TZ 7385:John Zorn "Filmworks XXIV - The Nobel Prizewinner"(2010)

 気高いピアノ・トリオを楽しめる極上盤。

 ジョン・ゾーンの映画音楽集24弾は、オランダのTimo Veltkamp監督"De Nobelprijswinnaar" (2010)。これが初監督作で、白黒フィルムの映像だ。


この予告編はまさに映画の一風景を切り取っただけ、のシンプルなもの。言葉が分からず、どういう世界観か不明だ。

 音楽は気品が滲み出る。ラウンジ風味に涼やかな香りを漂わす、端正なテーマ・メロディだ。それを柔らかなロブ・バーガーのピアノを軸に披露した。タイトなリズム隊が、味わいの爽快さに拍車をかける。
 セッションっぽい演奏に聴こえるし、細かいところはアドリブっぽい。しかしミニマルに繰り返されるフレーズや、かっちりとした場面展開でわかるように、実に細かく作曲されている。

 もともと音楽はヴァン・ダイク・パークスが担当の予定も都合合わず、ゾーンに話が回ってきたそう。最初にゾーンは音楽出なくSEのみで構築を考えたらしい。ライナーで同種アイディアの一例に、森田芳光"家族ゲーム"(1983)を上げるあたりが、いかにもゾーンだ。
 映像を見ていたら次にピアノ・ソロを構想。傑作"Alhambra Love Songs"(2008)でのロブ・バーガーを起用したそう。本盤とはリズム隊が異なるため、裏"Alhambra Love Songs"と位置付けて本盤聴くのも楽しい。

 本盤の魅力は穏やかな冷静さと、さりげない実験精神だ。メロディに聴きづらいところは皆無。だが聴いてると、単なるムード・ミュージックと全く違う。張りつめた緊張ながら、圧迫感は与えない。ピアノ・トリオが基本だがアレンジも硬直化せず。あくまで主役がピアノ。それを支える形でリズム隊が存在する。
 ロマンティックで繊細、しかし演奏は素晴らしくタイト。ゾーンらしい完璧主義が見事に結実した素敵な盤だ。

Personnel:
Rob Burger - piano
Trevor Dunn - bass
Kenny Wollesen - drums, vibraphone

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