TZ 7365:John Zorn "Filmworks XIX:The Rain Horse" (2008)

 順列組合せの美しさ。ここ数日のエントリーを読み返し、ふと思った。


 ジョン・ゾーン映画音楽集の19作目は短編アニメーション"The Rain Horse"(ロシア:Dmitry Geller監督)。Youtubeで実際の作品が見られる。


 老馬の晩年を描き、セリフは一切ない。ペタンとした絵柄で切り絵っぽいところも。全編15分弱。しかし本盤は40分越え。アニメに使用されない音源もすべてが収録された。
 アニメはかなりふんだんに音楽を使ってるが、鳴らしっぱなしではない。つまりほとんどの音楽は使われてない。贅沢な話だ。
 ゾーンは音楽使用の取捨選択には関与してない。ライナーでは「たぶん監督がアニメの時間を延ばしたんだろ!」と、鷹揚に笑う。だからこのCDを聴いてくれ、のスタンスだ。

 創作過程のゾーンによるライナーが面白い。
 Dmitry Geller監督も最初は"Book of Angel"シリーズやDreamersの数曲の使用許諾が欲しい、の申し入れだった。
 しかし興味を持った監督の過去作にゾーンが興味を持ち、「似たような予算で、書き下ろし音楽も提供できるよ?」と監督側へ提案、本盤に至った。そりゃ当然だろう。
 
 当初のDremaers音源の希望へ、ゾーンはMark FeldmanとSylvie Couvoisierのデュオを構想。しかしツアー中のため日程合わず、本盤に至った。
 顔ぶれはロマンティックなピアノを鳴らすロブ・バーガーに、マサダ他で超お馴染みのグレッグ・コーエン、クラシカルもこなす名手のエリック・フリードランダーのトリオ。ライナーにはSteve Gorn(fl)の名もあるが、なぜか音楽には入って無い。

 順調に一日、18時には全て録音は完了、エリックは娘を迎えに行き、グレッグはその夜の仕事、The Hotel Carlyleでディキシー・スタイルの演奏に向かった。
 全く違う時期だが、こんなライブのようだ。グレッグはいないが。クラリネットのウッディ・アレンって、あの映画監督かなあ?

 
 映画はどことなく沈鬱なムードが否めない。救いを求めていようとも。ゾーンはシニカルさを消して、洗練されたアンサンブルで応えた。強く引き絞るベースと、柔らかくふくよかなチェロ、そしてミニマルさを残したピアノ。
 アドリブ要素もあるけれど、基本はゾーンの作曲で整えられた。弦部隊のパーカッシブな弦さばきが、思わぬリズミカルな効果を出している。

 歯噛みするくらい美しい。そしてチェロをドラムに変え、"Alhambra love songs"(2009)につながる流れか。順列組合せで、つぎつぎにゾーンは素敵な音楽を紡ぎだす。凄い。

Personnel:
Greg Cohen - bass
Rob Burger - piano
Erik Friedlander - cello

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