TZ 8046:Marc Ribot " Exercises in Futility"(2008)

 静かで、ハイテクニック。抽象的なギター・ソロ。アルバムのタイトルは「無益な練習」だ。

 膨大な作品を誇るマーク・リボーがアコギにこだわり、複雑精妙なエチュード集をTZADIKに吹き込んだ。いわばJohn Zorn"The Book of Heads"(1995)の、マーク・リボー版。
 "The Book of Heads"は作曲家の体現奏者としてマーク・リボーは全面ギター・ソロを披露した。これが楽曲までマークの作品だと、どうなるか。そんな興味をそそる一枚。
 結論から言うと、いくぶんメロディ要素の強い前衛作品。作曲手法よりもプレイヤーから滲むメロディに軸足置いて作ったと感じた。

 マークのTZADIKリーダー作は以下の通り。 
1997:Shoe String Symphonettes (Filmworks 1作目)
1999:Yo! I Killed Your God
2003:Filmworks II
2003:Scelsi Morning
2007:Asmodeus: Book of Angels Volume 7
2008:Exercises in Futility【本盤】

 このように忘れたころに前衛寄りの盤を発表する場として、TZADIKを位置づけてるようだ。上記以外の膨大なサイドメン参加は省いてる。ゾーンとは共演歴が長く、彼のさまざまなバンド、ユニット、サントラにマークは参加している。

 本盤収録曲は大きく分けて3つのセッションに分かれる。
 1,2,5-7,14 が07年11月。3,4,10,15 が同じ07年11月だが、録音スタジオとエンジニアが異なる。8,9,11-13が同じ07年の9月。録音場所は全てニューヨークだ。
 さらに編集でマーク自身とFrancois Lardeauのクレジットあり。

 本盤はコンポーザー・シリーズとしての発表、すなわち譜面ものが基本。ライナーに楽譜もある。実際は即興的な場面もあり、いくつか編集を施したということか。
 大きく分けて本盤は、1-14が一つのエチュード集、15が"The Joy of repetition"と名付けられた単独楽曲の位置づけ。しかし録音時期でわかるように、順番はバラバラだ。
 もともとの譜面順は最初からあり、何らかの理由で順番をバラバラに録音したか、次々録音した曲から後付けでナンバリングしたか。悩ましいところ。

 なんとなく、後付けナンバリングな気がする。というのも楽曲に連結性や物語感は無く、完全に無調っぽい響きからカントリーみたいなアメリカ文化を滲ませる楽曲まで、羅列は無秩序なためだ。

 いずれにせよいわゆる速弾きとは異なる、テクニカルなフレーズが多発する。いきなりのフレーズ跳躍や微妙なテンポ感など。聴き心地は、正直ハードル高い。アコギ一本ながら、寛ぎや柔らかさとは逆ベクトルのためだ。
 本盤の前衛曲は、テクニックやコンセプト偏重ではなく、その場の思い付きを記録した日記風のムードを感じた。フレーズへどこまでのめり込めるか、本盤の価値は変わるだろう。
 ぼくはちょっと、敷居高かったかな。タイトルの"無益"を無味乾燥と捉えていそう。

Personnel:
Marc Ribot - Guitar


 

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