TZ 7191:Steven Bernstein "Diaspora Hollywood"(2004)

  茶色く渋く、したたかに。そんなクレツマー・ジャズが聴ける一枚。

 Sex MobやMillennial Territory Orchestraを率いるSteven Bernstein(tp)は、TZADIKでアルバムごとにメンバーを変えてユダヤ・ルーツと音楽実験を行ってる。本盤はその3作目。

[Discography]
1999 "Diaspora Soul"
2002 "Diaspora Blues"
2004 "Hollywood Diaspora"【本盤】
2008 "Diaspora Suite" 

 ユダヤ人の離散居住を指すディアスポラをタイトルに冠した本シリーズの中で、本盤はハリウッド初期の欧州や東海岸から集まった人たちに思いをはせたようだ。全11曲中、3曲の自作以外はトラッド曲を採用した。
 クレジットには作曲者として、ウクライナの20世紀初頭に活躍したヨッセル・ローゼンブラットや息子で歌手のヘンリー・。ローゼンブラット。他に、詳細は不明だがHazzan Moshe Ganchoffのユダヤ音楽レチタティーヴォなどのクレジットがジャケットに記載あり。

 低音木管との2管編成で、ピアノがおらずビブラフォンでコード感をやんわり出すアレンジな本盤は、奇妙にかい離した浮遊感とミニマルさが特徴だ。
 相棒の木管も比較的、中低域を強調する楽器選び。フルートを吹くときも、高音の甘さより吹きすさぶ強さを狙っていそう。

 バンド的なダイナミズムや斬り合いは希薄で、リズムはむしろカラオケかループのように淡々と刻む。ビブラフォンが緩やかなカウンター・メロディで空気を揺らし、ソロは淡々とサウンドに乗っていく。

 アラビックな旋律にユダヤ風味を香らせて、たるっと穏やかで冷静な空気を醸し出した。ここには熱い躍動よりは、落ち着いた強靭なダンディズムを感じる。
 ハード・バップの熱狂とは全く異なる、鋭く鈍く光るスリルが滲んだ。
 
 アレンジやソロはテクニカルな曲芸に走らず、地味で着実。なお完全一発録音では無く、ところどころでホーンのダビングも行って音に厚みを出した。この追加加工のスタンスそのものが、いわゆるジャズの瞬間芸術性とは異なるベクトルだ。
 
 繰り返し聴くほどに、じわじわ来る。味わい深い盤。

Personnel:
Steven Bernstein: Trumpet, Flugelhorn
Pablo Calogero: Baritone Saxophone, Bass Clarinet, Bass Flute, Flute, Balloon Flutes
D.J. Bonebrake: Vibraphone
Danny Frankel: Drums, Bongos, Percussion
David Piltch: Bass

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