TZ 7330-2:John Zorn "Cartoon S/M"(2000)

 2枚組なボリュームでの現代音楽集。精妙で美しい音が詰まった。


 後年、ジョン・ゾーンは作曲家の活動を深めていく。その足掛かりとなる初期作品をまとめたのが本盤だ。
 TZADIKで過去の代表作をまとめながら、クラシック曲は"Composers"シリーズへ振り分けていた。改めて"Archival"シリーズで、過去の自作を整理したとも言える。綺麗にデザインされたブックレットの最後には、これまでの現代音楽曲名を一覧した。 

 ゾーンのクラシック作でキーワードは、"変拍子で跳躍"、"コラージュ"、"超絶技巧"、"無機質なメロディ"など。さらに"数秘術"、"オカルト/グロテスク"もある。
 スピードと異物を混ぜ込み、理知的だがダイナミックな躍動感を込めつつ、非人間的な展開を好む。二律背反がそこかしこで見受けられる。

 初期作品集の本盤は、これらコンセプトがふんだんに飛び交う。ファイルカードや即興的な跳躍を、アカデミックなクラシックの楽曲へ注ぎ込んだ。
 各曲ごとに見ていこう。 

 TZADIK盤"The String Quartets"に所収の弦楽四重奏曲は全て、本盤で再演された。本盤の奏者はThe Mondriaan Quartet。オランダのミュージシャンらしい。あえて普段親しみのない奏者が自曲を取り上げることで、よりゾーンの意図を削ぎ落とした楽曲の純化を狙ったのではないか。
 本盤収録の弦楽四重奏曲は"Cat O’Nine Tails"、"Kol Nidre"、"The Dead Man"、"Memento Mori"。

 同様のコンセプトか、TZADIKの旧譜"Angelus Novus"からも"Carny"、"For Your Eyes Only"を再演した。"Carny"は向井山朋子http://tomoko.nl/の演奏を収めた。
 "For Your Eyes Only"はStephen Ashbury指揮でAsko Ensembleの演奏。本盤は録音時期のクレジットが読み取れず、いつの収録化が分からない。

 "Music for Children"も再演。"Music Romance Vol. 1: Music For Children"の作品を改めて取り上げた。ここでもピアノは向井山朋子。いくぶん、初演より冷静に整理されてる気がする。

 なお再演の極致が"Kol Nidre"。本盤では弦楽四重奏とクラリネットのみの四重奏、二種類のアレンジを収めた。ゾーンはこの曲がよほど思い入れあるのか、のちにTZADIK盤"Fragmentations, Prayers And Interjections"でも再々演をした。

 全く違うミュージシャンによる演奏がYoutubeにあったため、貼ってみる。


 どの曲もめまぐるしいコラージュめいた場面展開が。次々に現れる。複雑な構成に意味の連結は、少なくとも聴いてるだけだと分からない。ただしゾーンの楽曲に親しんでいくと、どの曲も決して聴きづらくは無い。高速ゆえの振り回される戸惑いを最初は覚えるけれど、丁寧で美しい旋律を含んでいることが良くわかる。スリルも極端な跳躍でたっぷり味わえるし。

Personnel:
The Asko Ensemble with Stephen Ashbury Conducting
The Mondriaan Quartet
Erno Hartsuiker
Ina Hesse
Rick Huls
Arnold Marinissen
向井山朋子
Niek Wijns


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