"パーカッシブ・ロマン"(2004)AKETA+斎藤 徹+翁長巳酉

 明田川荘之のリーダー作は本盤のあたりから、セッションそのものへずぶずぶと深化した。ライブの記録であり、明確なコンセプトを込めた問題作。

 本盤は"Live In Netherlands"と同時発売された。アケタの店30周年を迎え、この年の明田川のリリースっぷりは凄まじかった。
 アルバム名義も明田川のリーダー作では無い。AKETA+斎藤 徹+翁長巳酉と連名だ。本盤は明田川の代表曲をてらいなく、ずらり並べて素直にセッションの記録とした。
 けれども(2)の冒頭に汽笛のSEを入れ、明確に「ライブでは無い」構成も作った。

 本ブログで紹介する明田川の盤は一貫して、ライブ盤である。スタジオ盤は"わっぺ"(1991)のみだ。だが00年くらいまでは、セッション盤でも主役は明田川に聴こえた。けれども本盤のあたりから、アルバムの印象がグッと俯瞰した。明田川のピアノへ寄りつづけたカメラが、引きもまぜたかのよう。
 特に音楽性は変わったわけじゃない。むしろぼくの聴き方が変わったのかもしれない。
 アケタズ・ディスクの盤紹介ページと、実際のCDでは曲目クレジットが異なっている。故意か、偶然かは分からない。以下にはCDのほうで記載する。

 違いは2曲目。"テイク・パスタン"と"テイク・パスタン・バリーエションズ"に分けられている。つまり本盤はアケタズ・ディスクのWebだけを見ても、伝わらない。CDを聴かなければ、わからない。

 それが、(1)での唐突な終わり方だ。演奏が盛り上がり、続く最中にいきなりフェイドアウト。そして強烈な汽車の汽笛。鋭いフェイドインで始まる演奏は、激しいベース・ソロからだ。
 ライナーによると、翁長巳酉(per)が演奏中に感極まり(1)の中断に至ったらしい。
 
 CD化にあたりテープ編集で無理やり繋ぐこともできたはず。中断の様子そのものを、ライブとして音盤化の選択肢もあった。後者はCD化として冗長かもしれないが。
 いずれにせよ明田川はどちらも選ばない。敢えて異物であるSEを入れ、強烈に編集を意識させつつ、ドラマ性を施した。ライブ録音だがライブではありえない音。
 この構成を決断することで明田川は、明確に本盤のリーダーシップを示した。

 さらに本盤の特異なところは(1)と(2)で、後者のほうが長いこと。(1)のバリエーションであるアドリブの(2)をたっぷり入れた。前者が7分、後者が約16分。じっくりと変奏を聴かせる。
 
 他には明田川の大ファンとしては特段、目新しい選曲は無い。共演者である斉藤徹に捧げた"てつ"も、"三星天洋"(2000)、"Place Evan"(2002)と短いスパンで音盤化が重なっている。つまり本盤は選曲より、音楽そのものを聴くことを求める。いわば、生きざまを。
 ちなみにこの"てつ"も急速に曲が終わる、変わった演奏の様子だ。 

 本盤の共演者である斉藤徹とは、本盤に続く翌年のリーダー作""Life Time"(2005)でもデュオ・アルバムをリリースした。よほど思い入れあるようだ。
 しかもこの盤では、本盤収録の"St.トーマス"を再び音盤化する。ここまで自由なリリースを、明田川は無造作に行うところが凄い。

 翁長のパーカッションも、自由だ。いわゆるドラム的な刻みとも、おかず的なパーカッションとも違う。ポリリズムや変則ビート意識でもなさそうだ。かといってテクニックひけらかしでもない。
 それでも、ランダムな打音はサウンドの中でしっかりと、存在感を滲ませる。 

 なお本盤は音像的にも渋い。斎藤はウッドベース。翁長のセットは良くわからないが、カホンみたいに硬い木製の響きを多用する。つまり非常に響きが地味だ。乾いたベースとパーカッションがピアノと混ざる。
 ただでさえアケタの店は独特な部屋鳴りだ。すっと消えていく。これは潔さ、の表れか。

 ぼくの中でこの盤の位置づけは、不思議だった。ポートレートのようにライブの瞬間を切り取ったように見せかけて、前述のようにSE入れた明確な編集の意志も感じる。
 明田川は並列に立ち、斉藤と翁長へ存分にスペースを作る。ソロ回しの時間の長さ、って意味じゃない。音の存在感って意味で。

 なお、かしこまって緊迫した音盤ってわけじゃない。所々で明田川の独特なユーモアも現れ、おふざけも聴こえる。
 
 最後に。明田川のピアノ・スタイルは、じわじわと変わっている。
 奔放なアドリブ展開から、フレーズを執拗に重ねたり、ドラマティックな全体構成を意識さすプレイに変わってきた気がする。だが頻繁にユーモアやフリーなフレーズを挿入する。
 本盤の名義にAKETAを使ってるのは、たまたまかもしれない。クレジットの使い分けルールは不明だ。でも当時はよくAKETA名義も使ってたような気がする。

 それにしても今回、感想書きながら改めて幾度も聴きかえし、まだまだ聴きこみがたりないと実感した。

<収録曲>
1.テイク・パスタン
2.テイク・パスタン・バリエーションズ
3.セント.トーマス
4.てつ
5.エアジン・ラプソディー

Personnel:
AKETA(p,オカリーナ)
斎藤 徹(b)
翁長巳酉(per)

録音:2004/2/3 アケタの店ライブ

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