TZ 73161-2:John Zorn "Lacrosse"(1977/78/2000)

 初期ゲームピースの記録。マニア向けではある。


 即興をキューやルールで枠をはめ、構築化を図るゲーム・ピースがジョン・ゾーンの特徴。ごく初期の"ラクロス"を二枚組で発表した。総収録時間は1時間40分。だが2枚目は30分あまりしか収録されてない。ちょっとバランスの悪い構成だ。そこまでして、Disc1のアウトテイクを全て詰め込みたかったのか。

 Disc1は1978年6月10日にNYのFM局、WKCRのスタジオを使っての録音だ。本盤はPolly BradfieldとDavey Williamsが左、LaDonna SmithとEugene Chadbourneが右チャンネルに配置された。中央がMark Abbottとジョン・ゾーンかな。ゾーンはサックスだけでなく、マウスピース奏法も繰り出した。

 "ラクロス"のルールは知らないが、互いの即興をハンドキューで指定し構築の模様。のちに全く別のミュージシャンが、"ラクロス"を演奏する動画がYoutubeにあった。ときたまハンドキューが飛ぶ映像だが、やはりルールは今一つわからない。
 とにかくアイコンタクトやあうんの呼吸を廃し、明確なキューで進行を定義が画期的だ。ぼくは即興演奏の経験はないけれど、ライブを見る限り即興演奏は奏者が耳や目もフルに使ってアンサンブルを組み立ててるように見える。しかしゾーンはそのあいまいさをあえて除外した。合理的なアメリカ人的発想かもしれない。

 この動画で演奏してるライブのWebページがあった。ここでは"ラクロス"を「高速に音楽アイディアを交換する」とある。キューで奏者を指定し、フレーズを発展させ合うってこと?そういう風にも聴こえないが・・・。

 とにかく問題は聴いてて、音楽として楽しめるか、どうか。
 本盤ではメロディがほとんど無く、手すさびの即興フレーズと非器楽ノイズの交換が延々続くため、音楽観賞としてはそうとうに冷徹でとっつき悪い。
 ルールが明確で緻密に即興の過程を追えるならば、貴重な研究資料だとは思う。せめて映像つきだったらなあ。

 アルバムには全6テイクを収録。LPでは1978年にチャドボーンとの共作名義の2枚組LP"School"で3曲がリリースされた。CD化にあたりTake1,2,5が蔵出し。
 収録順は既発テイクをLP順で、蔵出しテイクを並べた。改めてテイク順に聴いて見たが、とっつきにくさは変わらない。
 なおオリジナルLP"School"は、ゾーンとして自己名義ではデビュー作に近いアルバムのようだ。

 Disc 2はCD化で初リリース。録音はDisc1にさかのぼること1977年6月にサンフランシスコにて。参加メンバーはゾーンとチャドボーンが固定で、Henry KaiserとBruce Ackleyが加わった。
 "ツイン"verと銘打たれた、この30分弱の音源がゾーンにとって、公式の商業的な初録音という。もっとも奏者は"ラクロス"のコンセプトに縛られ過ぎて、出来には今一つゾーンは納得できなかったとライナーにある。そこでDisc1の再演に至ったらしい。
 演奏を聴く限り、断続的なフレーズが淡々と続く。スピードはあまり本盤から伝わらない。探り合いっぽいな。
 
 ライナーに寄れば"ラクロス"は、ゾーンのゲーム・ピース"カーリング"と対をなすとあった。"カーリング"は長さやビブラートを指定してロング・トーンに限定したゲームらしい。
 "カーリング"はずっと公式音源は無し。けれどもTZADIKより"John Zorn's Olympiad Vol 1"(2015)のリリースで対比がようやく可能になったのも喜ばしい。

 なお初期のゲーム・ピースはTZADIKより"The Parachute Years"と銘打たれ、1997年に7枚組Boxでまとめてリリース済。本盤はDisc1と2だけ同じ音源がばら売りの形で、00年に再再発された。よほどゾーンには思い入れある音源なんだろう。音楽的には、そうとうにキツい。奏者は楽しいと思うが、聞き手はなかなか感情移入のポイントを作りづらい。

Personnel:
John Zorn – alto saxophone, clarinet, soprano saxophone, liner notes
Eugene Chadbourne – acoustic guitar, dobro, electric guitar, twelve string guitar, liner notes, tiple, six string bass, twelve string acoustic guitar

Mark Abbott – electronics
Polly Bradfield – violin, viola, electric violin
LaDonna Smith – violin, viola
Davey Williams – banjo, electric guitar, hollow body guitar

Henry Kaiser – electric guitar
Bruce Ackley – soprano saxophone

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