TZ 7357:John Zorn "Moonchild: Songs Without Words"(2006)

 仮想バンドでの、ペインキラーよ再び?構築デュオ狙い?


 ハードコアなトリオ編成のムーンチャイルドは、フロント楽器を廃しマイク・パットンのシャウトのみに固定した。さらにリズム隊もバロンとダンの明確な手数同志をそろえ、ペインキラーでの曖昧な低音や、まちまちなドラミングも避けた。
 スラッシュの勢いと重戦車な凄み、即興のダイナミズムをより明確に定義したのが、このムーンチャイルドだと思う。

 敢えてジョン・ゾーンが(本作では)参加しないのも、スッキリした音像狙いではないか。クロウリーのオカルティズムと、アルトーの繊細さ。ヴァレーズの鋭さ。それぞれの要素を、漆黒で鋭くシンプルなアンサンブルに仕上げた。
 ゾーンは指揮とクレジットあることから、楽曲のみならずブースの中で進行キューを送っていたのかも。出音だけ聴くと、混沌さと精密さの双方が滲み出る。

 "Powerful Secrets are revealed through intensity and extremes of experience."と、ゾーンはジャケットに記した。「強く極端な経験を通じて、強力な秘密は明らかになる」とでも訳すのか。

 確かに本盤は知性と肉体性が併存した。
 ベースは時にメロディアスなフレーズを叩き出し、低音とリード楽器の立ち位置をフラフラと渡り歩く。ドラムはタイトながら、時に拍頭をベースとズラしポリリズミックなビートを作った。
 パットンは激しく自由に叫ぶ。即興に留まらぬキメの多さで、やはりルインズの影響を感じてしまう。メカニカルな場面展開無いところは、ムーンチャイルドならではだが。
 
 力押し一辺倒でなく、ミニマルや変拍子、ポリリズムなど様々なアプローチが楽曲ごとに現れる。剛腕フリーと一聴して思わせるが、かなり緻密な仕上がりだ。
 即興性よりも作曲の妙味こそが、ムーンチャイルドの魅力?うーん、わからなくなってきた。
 アルバム最後まで聴いていくと、むしろパットンはつけたし。ドラムとベースのアンサンブルこそが、本盤の肝に聴こえてくる。

 そしてジャケ裏では既に、2nd"Astronome"(2006)の発表を記している。本盤が5月、10月に"Astronome"がリリースされた。「三楽章7シーン」の予告した構成のまま。同年2月に"Astronome"は初演が完了。既に本盤リリース時点で、2ndの録音まで終わってたのかも。

 現在に至るまで、さらに手を変え品を変え、ムーンチャイルドのプロジェクトは続いていく。バンド編成も崩壊し、アンサンブルの顔ぶれも変わりながら。

Personnel:
Joey Baron: Drums
Mike Patton: Voice
Trvor Dunn: Bass

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