"ロマンテーゼ" (1995) 明田川荘之

 明田川荘之は中央線ジャズである。本盤は彼の盤で、最もジャム・バンドなファンクネスを提示した。

 前項で書いたように、この盤と前作の"三階節"が明田川のキャリアで最も、アレンジ・スタイルとして新境地と先鋭性を伺わせる盤だった。実際は明田川はアレンジや音色に拘泥せず、どんどん自らの個性を突き詰める方向性へ向かったが。

 明田川はコンセプトをあからさまに出さないが、盤ごとに音楽的なテーマや挑戦を感じる。たぶん本盤はロマンティックさを追求と思う。だがさらに、独特のファンキーさを表出させた。

 中央線ジャズ、って言葉がある。アケタの店は西荻に所在し、まさに中心と言えよう。さまざまな音楽解釈があるようだが、明田川は自ら監修した本「中央線ジャズ決定版101」で『テンポの無いフリージャズを、フリーのままテンポ(エイトビート)に載せる画期的な形態』と定義した。
 音楽ジャンル間の跳躍であり、ミュージシャンの挑戦。そして異物の混合。中央線には昔も今もさまざまなライブハウスがある。だが明田川が中央線で自らの店を、長期間続けている意味は、猛烈に重要だ。ミュージシャンと経営、双方の視点を包含し続けた一人の男、の意味で。

 本盤は95年の二日間にわたるライブを収録した。(2)(3)(6)が明田川のソロ。どちらかの日が深夜ソロ・ライブの音源と思うが、両方とも土曜日のためどっちがどっちの日に演奏かは分からない。
 
 本盤はリズム隊をガラリ変えた。タイトに刻み叩き続けるドラミングと、うねるベース。このリズム隊あってこその独特なグルーヴだ。セッションの方で明田川はシンセを使う。2台を弾き分けてるようだ。
 演奏フレーズが、まさに独特。マリンバやエレピ、ストリングス音色を無造作に使う。プリセット音源を使ってるかのよう。しかもピアノとタッチを明らかに変え、白玉をべらぼうに使う。フレーズの妙味やテクニックの追求では無い。音色そのものが持つ、ベタッと平べったい響きや、詰まった音の転がりっぷりをそのまま生かした。

 その圧巻が(6)だ。この暴風みたいなストリングス音色の白玉と、エレピ音色の打楽器的な響きの共存は驚愕だ。ジャズの文脈でもフュージョンのアプローチでもない。洗練とも土着とも異なる、音色の快感原則を追求だ。
 この演奏を、世界中の人に聴かせたい。どんな反応示すだろう。
 明田川は本路線は、本盤を最後に止めてしまう。日本情緒とジャズの融合を追求に向かう。正しい選択だと思うが、このシンセ操作はたまに聴いて見たいな、と感じる。

 ピアノ・ソロの曲では、後年路線のグルーヴが炸裂する。強烈な左手のランニングと、うねる右手の旋律が織りなす妙味が美味しい味わいだ。時に灰皿かオカリーナをピアノ線の上に載せたと思しき、プリペアード風の音色が追加の色を添える。

<収録曲>
1.朝日のごとくさわやかに
2.ロマンテーゼ
3.ミヤコシノ
4.マック・ザ・ナイフ
5.マジック・パルサー
6.シチリアーノ


Personnel:明田川荘之(p,ocarina,syn)、望月英明(b)、木村勝利(ds)

録音:95年6月17日、8月5日 アケタの店Live


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