TZ 7335:John Zorn "Cobra"(2002)

 聴いて楽しめるジョン・ゾーンの"コブラ"だ。


 コブラはゾーンの作品でも最も知られ、多くの演奏もあるわりに「聴いて楽しくない」。映像でも今一つ、つまらない。コブラはやはり生演奏で、その場でプロンプターと奏者らのコミュニケーションを楽しむ盤だと思う。

 ジョン・ゾーン自身も何枚かコブラの盤をリリースしているが、試行錯誤やルールの遂行へ頭が行き、やはり音楽として繰り返し聴くには厳しい。だが本盤は、比較的・・・いやむしろかなり、聴いて楽しめる盤だ。

 まずコブラのディスコグラフィーをまとめよう。
1988:Cobra   [Hat Hut]
1995:東京作戦 [Avant]
1995:John Zorn's Cobra: Live At The Knitting Factory [Knitting Factory]
2002:Cobra [Tzadik]【本盤】

 コブラのルールそのものは口伝扱いされ、細かいところは良くわからない。とりあえずルール・ブック(もしくは譜面)がネットでも二種類、上がっていた。
http://hermes.neocities.org/zorn-cobra-score.pdf
https://www2.ak.tu-berlin.de/~gastprof/collins/experimental-music/Zorn/cobra_sheet.pdf
 そもそもこの楽譜は、2枚組でゾーンが最初にコブラをリリースのときに発表済だ。だ。最初期の映像で、プロンプターが指揮してミュージシャンが応えつつサインを送るさまは伺える。


 だがプロンプターの匙かげんで大きく音楽の愉しみは変わる。巻上公一のプロンプターを数回、ゾーンのプロンプターは1回見たが、あまりにも違いに呆然とした。巻上が場を盛り上げに軸としたら、ゾーンはメモリーを多用してより作曲家的な立場だったと記憶する。
 
 コブラについて論じるポイントはいくつもある。
・ゾーンの歴史として一連のゲーム・ピースにおけるコブラの位置づけ。
・即興音楽としてコブラの先駆性と独創性
・プロンプターと奏者の役割分担
 
 そう考えた人が、既にきちんと論文をまとめていた。英語だが読み応えある。
https://www2.ak.tu-berlin.de/~gastprof/collins/experimental-music/Zorn/americanmusic.28.1.0044.pdf
 短くまとまっているほうでは、こちらも興味深い。
http://www.academia.edu/3105732/The_Free_Improvisation_Game

 いちばんコブラを音盤化してつまらないのは、めまぐるしく音楽が入れ代わるところ。瞬発力で駆け抜けるさまが面白さでもあるが、プロンプターや流れが不明なまま聴いても、あまりにシュールで抽象的な音列でしかない。

 だが本盤は違う。かなり長めに個々のミュージシャンをフィーチュアして、じっくり聴かせた。"John Zorn's Cobra Game Pieces Vol.2"と銘打たれて。なお、第一弾は"Xu Feng"
 後述の通り、そうそうたるメンバー。ゾーンゆかりの凄腕たちが並ぶ。2曲のみとはいえ、デレク・ベイリーの参加も目を引くところだ。

 素早くフレーズを受け渡してく場面も(1)や(6)の冒頭で聴けるが、せわしなさは無い。それでいてスピード感あり。まさにファイルカード・システムで作曲されたようなダイナミズムと、突拍子もないアイディアが次々に交錯する、聴き応えある盤だ。

 本盤ならばルールを見ながら、個々の変化を細かく想像する時間に耐えられる。比較的長めに個々の奏者が音を出しており、何回も聴くことができる。
 もっとも、そもそもコブラは全て即興的なものだ。演奏へかけられた時間以上に、分析に時間をかけるのはいかがなものか、とも思うが。

 たぶん、スタジオ録音。個々の楽器が分離良くきれいに聴こえる。編集してるのかな・・・一発録音のようにも聞こえるけど。

Personnel:
John Zorn: Prompter

Cyro Baptista: Percussion
Jennifer Choi: Violin
Sylvie Courvoisier: Piano
Mark Dresser: Bass
Trevor Dunn: Bass
Mark Feldman: Violin
Erik Friedlander: Cello
Susie Ibarra: Drums
Ikue Mori: Laptop Computer
Marcus Rojas: Tuba
Josh Roseman: Trombone
Jamie Saft: Keyboards

Annie Gosfield: Sampler (on 3,5)
Derek Bailey: Guitar (on 3,5)


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