琴と言う馴染ない楽器を自在に操っているためだ。ハイテクニックなゆえに、音選びの必然性が読めない。

 充満する弦をはじく音に圧倒され、酩酊を覚えた。そして所々で強烈に表れる、しっかりしたメロディの輪郭に溺れる。
 たぶんこれは、聴きこむほどに新たな魅力を感じさせる一枚。今回、初めて聴いたのでまだ本盤を咀嚼しきれていない。

Personnel:
八木美知依:琴



  



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