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Yellow Magic Orchestra 「Public Pressure= 公的抑圧」(1980)

 リリースを許可が正直なところ、不思議な盤。

 79年8月のLA、同年10月のロンドンと11月のNY、さらに12月の東京公演から選りすぐりで作られた。A面が全てロンドン、B面がB1のLA,B2~B4がNY、B5が東京の音源が使われている。
 
 YMOを全肯定の論調にしたいとこだが。本盤だけはどうにも未だに馴染めない。今まで聴いた回数が最も少なく、評価もあまり変わらない。
 そもそもYMOは圧倒的にスタジオ・バンドで、ライブは興行の要素が強いと思っている。緻密な音バランスも、多様な工夫もステージではスタジオに比べ限界がある。

 まして当時は熱暴走と機材が隣り合わせ。不安定な楽器を元に、なおかつYMOの最大の魅力である、機械と人力の調和をライブでは生かせない。即興性と臨場感がライブの魅力だとぼくは思う。
 機械に見事合わせるありさまを披露は、芸能でなく曲芸だ。現代ですら、そう。シーケンサーにばっちり合わせた演奏を見て、楽しいか?

 まして三人だけではサウンドを構築できない。このときのステージも、矢野顕子と渡辺香津美がサポートした。
 YMOの三人が演奏技術に難があるならまだしも、凄腕ぞろい。にもかかわらず、シーケンサーでグルーヴを縛られ、その上でノリを生み出す苦行を強いられた。
 
 時代的に、YMOの先進性やコンセプトの斬新さは言うまでもない。日本のバンドが海外で賞賛って構図は、現代ですら演出に有効だ。
 凱旋お披露目って意味でも、本盤は記録的に貴重だ。ビジネス的にこのタイミングで、ライブ盤を出すことに意義はある。けれど、どっか引っかかる。
 せめてもう一枚、"Solid State Survivor"(1979)に続くスタジオ・アルバムを出して、そのあとにツアーとライブ盤って構図だととても綺麗だったのに。

 しかもこの音源は契約上の問題で渡辺香津美のギターは消され、坂本によるシンセのダビングに変わった。ドラムも差し替えだそう。
 ライブ盤にダビングして飾るのは珍しいことではないから、それはまあいい。でもスタジオ音源と全く違う色合いを、逆に削ぐのがもったいないと思う。仕方のないことだとしても。

 アレンジの音色もシンセが単調に響く。やたらシンセのソロが多くて、間延びの印象も否めない。いかんな、本盤は文句ばかり出てくる。

 良いところも書こう。シーケンサーが動きながらも、シンプルで弾む幸宏のドラムと細野のベースが生み出すグルーヴは格別だ。
 完璧にジャストではないにせよ、かっちりまとまったビート感の中で、うねりをだすベースとリズムを弾ませるドラムのテクニックは本当に素晴らしい。

 いわゆるテクニカルに指の周りこそ披露しないが、奔放にアドリブ・ソロを弾きまくるシンセって坂本の構図も興味深い。
 YMOのみならず他のキャリアを見渡しても、ソロを取りまくる坂本ってスタイルはあまり思いつかない。プレイヤーとしての懐を本盤は堪能できる。特に"東風"でのソロは格別。テーマに向けて高らかに盛り上がるさまは、何度聴いても痛快だ。

 簡素とは思うけれど、勢いあるアレンジも心地よい。いっそパンキッシュなほどスピーディな各曲は、当時の粗い機材や環境を吹き飛ばす鮮やかさだ。
 "Cosmic Surfin'"を筆頭に、各曲の生き生きした演奏っぷりも見事。シーケンサーに縛られず、飾りとして消化してきっちりとライブ感を出している。

 ぼくは本盤をかなり後になって聴いた。前述の偏見もあり、ちょっと耳にしていまいち聴く気にならず、後まわしにしていたため。
 たぶんきちんと聴いたのは20代になってから。それは本盤の最高の名演、" The End Of Asia"の魅力を別の機会に知ったからだ。

 第三舞台の"朝日のような夕日をつれて"の冒頭。本当にしびれた。本ライブ・テイクの"ホ~"って観客の掛け声もひっくるめて、空気感が素晴らしい。
 ドラムがビートを刻み、鍵盤がテーマを奏でる。この曲を聴くたびに、スポットライトに照らされた5人の男たちが脳裏に浮かぶ。
 
 

Track list
A1 Rydeen 5:08
A2 Solid State Survivor 4:01
A3 Tong Poo 6:01
A4 The End Of Asia 6:51
B1 Cosmic Surfin' 4:35
B2 Day Tripper 2:42
B3 Radio Junk 4:19
B4 La Femme Chinoise 6:15
B5 Back In Tokio 1:52

Personnel
Producer – Alfa Records, Inc., Y.M.O. with H. Hosono
Performer – The Y.M.O.

Bass – 細野晴臣
Drums, Vocals – 高橋ユキヒロ
Keyboards – 坂本龍一

Keyboards, Backing Vocals – 矢野顕子
Programmed By 松武秀樹

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