TZ 7309:John Zorn "Filmworks III: 1990-1995"(1997)

 ジョン・ゾーン映画音楽の第三弾はMasadaの切っ掛けも収録した。


 大きく分けて4種類の作品に提供した音楽を集めた盤だ。活動の幅を広げるゾーンが、さまざまな分野に手を出してた様子が伝わる。

 (1)-(12)はMasada結成のきっかけになったセッション。(11)でロバート・クインがギターを弾いてる以外は、マサダのメンバーがジャズを奏でた。
 ただしここではユダヤ・ルーツはあまり自覚的ではない。あくまでスリリングな即興ジャズを繰り広げる。
 したがってスピード感は希薄だが、不穏なムードをまとったジャズを聴ける意味で、このセッションは貴重だ。マサダではもっと、センチメンタルな要素も含まれるため。
 なおクインが加わった(12)の演奏も、ほんのりロックの勇ましさが漂って楽しい。

 1988年2月の録音。Joe Chappelle監督、"Thieves Quartet" (1993)へのサントラだ。本盤に12曲収録とはいえ1分足らずの少品ばかりで、合計で17分程度しかないのが残念。
 エンド・タイトル用の曲では、がっつり4分の演奏が聴ける。


 (13)は玖保キリコのアニメ"Tsunta"(1988)用のセッションで、88年2月に録音。本盤へは3分強の音源1曲だけを収録した。ライナーによるとゾーンも存在を忘れており、95年にスタジオの倉庫で音源を見つけたらしい。"シニカル・ヒステリー・アワー"アウトテイクっぽい雰囲気もあり。
 ビル・フリゼールのギターやバンジョーを中心に、コラージュ風の断片がミリミリと続く。ちょっと軽やかでヘンテコ、穏やかでキッチュ。浮つきながらもスリリング。ファイルカード的な要素がドップリの作品だ。
 予告編などの映像は、Youtubeで見つからず。

 (14)-(24)はマーク・リボーとジョン・ゾーンのデュオ・セッション。94年4月の録音で、Mei-Juin Chen監督"Hollywood Hotel" (1994)用の音源だ。
 ノーギャラのため一晩でさくっと録音された。スピーディなテイクからしっかりジャズ、緩やかなフリーまで幅広い音楽性の断片が詰まった。10曲で合計18分ほど。瞬発的なセッションとはいえ、二人のアイディア豊富さを味わえる貴重な記録だと思う。

 エッジすれすれのフリーキーに走らず、メロディアスだが前衛路線の絶妙なバランス感が気持ちいい。これはこれでがっつり一枚、長尺のアルバムでも聴きたいコンビ。
 予告編などの映像は、Youtubeで見つからず。

 (25)-(56)の全32曲/合計22分の小品集も本盤の目玉。Masada結成音源だけじゃない。90-94年にかけて6回のセッションをまとめており、広告代理店Weiden And Kennedyに提供したCM音楽集だ。ぱっと聴き、どれもこれも不穏で不気味でヘンテコで前衛的。とてものどかなCM音楽にふさわしくない。いわゆる先鋭的なプロモーション・フィルム用か。

 ここではまさに断片が詰まった。15秒から1分くらいまで、短い時間で様々な組み合わせのセッションが入ってる。アイディアやスケッチ、メモのたぐいがほとんどに聴こえる。楽曲へ至る前に演奏は終わってしまい、脈絡も関連性も無い。
 若干のメロディある曲でも、いわゆるキャッチーさは希薄だ。譜面なのか、編成とアイディアだけのインプロから切り取ったかは分からない。少なくともあからさまに譜面の存在は伺えない。

 腰を据えて分析的に聴くのも違う気がするけれど、それぞれのモチーフへの音楽的な狙いを想像も楽しい。

Personnel:
(1)-(12)
John Zorn: alto, piano on (12)
Dave Douglas: trumpet
Greg Cohen: bass
Joey Baron: drums
Robert Quine (11): guitar

(13)
Bill Frisell: guitar, banjo
Peter Scherer: keyboards
Carol Emanuel: harp
Christian Marclay: turntables
David Hofstra: bass, tuba
Cyro Baptista: percussion, voice
Bobby Previte: drums, percussion

(14)-(24)
John Zorn: alto
Marc Ribot: guitars.

(25)-(56)
Carol Emanuel: harp
Marc Ribot: banjo, guitar
Cyro Baptista: percussion;
Kermit Driscoll: bass
Peter Scherer: keyboards
David Shea: samples
Arto Lindsay: guitar, voice
Bill Laswell: bass
Ikue Mori: drum machines
Keith Underwood: flute
Jill Jaffee: viola
Miguel Frasconi: glass harmonica
Robert Quine: guitar
Guy Klucevsek: accordion
Anthony Coleman: organ, keyboards
Greg Cohen: bass
Joey Baron: drums
Chris Wood: bass
Sim Cain: drums
Eric Friedlander: cello
John Zorn: alto

関連記事

コメント

非公開コメント