TZ 7023:John Zorn "Duras:Duchamp" (1997)

 現代音楽のアプローチを模索時代の2曲を収録した。抽象性と実験を追求しつつ、優美さや静謐性を探る。

 "Duras"と"Étant Donnés: 69 Paroxyms for Marcel Duchamp"の2作を収録した本盤は、即興から作曲へ軸足を変える過程の時期。Masadaの活動が一段落し、Bar Kokhba"(1996)など小編成アンサンブルに活動を拡大の頃合いだ。現代音楽の作曲家へゆるゆると足を踏み入れつつ、ゲーム・ピースなどの実験性やインプロ・セッションの即興も厳然と活動の柱で存在した。

 そんな中で本作収録曲は、旋律や構成よりもコンセプト先行の感あり。
 前者は仏作家マルグリット・デュラスに触発され、メシアンの音楽性を一体化させたという。
 後者は仏の美術家マルセル・デュシャンにイメージを受けた実験作だ。

 TZADIKではComposers Seriesでの発表。このころのゾーンは、アーカイヴとコンポーザ・シリーズの使い分けを、クラシックかそれ以外で分けるスタイルだった。

 "Duras"は静かな雰囲気の4楽章。奇数章が15分程度、偶数章が1分前後と極端に長短のバランスな楽曲だ。
 取り留めない展開だが即興実験な危うさは無く、かなりの部分が譜面と思われる。ゾーンのキューで、主導権を持つ奏者が変わる格好か。逆に顔ぶれから連想する、アンサンブルのダイナミズムさは希薄だ。奏者はむしろ没個性に、楽器を鳴らす人とし存在した。
 ビブラフォンの緩やかな響きや、弦の繊細な調べ。オルガンの柔らかい鳴り。小節感を希薄に、優美な音楽が続いた。

 一方の"Étant Donnés"は実験精神の旺盛な楽曲。これも奏者の顔が見えない。あくまでゾーンのアイディアを演奏の立ち位置だ。トラックは一つ。ブックレットでは3部作に分かれた13分程度の曲。全体はさらに細分化され、69個のブロックに分かれる。
 つまり高速ファイルカード・システムのように、次々に決められた楽想をスピーディな展開する構造だ。おそらく曲編集は無い。いきなり音圧の変わる場面もあるが、一気に曲は進む。
 
 ゲーム・ピースとファイルカードのゾーンが考案システムを、クラシックの文脈でとらえたような盤。音楽として楽しむなら"Duras"。この時期のゾーンにしては珍しく、アンビエントな静けさと美しさ有り。
 曲構造が明確に分かれば、"Étant Donnés"も楽しめるとは思うが。

Personnel
John Zorn – conductor

"Duras"
Anthony Coleman – piano
Cenovia Cummins – violin
Mark Feldman – violin
John Medeski – organ
Jim Pugliese – percussion
Christine Bard – percussion

"Étant Donnés"
Mark Feldman – violin
Erik Friedlander – cello
Jim Pugliese – percussion


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