TZ 7352-2:Electric Masada "At the Mountains of Madness"(2005)

 やっぱ、鬼門だ。何回聴いても、馴染めない。


 マサダのサブ・プロジェクトで、たぶん2004年頃から始動した。編成をグッと増やし、2ドラムに1パーカッション、Ikue MoriのPCもリズムと捉えたら、ぐっとビート強調。フロントはジョン・ゾーンのサックスにマーク・リボーのギター。さらにジェイミー・サフトの鍵盤も加えた、豪華8人編成。
 さらにジョン・ゾーンのキューも積極的に飛ぶ。例えばこの映像をちょっと見たら、イメージ湧くかもしれない。


 演奏は凄腕ぞろいでスピーディ。しかし本質的なスリルに欠ける。手練手管を尽くした、名手ぞろいの安全なジェットコースター。そんな印象をどうしても受けてしまう。
 フリーな印象を受けるが、後述の通りゾーンが完璧にサウンドを支配した。さらにインプロ巧者ぞろいなため、どんな展開でも破綻しない。
 全て譜面とは言わないが、アドリブ要素満載のプログレ・アンサンブルを聴いてる感じだ。本質の即興スリルを、どうしても感じられない。

 サウンドは悪くない。ほんとうに何回も本盤は聴いた。高速フレーズでテーマの疾走など、実に痛快だ。名手の手腕を味わうには、格別の盤だと思う。
 けれども本盤で聴けるコンセプトは、ファン・サービス。ジョン・ゾーンゆかりの名手を綺麗にパッケージしたユニットって感じだなあ。

 たぶん僕がMasadaに求めるサウンドを、本盤で聴けないせいだ。
 Masadaの魅力はフロント2管の絶妙な役割分担だと思っている。テーマとアドリブ、ソロとバッキングがめまぐるしく自由に交換され、デイブ・ダグラスとジョン・ゾーンのガチンコ対決をMasadaに望んでいる。そこへドラムとベースの、タイトだが奔放なリズムが追い立てて、アンサンブルを怪しくスリリングに暴れさせる。
 最少編成のカルテットがゆえの自由度と、隙の無い音像に惹かれてた。

 ところがElectric Masadaのコンセプトは、僕の期待と真逆だ。フロントのソロ交錯なスリルは皆無。ゾーンの指揮による。さらに鍵盤が厚く膨らませ、空間はミチミチに詰まる。リズムの大勢なアタックが、なおも隙間を作らない。厚み一辺倒にとどまらぬメリハリは、ゾーンのキューで大胆に改変される。
 オリジナルのMasadaからはベースとトランペットが抜けた。ドラムのジョーイ・バロンはそのまま本盤へ参加。バロンはゾーンとネイキッド・シティからの仲だしな。まさに同志って感じ。

 もしElectric Masadaがリボーのエレキギターとトレバー・ダンのエレべ、シロ・バティスタのパーカッション、みたいな編成だったならば。まさにMasadaを一部電化しただけのコンセプトならば、ぼくはむしろ好きだったかもしれない。

 だけどこれはゾーンの本意ではない。むしろ上記の一部電化Masadaは音楽としてつまらないと、僕も思う。目新しさだけで、音楽的に新味はなさそう。
 もっとガラリとアプローチを変えて、新たにコントロールされたバンド。それがElectric Masadaだし、後継ユニットのDreamersだろう。
 そのためぼくはどうせなら、Dreamersの方が好きだ。イクエ・モリが居ないが、より精密でラウンジを超えたスリリングに整ったアンサンブルが聴けるって意味で。

 あ、でもMasadaのレパートリーをプログレ風に聴けるって意味なら、Electric Masadaは悪くない。本稿を書くため、何年かぶりに本盤を数日間ずっと聴きまくった。 
 結論の印象は変わらないが、それでも本盤の演奏は悪くない。いや、かっこいい。あくまでも、僕の好みじゃないだけだ。 

 Youtubeで改めてゾーンのキューを見てみた。ダイナミクスやソロの順を指揮してる。コブラ風のルールを持ったキューと、感覚的なハンド・サインを混在させている。
 あくまで指揮は奏者向け。観客へエンターテイメント込みで指揮はしない。その辺、ゾーンの音楽至上主義な冷徹さは、徹底してる。

 本盤は04年にモスクワと、スロベニアのリュブリャナで行われたライブをCDそれぞれに収録した2枚組。たぶんそれぞれのセットは編集なく、丸ごと収録と思う。
 ほとんどの選曲はダブっており、各ライブでのアレンジ違いを楽しめるのが、本盤の妙味。もっとも同じ曲の演奏時間は盤が変わっても、さほど増減しない。結構カッチリ決ってるのかも。
 Masadaシリーズとして、本盤でしか聴けない曲は"Metal Tov"だ。

Personnel:
John Zorn - alto saxophone
Marc Ribot - guitar
Jamie Saft - keyboards
Ikue Mori - electronics
Trevor Dunn - bass
Joey Baron - drums
Kenny Wollesen - drums
Cyro Baptista - percussion



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