"POP UP"(2009)AKETA meets TAISEI

 "AKETA meets 孝・彫刻4タイトル"シリーズのCD第一弾で、青木タイセイをフィーチュアしたセッション。デュオみたいなタイトルだが、実際はドラムありのトリオ編成だ。

 明田川荘之は長期を見据えてるようで、あまりそれを表に出さない。何らかの継続したアイディアを明確に表出は新鮮だった。
 
 本盤はtb,b,flと多彩に持ち替える青木のプレイに刺激を受けたか。ダイナミックな展開としたたかな盛り上がりが詰まった、前のめりで力強いジャズだ。派手な飛び道具や珍奇さは狙わない。まっとうだが、組んだミュージシャンとの化学反応で変化する。正しい意味のセッションの醍醐味といえる。

 ジャケットの彫刻は明田川の父親、明田川孝の作品。4作続けて、彼の彫刻作品をデザインすることになっていた。なお最後に本作以降のCD4作品の帯を送ると、"マジック・アイ"、"Mr.板谷の想い出"、"サムライ・ニッポン・ブルーズ"のいずれかをもらえるキャンペーンつき。
 「全部持ってるからなあ。他に未CDライブのレアCD-Rとか無いかな」と、贅沢なことを当時思ってた記憶あり。

 明田川荘之はこの時点までずっと、メンバーを変えたセッションを自らの店で重ねてた。メンバー探しは、ベース探しに似ている。楠本卓司とはよほど相性いいのか、ほぼ固定。ベーシストはたぶん2010年4月13日に畠山芳幸と出会い、ここでトリオ編成が固まる。
 明田川はおそらくバンド・メンバーに節回しを求めている。単なるバッキングでなく、ビル・エヴァンス・トリオのように。その意味で、明田川+楠本+畠山の顔ぶれは強力だ。 

 話が先走った。本盤へ話を戻そう。全4曲、じっくりと聴ける。ライブの1stステージそのままを収録したっぽい。しかし冒頭1曲目にいきなり"テイク・パスタン"かな?もう一曲、頭にあってもおかしくないが。尺的にはこの4曲で1stセット全てかな。

 収録曲は、再演がほとんど。早川岳晴の曲"POP UP"初となる。もとはドク梅バンドで演奏の2曲を、1曲にまとめた。はさんだ1小節のブレイクが「難しい」とライブ前に拘っている。
 そもそも早川の奥方、宮崎正子(vo)のバンド、地球防衛軍(早川:b,明田川:p,林栄一:as)の曲だったそう。ドラムレスで89年1月13日にアケタの店でライブ記録があった。音源残って無いのかな?音楽を聴きたい。

 青木は曲ごとでさまざまな楽器を操る。(1)でb、(2)でb、tb、b。(3)はtbからfl、bへ。(4)はbからtb、bへと持ち替えた。
 音色をもとに楽器を選んでるようだ。ベース・フレーズ役は変わらない。リズミカルだが、淡々と刻みはまず弾かない。アドリブでも、つややかな旋律が溢れる。

 突っ込んだり引っ張ったり。独特なリズム感の楠本節は、本盤でもたっぷり。(1)は歯切れ良いドラム・ソロ。つられてか続く明田川も四角なピアノ・フレーズをひとしきり弾くとこが楽しい。サウンドはテーマに還り、グッとグルーヴィに戻る。

 逆に(2)ドラム・ソロはグッとファンキーに叩くと。ベースやピアノが煽ってくる。 これは明田川オカリーナの十八番の曲で、CD化は"わっぺ"(1992)、"パーカッシブ・ロマン"(2004)、"Life Time (Disc 2)"(2005)に続く4度目のテイク。

 (3)は全編で穏やかで崇高な空気が漂う。フルートのかすれ気味な乾いた音色の、速いフレーズが切なさを増す。ピアノがどんどん高まり、ふっと完全ソロに。その瞬間の、静かな無伴奏なピアノが美しい。

 ガンガンに盛り上がる、本盤最大の聴きものが(4)。明田川は唸りでなく、もはやシャウトを響かせた。
 シンセの音は、明田川が鍵盤を持ち込みかな?写真では、ピアノの右横で微かに鍵盤っぽいモノが見える。だとしたら、とても珍しい編成じゃないか。この時期、明田川はシンセを弾いてなかったはず。

 セッションを切り取った記録性の高い盤だが、明田川の"リーダー作"としての記名性もあり。たぶん全て収録と思われるMCのせいもあり、そもそも楽曲ごとに表情を変えるピアノの熱っぽさも含めて。
 ここ何作かで明田川は自己を深めつつ、時代を切り取った。そんな双方の視点が良く見える、好アルバムだ。

<収録曲>
1. テイク・パスタン
2. St.Thomas
3. 杏林にて
4. ポップ・アップ

Personnel:
明田川荘之:(p,オカリーナ)
青木タイセイ:(tb,eb,fl)
楠本卓司(ds)

録音:2008年10月17日アケタの店ライブ


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