TZ 4004:David Smith, Bill Laswell, John Zorn "The Dream Membrane" (2014)

 現代の音楽を紹介するTZADIKの新シリーズSpectrumから発売の本盤は、アンビエント色強い暗黒ドローン。ジョン・ゾーンもセッション参加だが、単なるハードコアでは無い。


 魔法使いとして名高いらしい、NY在住の芸術家David Chaim Smithを軸のサウンドだ。
 彼の著書"The Awakening Ground: A Guide to Contemplative Mysticism"(地の目覚め:観想神秘主義へのガイド)の朗読が、淡々と奥深い静かな響きを軸に行われる。


 演奏の基本はビル・ラズウェル。ジョン・ゾーンは角笛とアルト・サックスを吹く。ふたりとも生演奏に拘らず、ダビングを繰り返してる。
 アルバムは約48分一本勝負の1トラックのみ。ゾーンのオカルティックな趣味が全開だ。数秘術のクラシカルな作曲は控え、もやっとしたドローンの上で抽象インプロを展開がテーマのようだ。

 酩酊や瞑想を誘う狙いかもしれないが、全体に通底は緩やかなメロディの滲み。ベースがゆったりとフレーズを重ね、角笛やサックスが穏やかに旋律を紡ぐ。フリーキーな場面は無く、じっくりとウネリを効かせた。
 爽快ではなく、停滞と沈着。どんよりと心を鎮め、音に浸りたい。

 David Chaim Smithの朗読は、あくまで淡々と。変にコケ脅かしはしない。決して朗読メインではないが、場面ごとに的確な登場だ。垂れ流さず、きっちり構成された盤と思う。あまり親しみやすくは無いが、意外とのめり込める。

 電気仕掛けのもっちゃりした黒く重たい雲が漂う中、抽象的な旋律が浮かんでは消えるさまが美しい。サックスは循環呼吸奏法と思われるが、ダブ風の揺らぎも感じてしまう。
 ラズウェルは今まであまりピンとこなかったのだが、本盤での訥々としたベースはかっこいいな。とにかく低音のずっしりした響きがグイグイ耳に迫ってくる。

 展開はドラマ性あるかと思わせて、同じような場面が繰り返される。輪廻か、デジャブか。単に聴き分けられてないだけか。

 切なく単音を重ねるゾーンの角笛は、若いころのマウス・ピース奏法へのオマージュかと空想を膨らませてしまう。ずっとゾーンはフラジオ奏法を禁じ手にして、冷然とサックスを響かせた。

 このまま自制するかと思いきや。
 やはり終盤でフラジオの嘶きが登場。鋭く高らかに吼える。二本のサックスを絡み合わせて。一本は循環でクルクルと旋律を回し、もう一本はフリーキーに軋みを前面に出した。
 更に角笛が足され、厚みを増すかと思いきや。サックス群はするりと身をかわし、角笛二本のアンサンブルへ変わってしまう。このへんのバランス感覚は、作曲家ジョン・ゾーンらしいアプローチだ。

Personnel:
Bill Laswell: Bass, Drones
John Zorn: Shofar, Alto Saxophone
David Chaim Smith: Voice, Texts


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