TZ 7344-5:Naked City "The Complete Studio Recordings"(2005)

 全てのスタジオ音源を、5枚組にまとめた05年のBoxセット。


 収録盤はNaked City (1990)/Torture Garden (1990)/Grand Guignol (1992)/Leng Tch'e (1992)"Heretic (1992)/Radio" (1993)Absinthe (1993)の全音源を収録した。
 ごつい割にジャケットの紙張りが甘かったり、作りはヤワいけれど。派手にデザインされたブックレットも含めて、駆け抜けたネイキッド・シティの全貌をつかむには手っ取り早い。アルバムごとに、方向性を変えていった様子が良くわかる。

 音楽的には猛然と駆け抜けハードコア・ジャズの規範を作り、パラダイム・シフトを作った傑作(ジョン・ゾーンとしては一要素)を堪能できるボックス。

"Naked City"(1990)☆☆☆☆★
 録音は1989年。88年からライブを重ね、満を持した1stとなる。ゾーンのフリーキーなサックスが前面だが、根本はフリー要素は希薄。ガッチリとアレンジされたハイテクニックなアンサンブルが詰まってる。
 時に数秒で終わる26曲もの収録はファイルカードの連続性、すなわち急速なゾーン流の転換概念を"バンド"で実現、かつ+αの一体感狙いと推測する。
 
 つまり主役はゾーンでも、アンサンブル総力戦の妙味で追求が狙いではないか。
 さらにジャズを超え映画音楽なども取りこんだ選曲で、自らの音楽ルーツを模索の意味合いも、今ならば付与できる。
 すなわちMASADAでユダヤ文化回帰を行う助走、として。
 
 サウンドはタイト&シャープ。生演奏でこの構築度を容易く達成する腕前に驚嘆する。 ゾーンの軋んだサックスがむしろ、ステレオタイプなイメージで余計かも。
 本作発売後にPainkillerが91年から平行し活動。代表アルバムを見ると、"KRISTALLNACHT"(1992),MASADA 1st"ALEF"(1994)と続く。
 どんどんとジョン・ゾーンは活動と音楽の幅を、貪欲に広げていく時期だ。

"TORTURE GARDEN"(1990)
 後のアルバムで楽曲が重複するため、評価の星を付与と、本盤単独でのコメントは割愛する。
 23分あまりで42曲。ミニアルバムの規模でかつ、どの曲も1分未満ばかり。
 コラージュをバンドで実現、のコンセプトを著す冗談みたいなリリースだ。
 前作はエレクトラ、本盤はクレイマーのシミー・レーベルから発売された。
  (2,6,7,18,24,26,36,37,39)は1stの再収録、他の楽曲は続く"GRAND GUIGNOL"に再収録。
 すなわち活動の架け橋として、ビジネス的な活路を模索で発売の盤かもしれない。

"GRAND GUIGNOL"(1992)☆☆☆☆
 (1)が17分越えの大作、続けて各種クラシックのカバー。そのあとに"TORTURE GARDEN"で予め発表された1分未満の曲が33連打。
 "Naked City"から変化のコンセプトは、アンサンブルの深化とハードコアな寸断。スタジオ作の視点は既に変わってる。
 
 (1)は曲構造あるものの、たぶん各フレーズは即興混ぜている。もっとも連続演奏で無く、複数セッションを編集もしくは連続録音かもしれない。場面毎の転換は、ふっと空気が揺らぐ。
 サックスもさほど目立たず、むしろSEや演劇的な場面からサントラ的な立ち位置っぽい。コラージュな曲構成部分が、ジョン・ゾーンらしさ。

 なお本boxでは(1)へマイク・パットンが声を足したverがボートラだ。
 そのバージョンでふんだんな前衛声が入った途端、"Naked City"が強まる。恥ずかしいことに聴き比べるまで分からなかった。ようはきっちりアンサンブルに前衛要素が乗るだけで、違うのか。

 クラシック曲のカバーは後年のラウンジ路線を彷彿とさせ、凶暴性は全くない。演奏の確かさは実感するが。"TORTURE GARDEN"楽曲は、初期路線から情緒を抜き、勢いと一発ネタのみ連打される。秒単位で変化のスリルが聴きもの。
 とっ散らかった混沌な意味で★一つ少ないが、ある意味"Naked City"を大づかみに最適かも。

"Heretic"(1992)☆☆☆

 トリオもしくはデュオによるSM映画のサントラ。即興要素が強まった点で、好評価を過去に受けたらしい。短時間にめまぐるしく音が飛び交うが、シンプルなアンサンブルゆえに見通し良く、
 互いの斬り合いがはっきりわかる。散漫と取るより多彩と聴きたい。

 作曲性は薄く、瞬発力を生かしたサウンドが詰まった。ゾーンの錐揉みサックスとEYEのシャウトが類型さを強調は否めないが。スピーディな即興のぶつけ合いは確かにスリルがいっぱい。

"Leng Tch'e"(1992)☆☆☆★

 30分強の長尺。組曲的な構成だが、スピードとハードコア一辺倒でなく重厚でノイジーなアプローチを見せた。もとは日本のみで発表のアウトテイク。完全即興で無く、かなり構成が決まっていそう。フリージャズやソロ回しとは異なる。
 "凌遅刑"がテーマゆえに、じわじわと死に至る過程を表現か。
 前半はドローン気味にじわじわと盛り立てた。16分位で山塚アイのシャウトがダブ気味に挿入され、凄惨さを増す。壮絶なテーマが音楽で、あまりに明瞭な響きだ。
 20分辺りから、ゾーンのハイトーンなサックスが切なく轟いた。

"Radio"(1992)☆☆☆☆

 カラッと明るく、ジョン・ゾーン流のコラージュ・オマージュ集。
 19曲はそれぞれ、さまざまなジャンルの別々な新旧ミュージシャンに触発されたミクスチャー。音楽だけでなく数曲は映画などもあり。しかし幅広い。これを全部聴いてるのか、ジョンは。
  
 短い曲もあるが、基本はきっちり数分単位で演奏されるため、タイトル通りバラエティに富んだラジオ番組を聴いてる趣きか。
 全二作の沈鬱さを拭い去り、ライブでのスピーディな楽しさを封じ込めたアルバム。

"Absinthe"(1993)☆☆☆★

 スタジオ最終作はがらりと方向性を変えたミニマル・ノイズ作品。
 あえてネイキッド・シティ名義で演奏の必然性が不明だが、何らかのコンセプトか。機械的でミニマルな作品群はエレキギターがわずかにメロディ性を持つが、起伏する構成とは違う。もっと単調さを狙った。
 
 敢えて無闇に長尺化せず各曲5分程度にまとめ、全9曲収録の盛りだくさんさが、彼ら流のスピード表示かも。また、わざわざ人力でメカニカルな雰囲気を狙うあたりも、スパイスが効いている。ネイキッド・シティと聴くには違和感ある音像群だが、ノイズとしてはコンパクトで集中した作品だと思う。

Personnel:
Joey Baron: Drums
Yamataka Eye: Vocals
Bill Frisell: Guitar
Fred Frith: Bass
Wayne Horvitz: Keyboards
Mike Patton: Vocals
John Zorn: Alto Sax, Vocals


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