TZ 7379:John Zorn "In Search of the Miraculous" (2010)

 端正なジョン・ゾーン流アンサンブルが楽しめる、オカルトへ傾倒シリーズの1枚。


 極上ピアノ・トリオな"Alhambra love songs"(2009)のメンツにShanir Ezra Blumenkranz(eb)とKenny Wollesen(vib)を加えたユニット、ともTZADIKの宣伝文では位置づけた。
 すでにグレッグ・コーエン(b)がいるのに、敢えてエレべを足し2ベース体制の変則アンサンブルに仕立てたところが鍵だ。
 
 情感あふれるピアノへ、涼やかなビブラフォンが載る。それを二種類の低音ラインで支えてグルーヴを強固にした。もっともあからさまに2ベースを強調のアレンジではないが。
 ドラムは手数多いが強打はせず、撫ぜるようにビートを加える。浮遊しつつ、ベースがサウンドをガッシリ係留した。

 とにかくなまめかしく整った演奏だ。自由なフレーズが奔放に表れつつも、すべてが譜面に聴こえてしまう。小刻みな旋律にアドリブ要素を感じるだけで、楽曲も演奏も隙がない。整い磨いたプログレ風味が先に立ち、いわゆるジャズの危うさは実に希薄だ。凄腕ぞろいに加え、楽曲テーマからインプロが全く破綻しない。

 ほんのり幻想的なムードは、オカルティックなテーマゆえの幻影か。スピーカーで静かにラウンジ風の聴き方も良いが、ヘッドフォンで轟音に味わうのも捨てがたい。緻密な演奏の産むアレンジの妙味は、本当に素晴らしく緻密だ。
 わずかにミニマルで、ドライブしながら自在に展開する疾走ぶりと、埃ひとつない精妙な構築度合は極上の快楽だ。

 ねっとりしたメロディからわずかにユダヤ的なセンチメンタリズムも滲むが、むしろ無菌室っぽい涼やかさが先に立つ。それでいて、退屈さや味の抜けたつまらなさは皆無。
 本盤からアルバムのコンセプトを、上手く聴き取れてはいない。だが譜面付の詳細な解説を読んでみたい。組曲形式な曲タイトルから見て、アルバム全体での音楽的なルールや一貫性もありそうだ。

 つぎつぎと繰り出すメロディが産む和音の端正さは、ジョン・ゾーンの鋭く無駄のないプロデュースぶりを痛感させる。 

Personnel:
Rob Burger – piano, organ
Greg Cohen – acoustic bass
Ben Perowsky – drums
Shanir Ezra Blumenkranz – electric bass
Kenny Wollesen – vibraphone

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