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Abdullah Ibrahim 「Desert Flowers」(1992)

 ひたひたと円熟のピアノ・ソロ。

 アブドゥール・イブラヒム(ダラー・ブランド)が58歳のときに出したピアノ・ソロ。ある種、王道で典型的なアプローチに思えるけれど。ディスコグラフィを眺めてたら"African Dawn"(1982)以来、約10年ぶりのピアノ・ソロ作だった。
 
 この当時の新曲群をピアノ・ソロで演奏って趣向だろう。数曲では歌も披露。渋く、穏やかなジャズ・ボーカルを歌って見せる。決してテクニカルではないが、雰囲気のある低い響き。チェット・ベイカーのごとく、歌でもいけそうでは?と思ってしまうのはファンの欲目か。

 録音はニュージャージーのヴァン・ゲルダー・スタジオ。91年12月18日の一日で録りきった。
 和音の響き、左手の粘りやうねりは定番なイブラヒム節。しかし荒っぽさや熱気はずいぶん薄まり、達観した風情で緩やかに奏でた。(1)(11)ではシンセも導入し、うっすらとエキゾティックな味わいもつける。

 歳を取った。むやみに若ぶらず、芸風を繰り返さず。脂っこさや毒気をすっきり抜いた演奏だ。これまでの迫力や凄みを求めたら、確かに物足りない。
 むしろニューエイジ的な平和な響きすら似合いそう。

 今、Amazon Music Unlimitedで聴ける盤は曲順をいじっており、(1)(11)を最後に持ってきた。だからシンセによる奇妙で安手な味わいに戸惑うことなく、ブランドのピアノを中心に聴ける。いがいと良い選曲かもしれない。

 ブランドはピアノだけでも説得力ある演奏を行えるのに。本盤ではずいぶんスムース・ジャズっぽいアプローチを取った。(1)と(11)でサンドイッチされた本盤は、イブラヒムの奇矯さが目立ってしまう。

 ピアノ・ソロならば、イブラヒムの個性はあり。なのに彼は、いまさらチル・アウト的なサウンドスケープに色気を出した。ぎりぎり土俵際で踏みとどまった、実験作。

 なお数年前に書いた感想はこちら。多少ぼくの感じ方も当時から変わっており、昔の文章も残しておく。

Track list
1 The Praise Song 4:49
2 Just Arrived 4:49
3 Ancient Cape 4:35
4 Desert Air 4:53
5 Come Sunday 4:55
6 District Six 3:30
7 Sweet Devotion 5:59
8 Edie 3:59
9 For John Coltrane 7:55
10 Tsidi 3:13
11 Mizu / Water 5:09

Personnel
Piano,Synthesizer,Vocals - Abdullah Ibrahim
Recorded at The Van Gelder Recording Studios, Englewood Cliffs, New Jersey, 18th December 1991

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