TZ 7805:Many Arms " Suspended Definition"(2014)

 過剰なエクスペリメンタル/スラッシュなシーツが押し重なった。


 TZADIKでは2nd。ほかに自主制作と思しきEP盤の発表が、彼らのWebに掲載されてる。Many Armsはトリオのインプロ・バンドで07年にフィラデルフィアで結成。本盤はサックス奏者のコリン・フィッシャーをゲストに招いた。
 なおMany Armsはいわゆるロックではなく、2015年に中村としまると共演盤を出したりと、前衛的な即興寄りの活動のようだ。

 本盤は4曲入り。初手からパンチ力の強い、剛腕で重たいサウンドをぶちまけた。全て9~14分と比較的長めのプレイ。だが即興一発で組み上げた印象が強く、いわゆるテーマ~ソロのように杓子定規な構成は無い。けれどもミニマルにフレーズを疾走させる場面もあり、完全なインプロでもなさそうだ。
 
 (1)ではベースが重たいフレーズをぶりぶりと垂れ流し、ドラムが隙間なく手数多い叩きのめしを聴かせた。パワフルながら一曲目にこれは、ちょっと単調なスラッシュかと覚悟した。
 だがようやくエレキギターとサックスがユニゾンで、じんわりと長い譜割のフレーズを提示して、サウンドは緊張感が生まれる。中盤でのアドリブの間も、特にドラムが休むことなく打ち鳴らし続けた。

 一転して静かな(2)だが、テンションは下がらない。アンプの唸る音がちりちりと聴こえ、轟音の展開を伺わせる。エレキギターはサスティンをたっぷり保ち、じわじわと音色を歪ませていくようだ。同じフレーズがじわじわと崩され、プリペアード・ギターのように付属する音色が増えていく。
 4:10辺りでサックスが軋み音満載のフリーキーな音色で、無造作に音を重ねた。
 バンドが炸裂は5:55を廻ったあたり。ストンとクリアな音色のドラムがタムを中心に手数を多くキメ、ゆるやかにベースが加わった。そこからは疾走。
 力任せでは無く、あちこちに急転直下な場面展開もあり。多少は譜面があるのかも。

 (3)は勇ましいロールの炸裂から。ギターとサックスが整然と、リズム隊へ微妙にずらしたミニマルなフレーズを保つ。本盤でこの曲が一番好きだ。これをアルバム1曲目に持ってきて欲しかった。
 これはプログレ風のアレンジが施され、ドラムはスタート&ストップを明快に決めてギターとサックスの対話を引き立てた。
 いわゆるテクニックのひけらかしでなく、ミニマルで高速フレーズが繰り返される端々で、微妙に旋律の揺らぐ零れっぷりがカッコいい。
 猛然たる疾走が最高にスピーディで、爆裂な勇ましさだ。隙無く吼えつづけ、さらに知性を感じさせる名演。
 
 アルバム最後の(4)はイントロでもういちど、テンポを落す。滑らかなギターのアルペジオが繰り返され、訛る譜割でサックスとベースが加わった。やがてドラムが爆発のとたん、音像は混沌と炸裂のパレードだ。けれども中盤で冒頭のテーマがよみがえり、力一発の単調さは無い。

 知性と腕白、どちらかに軸足置いたバンドは多い。だがMany Armsはバンド名通り、いくつもの飛び道具を仕込んだ。クールにもワイルドにも行ける。この幅広さと、爆走のテンションを説得力持って聴かせる、テクニックの持ち合わせが彼らの最大の武器だ。

Personnel:
Johnny DeBlase: Bass
Ricardo Lagomasino: Drums
Nick Millevoi: Guitar

Colin Fisher: Tenor Sax, Baritone Sax

このアルバム・メンバーでのツアー映像があった。迫力あるスラッシュ・ジャズだ。


ついでに中村としまるとの共演映像もあり。13年アップの映像だから今年発売のCDも、昨日今日の付き合いではなさそうだ。

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