BIG K.R.I.T."IT'S BETTER THIS WAY":自分への音楽とは?

 今聴いてるMixtapeを記録も兼ねて書いておく。その前に前置き。

 体調イマイチで、すべての予定を中止。この週末は自宅待機してた。音楽聴いてはうつらうつらし、目が覚めると音楽を変える、の繰り返し。どんどんニートな気分だが、あと12時間後は会社だ。
 
 ずっと思ってるのは「自分にとってリアルな音楽はなんだ?」。思春期に聴いた音楽か、今はやってる音楽か、それとも気になる音楽か。好きな音楽を好きなように聴けばいいのだが、たまに何らかの足掛かりが欲しくなる。
 いちばん悩むのがヒップホップ。ラップもわからずビート性のみで聴いてるため、楽しみたいのだが楽しめてる自信ない。

 ぱらぱら再読が「文科系のためのヒップホップ入門」長谷川町蔵/大和田俊之:著(2011:アルテス)。著者二人とも、ほぼ僕と同世代。価値観やたとえがシックリくる。
 初読で思ったのは、「ヒップホップのリアルって、アメリカの中学生男子のヤンキー漫画?」ってこと。もしくは「遊び人のクラブBGM」。後者は夜遊びからすっかり足が遠のいてる今、二重三重にわからない。前者こそいまさら分かろうにもわからないのだが。 本書のたとえで上がってる「ヒップホップ≒少年ジャンプ≒お笑い芸人」を踏まえて。


 今回読んでて、あとがき対談にある、以下のような箇所が妙にリアルに読めた。
 「上の大物がつかえて下がミックステープどまり」とか。
 「(CD売れないので)金が目的でなく顔を売ることが第一義」とか。
 「ヒップホップには競争原理とコミュニティでの自己承認欲求」とか。
 
 さて。本題。本書で新人扱いだったBIG K.R.I.T.の新作Mixtape。彼はミシシッピ州出身で今年29歳。今までのアルバム2枚は両方、ラップチャート1位獲得の売れっこだ。
 Mixtapeも05年から着実にリリースして、本作が12枚目。Datpiffで10月半ばにアップされ、既に約60万ダウンロードされている。URLはこちら

 ヒップホップにおけるMixtapeの位置づけはいまだにわからない。いわゆるアルバムと同じつくりなのかな。本作は13曲中10曲をセルフ・プロデュース。(2)がKenneth Whalum、(6)と(8)をWolfe De Mçhlsが製作した。客演ラッパー曲も少なく、6曲だけ。じっくり自己をアピールできるつくりだ。詳しいクレジットはこちら

 聴いててバラエティに富んでる。NY風の煙った不穏な空気や、西海岸の野太い重たさとも違う。サンプリングまみれでもなければ、打ち込み一辺倒でもない。
 最後のタイトル曲(14)では寂しげに語りかける、センチメンタルさを持ち合わせつつ、ラップは歯切れよい。

 イントロの後の一曲目、ある意味もっとも顔になる部分をKenneth Whalumにプロデュース任せるところは、鷹揚さか。この(2)がいきなり涼やかでカッコ良かった。
 サックス奏者のWhalumらしく、ホーンのリフを軸にフュージョン風のトラック。そこへ断続的に声加工したラップがまくしたてる趣向だ。

 そのあとの曲は、打ち込みビートを上手く使いこなした、軽やかなヒップホップ。一人ラップだが頻繁に掛け声や声加工を施して、音像の単調さを注意深く避けている。
 おもむろなfeat.は(6)から。これもトラックメイカーはWolfe De Mçhlsと、他人に任せた。De Mçhlsの経歴は良くわからない。WebもTopページからいきなり、サンクラに飛ぶ。若手かな?

 この(6)で客演ラッパーはK CampとLudacris。K CampはDr.ドレのレーベルと契約まもない若手っぽい。リュダクリスはイリノイ州出身、中堅のイケイケ。若手との対決って構図か。曲は単調で、正直イマイチだが。歌詞わかると違うのかもしれない。
 続く(7)もテネシー出身Young Dolphの客演あり。リュダクリスといい、南部ラッパーで固めてる。これはスカスカのビート中心なBIG K.R.I.T.のトラック。低音を効かせるが隙間が多くて軽かに聴ける。
 (8)も客演、Wolfe De Mçhlsがトラック製作とラップ双方で参加した。仲の良さアピールか。

 一人に戻った(9)は、わずかに被るサックスのサンプリングにKenneth Whalumの影も。ごちゃごちゃしたコーラスのダビングで、一人ぼっちさは無い。むしろドラッギーな酩酊さが滲む。いったん盛り上がり、クールダウンのつもりかな。

 もいちど襟を整えた(10)。客演はBig Sant、DeLorean、Scar と3人も。経歴の詳細不明だが、ここ5年くらいの活動な、ちょっと若手崩れってとこか。地元の若い衆、かもしれないな。中盤からハープっぽいフレーズを足して、気怠さを演出した。

 (11)はシカゴ・ソウルを連想する、ダルっとしたファンクネスが魅力的だ。客演はBJ The Chicago Kid、名前通りシカゴの出身。Bryan Sledgeの別名義で、彼はスティーヴィー・ワンダーの"A Time 2 Love"(2005)にコーラスで参加してた。へえ、知らなかった。つまりソウル色を足してアルバムの終わりに向け、うっすらとメロウさを付与する。

 ふたたび骨格ビートが特徴なトラックに(12)で戻る。ダブ風のコーラスがあるけれど、クレジットは一人だけ。さらにざっくりと大きくしゃくるようなフロウで歌とラップを混ぜる(13)で、セクシーさを演出した(と思う、たぶん)。
 そしてクライマックス、上に書いたように(14)で静かに幕を下ろす。

 こういう風に一曲づつ細かく聴けばいいのか。聴き流して「あー、よかった」とかじゃダメか。どうもヒップホップの聴き方は迷う。

 アメリカ人によるレビューはこちら。なに言ってるか英語分かったら、楽しめるんだろう。この動画すらも、既に8万弱の再生あり。おっさんが熱弁する構図が面白い。若者じゃないのか。


 Amazonで試しに検索したら、新譜情報あり。するってえとこのmixtapeは予告編の拡販ツールかな?
 

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