"カリファ 明田川・林 デュオ パートⅠ"(1996)

 明田川はアケタズ・ディスクである。本盤と次の盤で、音楽の新ジャンル追求でなくセッションでの深化を選んだ。

 アケタズ・ディスクはインディながら、孤高は選ばなかった。ちょうどこの当時、学研・プラッツに流通を委ねる。さらなる販路拡大で普及を図った。メジャー系でなく、学研を選ぶあたりが渋い。
 当時は今と違ってインディ盤の流通が限られていた。さらに明田川はCD-Rプレスで、もっとフットワーク軽い流通も模索する。僕がリアルタイムで聴き始めたのが、そのあたり。CD製作がより手軽につれ、今はプレスCDへ戻ったが。当時、CD-Rのリリースは衝撃的だった。

 話が先走り過ぎた。戻そう。本盤の時代はプラッツ・アケタ時代。普通のレコ屋にも、特徴的な色あいの帯付な、アケタ盤が並んでた。
 アケタズ・ディスクの特徴は、明田川自身の盤をリリースに偏らず、アケタの店へ出演ミュージシャンらの盤を積極的に発売してるところ。有頂天のナゴムを、当時は連想した。
 狙いはたぶん、音楽シーンの醸成。アケタの店へ出演ミュージシャンの認知度を拡げ、アケタの店の基盤を強固にする。そんな地に足の着いた意志を感じた。

 アケタの店に出演の基準はおそらく、音楽性と人。ジャンルでも肩書でもない。明田川なりブッキング・マネージャーなりの判断で組まれたプログラムは、自然と統一感が出る。
 順列組合せのセッションと、緩やかな出演者の新陳代謝。昔馴染みへの安住に拘泥しない。新たなミュージシャンの出演へも、しごくさりげなく門戸を開く。常に新しさを意識してる。
 
 そこで、林栄一。尖ったミュージシャンとして彼を選び、ひときわ手ごたえあったライブを、2枚のCDで完全収録した。二枚組にせずタイトルを分けたのは、単価を考慮した経営判断か。セッションを重ねベストテイクを狙わず、究極の一日から抽出した。
 この自由度の高さも自主レーベルならでは、だった。今となっては誰しもが選べる道。けれども当時は珍しく先鋭的だった。
 なお明田川は後に、新鋭ピアニストのスガダイローともアルバム2枚を費やしリリースした。気に入るとボリュームを無視してリリースする。

 明田川はシンセサイザーも、まだこのときは使ってる。ピアノとオカリーナに加えて。全ての武器を使い、明田川は林と向かい合って音楽を作った。
 本盤は96年11月19日のライブから、1stセットを丸ごと収録。セッションの様子をそのまま封じ込めた。日本だとライブハウスの1セットはだいたい、一時間。CDの収録時間的にちょうどいい。

 林の特徴はフリーとテンポ物を自在にまたがるところ。循環呼吸でアルト・サックスを軋ませ、フリーキーな旋律を絞り出す。いっぽうで綺麗なメロディを華麗に操った。
 アルト・サックスが絶え間なく吹き荒ぶ。
 明田川はシンセの揺れとピアノの勇ましさ、オカリーナの抒情性と三様の魅力を提示した。

 楽曲は民謡と明田川のオリジナル、そしてカバー。いみじくも三様のバラエティも本セットは達成してる。
 民謡の(1)もアドリブではフリーなサックスと、シンセがうねる中間部をはさみ、もはや別世界に向かってる。二人の音楽は寄り添うようで自在に動き、てんでに勝手なようで調和してる。

 (2)のオリジナルは74年に作曲の馴染んだレパートリー。"アケタズ・エロチカル・ピアノ・ソロ & グロテスク・ピアノ・トリオ" (1975)に収録された。
 ダラー・ブランドの研究で生まれた曲と本人は記載する。左手のむせび泣くようなアルペジオ風連打が、それっぽい。
 パーカッシブな左手のドライブと、右手の粘るフレーズが良い。雄大で真っ黒なピアノの雰囲気を、無造作かつ鋭くアルトが切り裂く。中間部は明田川もクラスターを連発。ピアノの中に物を入れ、ガシガシ響かせる奏法は本盤でも聴ける。

 穏やかなジャズに向かった(3)でこのセットは、ロマンティックにまとめた。ほんのりか細い音色で、美しいメロディを吹くアルトも聴ける。訥々な旋律はわずかに上ずり、次の刹那すっとムードへ寄り添う。ぐっと絞った旋律で明田川は静かに伴奏した。

 デュオゆえに林のソロはたっぷり時間を取り、存分に聴かせる。明田川は次第に音数を増やし、意外に唐突に自らへソロを切り替えた。弾む、温かいアドリブ・ソロへ。
 唸りながら明田川はメロディを弾ませ、右手を弾ませる。左手は緩やかにランニングした。

 終盤でスルリとアルトが加わる。アドリブをしばし、エンディングへ。たしかに素敵で聴き応えあるライブだ。

<選曲>
1.沢内甚句
2.カリファ
3.エブリシング・ハプンズ・トゥ・ミー

Personnel:明田川荘之(p,ocarina,syn)、林栄一(as)
 
録音:96年11月19日 アケタの店Live



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