JBの底力

 ジェイムズ・ブラウンは闇深き沼である。

 JBは膨大な活動を誇るため、全貌を掴めない。やっつけ仕事もあるため、完璧に追う気もしない。だがファンキーの一点で、強烈に光を放つ。
 どれ聴いても同じじゃないか、と最初は思う。区別がつくようになると、まったくどれもが違うじゃないか、と感じる。 だから立ち止まる場所に困る。集中力切れた瞬間に掘るのやめても、それまでの成果で十二分に楽しめる。そして思いついたころに掘り始め、再び魅力に気が付く。僕にとってのJBはそんな立ち位置。マニアックに追い求めてないぶん、いまだに新たな魅力を楽しめる。

 今回買ったのが1986年のコンピ"James Brown's Funky People"。JB再発見の機運が盛り上がってた、ごく初期の周辺コンピだ。
 バンバータとの"Unity"が84年。"Living in America"が85年。リアルタイムはいったん全部忘れさられ、不遇の10年から怒涛の復活をみせたころ。なにせ本盤の前、20位以内に入ったのは"Get on the Good Foot – Pt. 1"(1972)まで遡る。

 再発盤だと"CD Of JB (Sex Machine And Other Soul Classics)"が85年。英クリフ・ホワイトが本格的に気を吐き始めた頃合い。そこで、本盤のリイシューに至るわけだ。
 CDが家庭に普及しオールディーズの再評価が行われ始めたころ。
 
 若い奴らには分かるまい。85年頃のJBが、日本でどのていど知られてたかって。"Living in America"の一発屋ってのが関の山。あとは"パパのニューバッグ"くらいか。山下達郎くらいしか、JBを語る人はいなかった。日清のCM"ゲロッパ"はずっと飛んで、92年だ。

 ぼくも達郎のラジオでJBを知った。なにがなんだかわからなかった。この盤の存在も知ってたが、ずっと買いそびれてた。JB本体を聴くのでおなか一杯だったし。

 前置きが長くなった。本盤はポリドール時代の周辺メンバーによるシングル盤を集めた。JBは親分肌なのかリリース数を稼ぎたいのか、周辺メンバーのシングルも色々あるようだ。自分だけを目立たせず、すそ野を広げて逆説的に自分へ光を当てる戦略か。周辺メンバーへの名刺を作らせる、飴鞭のアメかもしれない。どうも捻くれた解釈しかできないが、JBは善人でもなさそうだしなあ。

 一小節ファンクの方法論を作り上げ、いかなる意味でも量産が可能な音楽体制。JBがいなくても成立は可能だろう。だが本盤聴いてて、しみじみとJBの凄まじさを感じる。
 録音プロデュース作曲全てに、JBはクレジットされてる。その意味で周辺メンバーの支配は強固で、自由を許さない。一方で、どっか隙がある。たとえJBが参加しても、シャウトが聴こえてすらも、だ。

 あくまで二軍、でも俺は睨みを利かせてるぜ。そんなマッチョなJBのパワーが薄ら透ける。

 音楽はカッコいいよ。JBズもデビュー当初のとき。脂乗ってる頃だ。本盤収録の顔ぶれは、The J.B.'s、Lyn Collins、Fred Wesley & The JB's、Maceo & The Macks名義。どこまで行ってもJB色だもの。

 本盤のコンピを仕切ったのはティム・ロジャーズ。クリフ・ホワイトのスタッフらしい。ここでは周辺メンバーのシングルで美味しいところを集め、紹介のイントロとした。
 メンバーもわかる限りクレジットした丁寧な作りが嬉しい。左右でシャープなカッティングが走り、バンドそれぞれがシンプルなリフを積み上げ、ポリリズミックなファンクを創る。

 プリンスの"Sign of the times"あたりに通じる路線そのままだし、達郎のバンド・アンサンブル信念に本アレンジ手法は多大な影響を与えたと思う。
 ケチらず、豪華に大量に。JBはホーン隊もリズムも、ずらり並べた。

 しかしなぜ、どっかショボいのか。プロデュースのクレジットにJBは飾りじゃないと思う。いや、飾りかもしれないが、自分のブランドを維持にJBは自覚的だったはず。
 JBのシャウトが無いから物足りない?あのすべてを引き締める、猛烈な存在感が無いためか。

 本盤の(7)はリン・コリンズとJBのデュオ。"Rock Me Again & Again & Again & Again & Again & Again"(1974)と長いタイトルで、延々とリフでJBも声を叩きつける。だけどやっぱ物足りない。リンを立てて小さめにミックスされてるせいかな。

 しかし本盤、面白いなあ。あまり凝り過ぎておらず、全13曲とちょうど集中力が続くボリュームなためかもしれん。もっと早く聴いときゃ良かった。
 もっともこの中の何曲かは、別のコンピで既に聴いてるけれども。

 当時、本盤に続いてJBの周辺コンピも次々リリースされた。とても全部は当時、聴けなかった。ぐるりと30年たったいま、改めて40年前の音源を再評価するってのも、なんか楽しい。
 本コンピ第二弾は88年に"James Brown's Funky People" (Part 2)。同じコンセプトで、未発表曲も入れて拡大したが、当時は聴き洩らしてた。今回併せて入手。次はこれを聴こう。
 
  



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