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Abdullah Ibrahim 「Knysna Blue」(1994)

 コンセプト先行で、大仰な味わいを追求した異色盤。

 アブドゥール・イブラヒム(ダラー・ブランド)が還暦を迎え、いささか安手の実験を行った盤。前作"Desert Flowers"(1992)で導入したシンセやボーカルの技をさらに追及した。

 フュージョンと言うには、テクニカルさに欠ける。エキゾティックな風味があり、毒にも薬にもならないスムース・ジャズには少々違うが・・・それでもジャンル分けならば、もっとも近しい。
 イージー・リスニングやヒーリング音楽っぽい聴き方もできるが、少しイブラヒム節がありBGMで聴き流すにはデコボコしてる。

 録音は地元、南アフリカのスタジオにて。シンセや声、ピアノにソプラノ・サックス。テーマからアドリブって単純な構成を取らず、もっとコンセプチュアルな重厚さを狙った。
 正直、この安っぽいデジタル・シンセさえ使わなければ、単調に押す(1)で幕開けしなければ。リズム・ボックスのチャカポコと軽い打音も、印象が変わるだろう。
 薄っぺらく寒々しいシンセの音色が、この盤の味わいをずいぶんダサくしてる。

 最後の(8)でモンクの作品を取り上げた以外は、自作曲。(4)で"Blues for a Hip King"っぽい旋律を使ったり、完全に新鮮なアプローチではない。
 しかし冒頭曲で15分も尺を取って、延々と語ったりと組曲っぽさを強く強調した。冷たいファンクネスを受け入れられるかで、本盤への評価が変わる。

 パーカッションをリズム・ボックスでチープに鳴らし、サックスも自らの多重録音で涼やかに鳴らすあたり、イブラヒムの多才さは分かる。
 ヘタウマのボーカルに乗って、南ア的なメロディ・ラインでポップに仕立てた(2)からアルバムを始めたら、ずいぶん本盤のイメージは軽やかになった。

 アルバム中盤はピアノ・ソロ。荒々しさは控え、ピアノが瑞々しくきらめく美しい世界が広がる。
 最後にモンクの武骨なメロディで締める演出も、ロマンティックさと寂しさが同居して密やかなエンディングで素敵だ。

 率直に言おう。(1)を飛ばして、(2)から本盤を聴くことを薦める。イブラヒムが本盤で一番やりたかったのは、(1)でのメッセージ性なのは分かる。しかし過剰な演出と、情けないデジタル・シンセ使いのため、本盤への敷居が高くなってしまった。
 
 本当は(2)も飛ばしたほうがいい。(3)以降は、達観した平和な風景ながら、イブラヒム流の雄大なピアノ世界を楽しめる。
 だけどこの聴き方は、イブラヒムの本意で無いことは確か。悩ましい。

Track list
1 Knysna Blue 15:46
2 You Can't Stop Me Now 5:33
3 Peace 3:56
4 Three # 1 3:13
5 Kofifi 2:51
6 Three # 2 3:00
7 Cape Town 6:32
8 Ask Me Now 2:58

Personnel
Producer, Arranged By, Piano - Abdullah Ibrahim
Recorded At Milestone Studio September / October 1993

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