GO GO 2・3's

 忌野清志郎の噴出する才能と、バンド好きが最も前に出たのが2・3'sだろう。

・・・といいつつ、リアルタイムでは聴いたこと無し。RCからタイマーズまでは興味あったが、このころはちょっと遠ざかってた。
 やっぱRCが欲しいよ、と。頭ではバンド幻想って無いはずなのに、感情でバンドを求めてた。だから2・3'sからLittle Screaming Revue、ラフィータフィー、LOVE JETSと続く一連の清志郎バンドは、いまだに聴いてない盤も何枚かある。

 2・3'sがCDを発表した期間は92年から93年と一年余り。シングル4枚と、アルバムは"GO GO 2・3's"(1992)、"Music From POWER HOUSE"(1993)だけ。たまたま棚から"GO GO 2・3's"出てきて、聴きなおしてる。とはいえ、初めて聴いたのもせいぜい数年前だが。

 聴きながら検索すると、今は2・3'sって再結成してるんだね。2013年4月2日下北沢440で再結成ライヴ<キセキのキヨシロー>が切っ掛け。
 ライブレビューもあった。http://ototoy.jp/news/73484
 このインタビュー読むと、再結成のきっかけや当時の様子が伝わって興味深い。今年の頭もツアーやってたみたい。http://www.barks.jp/news/?id=1000101595

 1stアルバム"GO GO 2・3's"(1992)は14曲入り。清志郎の作詞作曲が12曲(うち一曲は三宅伸治と共作)ほか2曲は2・3'sのメンバー、中曽根や山川の作品。あくまでバンドに拘ったようすが伺える。
 収録曲は2ndシングルの(7)と(13)、あとはロンドンで新たに録音された。

 改めて"GO GO 2・3's"を聴いたら、良い曲が入ってるなあ。けっこう、ごった煮のアルバムだ。曲調もアレンジもずいぶん幅広い。

 根本の曲調は、どこかのどかでカラッと乾いたイメージがある。この時期の清志郎は、なんか達観してるイメージがあった。ドロッとエロくて不良の匂いしたRC時代から、隠居したかのように。その象徴が、今もCMソングになってる"デイ・ドリーム・ビリーバー"のカバー。
 爽やかとも違うが、脂がスルッと抜けてる感じ。ロック・アレンジでのフォーク回帰か。
 清志郎の節回しは独特だ。付点音符がそこらじゅうについて、小節線からはみ出しそうで破綻しない。リズム隊と別の時間を生きてる気がする。それが何よりの魅力。

 (1)はガッツリのロックンロール。ザラリと乾いたギターの音色がイギリスっぽい。平歌はコール&レスポンスだけで成立する、ライブを意識したか。瑞々しいサビのメロディが素晴らしい。ぶっちゃけ、平歌をもう少し凝ったら超名曲になったと思う。
 立ち止まらず、アイディア一発で成立させてしまう手早い仕事ぶりが、今一つ乗れなかったんだなあと、今にして思う。
 当時のライブ映像がこちら。


 (2)はホノボノなセンチメンタルさが溢れた楽曲。前曲と似た曲調だが、もう少しフォークさが強い。アコギ一本でも成立する楽曲を、無造作にバンドアレンジした感じ。
 ダビングされたMark Cherrieのスティール・パンがトロピカルさを足し、楽曲の無邪気な夢見心地さを演出した。歌詞は少々シビアな世界なため、毒を抜いたか。
 
 (1)と(2)の中間が(3)。良い曲だ。ハモンド・オルガンでNick Plytasを足して、英国風R&B色を出した。サビでの猛烈な切なさが清志郎節だ。平歌の大らかな譜割を、サビできゅっと引き締める。キックを薄めに、ハットを強調したドラムへ、ぶいぶいとベースやギターがフラットに前へ出る。今聴くと、ミックスやマスタリングが薄っぺらい・・・。
 再結成でのライブ演奏がこちら。


 (4)は一転してカントリー色を出す。下世話でコミカルな曲調を見事に当てた。
 ロンドンでこの手の曲調を採用するあたり、一ひねりしてる。メンフィス録音の"Memphis"(1992)は本盤のつい、半年前だ。
 裏拍強調のスカ・ビートへスライド・ギターが味付けして、ぐっと泥臭い演出だ。しかしケイジャン風に盛り上がろうとも、ドライな味わいが常にある。
 アコーディオンを弾いたのはAlan R.Dunn。
 
 (5)はハーモニカのイントロ。吹いてるのはMitt Gamon。すかっと抜けたレゲエのアレンジで、軽やかさを強調した。これも上物はアメリカン・カントリー風味。
 平歌でじわじわと押さえつけ、キャッチーなサビで舞い上がる。魅力的なサビを持つだけに、平歌の地味さが惜しい。この手慣れっぷりが、清志郎でもあるのだが。
 オルガンは(3)と同じニッキー、コンガはSymon Graytonが演奏した。エンディング以降のリフレインが切なく爽快だ。カラッと晴れた日に野外で聴きたい。
 
 ガツガツの硬い音に一転が(5)。ボーカルがグッと前にミックスされた。やけに右側へ定位は、60年代の疑似ステを意識か。曲想も60年代のブリティッシュ・ビートっぽい堅苦しさと勇ましさが滲む。今までのアコースティックっぷりが、この曲でガラリとムードを変えた。
 この曲聴いてたら、泉谷しげるか佐野元春にカバーして欲しくなった。ざくざく畳みかけるカッコよさを味わってるうちに、あっという間に終わってしまう。

 (7)は2ndシングルのA面曲。いわゆるRC節で"たとえばこんなラブソング"を連想するメロウさを持つ。もちろん清志郎の、この世界は好きなんだが。
 日本で録音、ハモンドとピアノはチャールズ清水が演奏した。シンプルなソロを大らかに弾くギター・ソロも全部ひっくるめて、清志郎の世界観が奇妙に完成してる。
 この楽曲は他の曲に比べて、コード進行を凝ってる気がするなあ。同じメロディを次々に歌い分ける、ボーカルの妙味があってこそ成立する楽曲だ。これは清志郎ならでは。カバーだと単調に終わってしまいそう。

 (8)は中曽根の曲でストレートなロックに仕立てた。ボーカルも中曽根かな。ザクッと刻むギターはイギリスを意識かもしれないが、むしろ日本のロックぽい縦ノリを感じた。いかにも清志郎っぽい皮肉な歌詞と思ったら、詩も中曽根だった。
 コーラスのトップ音域は清志郎、だよなあ。微妙に震えるピッチだ。
 
 (9)はもともと、古井戸に提供という。何年前の曲だ。他の清志郎の作品と違和感ないのが凄まじい。アレンジはマンドリンみたいな響きも薄くダビングして、ブリティッシュ・ブルーズ風に整えた。たしかにこういう乾いた世界は、イギリスが似合うのかもしれない。
 ふくよかな二拍三連に譜割が膨らむ歌声が愛おしい。こういう杭打ちビートとほのぼのした感想聴いてると、ビートルズを連想してしまう。"Your mother should know"とか。ハーマンズ・ハーミッツを何か聴きたくなったな。

 タイマーズのアウトテイクみたいな(10)。"偽善者"とか、あの辺のテイストだ。このドライなギター・ロックもやっぱりイギリスか。他の曲でもそうだが、アップテンポに畳み掛けるドラミングが、かっこいい・・・と書こうとした瞬間、やたら長い喋り芸が始まってしまう。うーん、清志郎のギャグセンスだな。
 
 (11)でもういちど、のどかな世界に戻る。オルガンは前曲と同様にニックだ。ボーカルはメンバーの大島が努めた。爽やかに2ビートっぽい軽快さは、なんか元ネタがありそうな気がするが・・・思い出せない。ドレミファソファミレド、と丁寧に拍頭を叩いて上下する歌声は、やっぱ素直で清志郎との差を感じた。

 (12)は山川の曲。このへんで、バンドメンバーの紹介とスポットライトを当てる演出だ。この楽曲は逆に、節回しを清志郎に近づけようとする意識を感じた。
 乾いたギター・ソロのせいか、イギリス風味に米サーフィン・インストのあっけらかんさも足されてる気がする。ハーモニカは奏者のクレジット無いので、清志郎の演奏かな。
 (13)が(7)のシングルB面曲。鍵盤は厚見玲衣だ。他の曲に比べ、クリアでエッジの立った音が明らかに違和感あり。エレキ・シタールや打ち込み風のギター・リフなどの音運びが、まじめすぎるくらい丁寧だ。
 アレンジはバンドっぽさが全くない。スタジオで組み上げた繊細なガラス細工を、大胆に清志郎がスプレーを吹き付けたかのよう。細々といろんな音がダビングされている。ごちゃごちゃさせない、きれいな仕事だ。

 アルバム最後の(14)もライブを意識した楽曲。ニックが鍵盤関係をダビングした。ちょっと爽やかすぎるけれど、やはり名曲だ。平歌でシンコペート連発で畳み掛け、サビで上にすぱっと表拍の連打で炸裂するダイナミックな構成が良い。サビでコブシ突き上げる風景が浮かぶ。ライブの映像はこちら。


【収録曲】(From Wiki)
1.Let's GO(IKOHZE)
2.あの娘の神様
3.いくじなし(Bye-Bye)
4.お兄さんの歌
5.インディアン・サマー
6.75日(75 days)
7.いつか観た映画みたいに
8.芸術家 【作詞・作曲-中曽根章友】
9.あの娘が結婚してしまう パート2
10.現場処理の男
11.素敵なエンドーさん
12.ハッピーバースデー【作詞・作曲-山川のりを】
13.NEWSを知りたい
14.ぶっちゃけた恋【作詞・作曲-忌野清志郎、三宅伸治】

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