TZ 7008:John Zorn "Redbird"(1995)

 現代音楽を2作品収録した。ジョン・ゾーンがクラシックにアプローチする、初期の作品。

 この頃はゾーンが自らをプレイヤーと作曲家を分けていたらしく、本盤もアーカイヴでなくコンポーザー・シリーズから発売された。
 短めの"Dark River"と40分越えの"Redbird"、二曲を収録。ぼくは後付けで聴いたから意外性は無いが、リアルタイムだと衝撃だったろう。ライブでの強烈かつノイジーなサックスに象徴される、けたたましさはここにない。でたらめさも皆無。細かく練り上げ築かれた、芸術作品が収録された。

 (1)はバスドラのみの演奏。ときおり音が左右に跳ぶ。Jim Puglieseの独演クレジットだが、ダビングだろうか。ずらりとバスドラを半円形に並べ、ステレオ録音で叩き分けたのかも。
 静かな低音打楽器の響き。テンポは一定でなく、時に小刻み、時に緩やか。うねりと静寂を静かなバスドラで表現した。アクセントや強弱は明確にわかるが、全体の音量はあくまで控えめ。ピアニッシモとピアニシシモを行き来するかのよう。

 低音ドラム・ロールはティンパニをマレット打ちか。散漫に聴くと単調だが、演奏風景を想像しながら集中すると、刺激が伝わってくる。盛り上がりが無く、エンディングも至極あっさり。観念的な実験作に聴こえる。もちろん音としても楽しめるポイントはあるけれど。

 (2)はハープ、チェロ、ビオラの編成。ゾーンの指揮はこちらか。後年のラウンジ色は薄く、密やかかかつミニマルだ。たぶんライナーに掲載の楽譜が、本曲のもの。全音符がひたすら並ぶ。
 小節ごとに和音を変え、ときにチェロやハープが弦を分散させメロディめいたものを提示した。

 メロディを極限まで削ぎ落としつつ、優美で不穏な雰囲気を出す。
 硬質な構成とストイックな展開ながら、不協和音や残酷さは皆無。テンポ良く和音も変わるため、ミニマルさの単調も無い。ポップとは言わないが、意外と心地よく楽しめる一曲だ。

 足元をあいまいに、音の進行性も希薄に。だが和音は次々と変わっていく。ころころとパーカッションで硬い響きの味付けを施すのが、全曲に続き演奏参加のジム・パグリーズ。
 今にも崩れそうで、ギリギリのところで留まる。そんな緊迫が美しい。生演奏でも綺麗だろうな。

 アメリカの抽象芸術家、Agnes Martinに本曲は捧げられた。ライナー掲載の写真がおそらく、アグネスだろう。
 
Personnel:
Jim Pugliese - bass drums, percussion
Carol Emanuel - harp (only track 2)
Erik Friedlander - cello (only track 2)
Jill Jaffe - viola (only track 2)
John Zorn - conductor


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