"アイ・ディデュント・ノウ・アバウト・ユー"(1988) アケタ・ミーツ・タケダ

 明田川荘之はアケタ、である。使い分けは良くわからない。
 そして明田川はフリーな演奏もこなす、インテンポのミュージシャンである。

 故・武田和命(ts)のメモリアル、第二弾で発売のCD。ちなみに第一弾は"インフィニティ" 武田和命・ミーツ・古澤良治郎。これも良演奏だ。3種類のライブ音源をまとめた。
 彼の演奏を生で聴くことは叶わなかったが、ほんのり青白い線の細いテナーだ。タンギングをしっかり、コルトレーン的なフレーズでもアクセントが付く。思い切りロマンティックなフレーズを吹かせたら抜群の存在感だ。テクニカルな速吹きやフリーでなく、しごくオーソドックスなプレイの印象あり。

 だが60年代から山下洋輔と活動し、80年代初頭には山下のバンドに参加。従ってフリーな演奏もしてたと思う。
 ブートで彼のライブ音源が、Youtubeにいくつか存在する。例えばこれ、1984年7月16日、新宿Pit Inn "渡辺文男セッション"。


 ちなみに本盤"アイ・ディデュント・ノウ・アバウト・ユー"は、発売年度が良くわからない。
 武田の死去を切っ掛けの発売らしいが、学研プラッツ流通時代のアケタ盤だとCD番号は"室蘭アサイ・センチメンタル"(1994)より後だ。だが、明田川のディスコグラフィでは録音順に並んでる。本盤はいったんアケタ盤で出て、学研で再発ってこと?

 さて、明田川荘之の別名にアケタ、とカタカナ表記がある。AKETAとアルファベット表記も。どう使い分けてるかは、わからない。単に気分かもしれないし、双頭セッションなどリーダー作と異なる場合にアケタで、完全ソロだとAKETAだろうか。うーん、わからない。本盤では単にごろ合わせと思うが。

 本盤はシンセを弾く明田川が聴ける。明田川はごく一定の期間だけシンセサイザーをライブで使い、あとは全く弾かなくなった。使用機材はローランドのParaphonic 505。ここに解説を見つけたが、シンフォニックなストリングス音色で定評な1978年発売の製品で、本盤録音の87年では既にビンテージ機材だった。

 当初に導入の狙いは、新奇性狙いだろうか?実際はいわゆるフュージョン的なシンセの音色変化は行わず、伸びやかなパッドの音色が気に入っていたようだ。すなわちオシャレな路線とは無縁。いわばエレクトーン。
 フレーズにはオルガン的なダイナミズムも希薄で、むしろ白玉をグッと伸ばすロングトーンな演奏が耳に残る。時にパーカッシブなピアノと、まったく異なるアプローチをシンセでは披露した。ライブで見てみたいと思ったが、残念ながら叶わず。
 
 収録曲と顔ぶれも興味深い。(1)と(3)が米木/亀山リズムのカルテット編成。
(1)はキーだけ決めたフリーかもしれない。めまぐるしいフレーズや、クラスターを連発するところから明田川は一見してフリーに誤解されるが、素性はインテンポの軸足だ。だから音盤でも完全フリーな演奏は、非常に珍しい。

 (1)は不穏な幕開けで、野太いシンセのソロ。ひとしきり低音が唸り、ドラムの小刻みなビートが加わる。さらにもう一本、シンセの主旋律。ここでは管楽器っぽいシンセの競演を一人で明田川はこなした。
 13分越えの曲中、テナーが登場は4分過ぎ。そう、ここではフリー中心に武田は鋭いフレーズをちりばめた。それでも端々にメロディの断片が手癖のように残る。
 明田川は途中でピアノに切り替え、最後は得意のクラスター連発へ。一瞬シンセを鳴らしてオカリーナを手に取り、淑やかに吹いた。猛然たるセッションだ。最後はベースがうねって、幕。

 武田を紹介する明田川のMC。続いて『"アイ・ディデュント・ノウ~"』と曲名を告げ、別の日の、この曲へ飛ぶ構成がニクい。

 (2)が本盤のベスト。燃え上がるロマンティックなサックス・ソロが噴出した。
 石渡がドラムでクレジットの珍しい音源。この日はギターを弾かず、ドラムのみで参加だろうか。楽曲はエリントン。渋谷毅と異なり、意外に明田川とエリントンって珍しい、ような気がする。

 (3)は前エントリでも紹介の"エアジン・ラプソディ"の一環。冒頭の10分を切り取ったらしく、フェイドアウトで終わる。テーマに行かず、自由にセッションする伸び伸びさがカッコいい。

 最後の(4)は武田への追悼を込めて収録した。録音は武田が逝去の前だが。ライナーで明田川は「(生前の録音だが)僕はそういうことにこだわっていない」とあっさり一蹴。音楽が最優先、あとはどうでもいいって姿勢が清々しい。
 作曲はモンク。そう、明田川はモンクのほうが親和性あるイメージ。無骨で頑固なところが。

<収録曲>
1.Electlic Aketa
2.I didn't know about you
3.Airegin baybridge road
4.Reflections

Personnel
明田川荘之(p,ocarina,synth) on 1-4
武田和命(ts) on 1-3
米木康志(b)、亀山賢一(ds) on 1,3
山崎弘一(b)、石渡明広(ds) on 2

録音: 全てアケタの店Live
87年9月16日 on 1,3
88年4月2日 on 4
88年6月10日 on 2

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