"室蘭アサイ・センチメンタル"(1994)明田川荘之

 明田川荘之、交通事故から復帰直後のライブ音源だ。

 前作"ニアネス・オブ・ユー"を録音の数か月後、明田川は93年6月に交通事故で大けがした。右足骨折で入院した。ちなみに入院中に書いた曲が"杏林にて"。
 瀕死の重傷だったそうだが、何とか退院。年が明けて94年1月のライブがこれ。曲順を編集で変えてなければ、1stセットを丸ごと収録した感じだ。

 ただしそんな体調でのライブとは、言われてもわからない。演奏を聴いてて、ピアノに病み上がりの痛々しさは無い。右足が粉砕骨折で、このときはリハビリ中。ボルトが足に6本入ったままだったという。ピアノを弾くのに、ペダル踏みに苦労してたのかもしれないが。

 トリオ編成でソロ回しも無闇に無く、たっぷりと明田川の演奏を聴ける。そして今は亡き山元恭介の、粘っこくメロディアスなベースも楽しめる。
 ドラムは明田川のライブでは縁の深い楠本卓司。ちょっと引っかけ、引きずってはかぶさる。独特のズラしたタイム感が味だ。例えば外山明ほど、極端に楠本はビートをずらさない。しかし聴いてると、どっか違和感ある。そんな不思議なドラミングだ。

 本盤は切なくも、しぶといグルーヴが味わいだ。明田川の独特なセンチメンタルさが詰まった。
(1)の明田川オリジナルはファンキーかつ、訥々なフレーズ使いが広がる。この曲はホーン隊のリフがつい、頭をよぎる。ここではランニングながら奔放なメロディ使いのエレキベースとつかず離れず、ピアノのアドリブがたっぷり。

 あらためて沁みるのが(2)。今までライブで幾度も聴いたスタンダードだ。いまさらながら、曲とタイトルが頭で一致した。この曲はアドリブがたっぷり続いたあと、ぐいぐいと階段上るようなフレーズが大好きだ。本盤のテイクで言うと8分50秒あたり。
 本盤のテイクは饒舌に次々とピアノのフレーズが溢れる。ブレイクのあと、滑らかながら少し引っかかるエレべのソロ、続いてドラムの短いアドリブと、バンドでソロが回る。
 (2)と(3)の間に編集あるようだし、やはり本盤は1stセット丸ごとではないのかな。オカリーナのしみじみしたイントロ。アケタの部屋鳴りか、うっすらと残響を持った音色だ。マイク・リバーブかな、それとも。
 たっぷりとオカリーナを聴かせたあと、ピアノへ。この演奏も、素晴らしい。どっぷりとロマンティックだ。リズム隊はピアノを柔らかく支え、ノリを邪魔しない。
 
 最終曲のオリジナル(4)は、リフレインを重ねて盛り上げる明田川の色がたっぷり出てる。唸りはメロディを持ってピアノのフレーズと吸い付いた。
 ぐるぐると曲調が螺旋上に回り、新たなアドリブを加えて展開していく。独特なドラマティックさをたっぷり味わえる。テーマが幾度も重なり、どんどん折り重なる雰囲気が堪らなく好きだ。

 ジャケ絵は明田川の娘、歩の手による。小学校4年の時に書いたらしい。後に親子でステージに立つことを考えると、感慨深い。 

<収録曲>
1.ストレンジ・ウッド・ブルース
2.ディア・オールド・ストックホルム
3.アイ・フォール・イン・ラヴ・トゥ・イージリー
4.室蘭アサイ・センチメンタル

Personnel:
明田川荘之(p,ocarina)、山元恭介(b)、楠本卓司(ds)

録音;1994年1月31日 「アケタの店」ライブ


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