TZ 7320:John Zorn "The Bribe"(1986/1998)

 傑作ファイルカード作品"スピレーン"の数か月後の作で、同様の製作手法が取られた。"スピレーン"ほどは語られないが、同じく傑作だと思う。


 元は前衛劇団Mabou Minesのラジオ番組用(次に舞台化)で86年に書かれた。それをふくらませたのが本盤だ。ところが単に"スピレーン"と同時期に音源が発売されなかったため、評価が埋もれてる。ジャケットも"スピレーン"の構図をコラージュなのは類似性の強調か。

 なおこの作品ではカットアウトや素早い場面展開のみが、テーマでは無いらしい。楽曲によってじっくりと一つのテーマを続けるところが、特徴だ。
 したがってファイルカード作曲の発展系、ラウンジ風アプローチな諸作の素体、Naked Cityなどスピーディなハードコアの萌芽と、さまざまな要素が本盤から連想できる。

 本作は以下の3部に分かれ、クルクルと場面が変わる。エレガントでハードボイルドな雰囲気だ。"スピレーン"のハマーと同様に、パルプ・フィクション、B級映画などが世界観らしい。

Part 1 Sliding On The Ice(氷の上を滑る)
Part 2 The Arrest(逮捕)
Part 3 The Art Bar("Art Bar"ってバーの名前?)

 いきがった気取りと洗練されたエレガンス。疾走と素早さ。ダンディズムとかっこつけ。似ていても異なる二つが融合し、勇ましくも騒々しく、洒落てるが荒っぽい世界を漂わす。そこへ日本風味のエキゾティックさを混ぜるため、混沌さが増した。
 とはいえ乱雑ながらも根底は整っており、無造作だが通底する共通項がある。

 音楽はジャズを中心に雑多な要素が混ざり、コラージュの無意味なノイズも一杯。アドリブっぽいフレーズは有るが、あくまで主導権はゾーンの制御下に置かれた。この当時のゾーンは隅々まで音楽をコントロールした。即興とフリーは別物と考えてたように思えてならない。
 メンバーは後述の通り凄腕ぞろい。演奏に破綻は一切なく、鋭くタイトかつ正確に音楽が紡がれる。トラックは26個も切られ、(16)の11分半と(24)の9分以外は一分足らずから数分までの短い尺。Naked Cityに通じる断裂ぶりだ。
 
 なお長尺な(16)は和風風味漂う、淑やかな楽曲。滑らかなメロディの漂いが美しい。

Personnel:
John Zorn: Alto Sax
Anthony Coleman: Piano
Marty Ehrlich: Reeds
Carol Emanuel: Harp
David Hofstra: Bass
Wayne Horvitz: Organ
Christian Marclay: Turntables
Ikue Mori: Drum Machines
Zeena Parkins: Harp
Bobby Previte: Percussion
Robert Quine: Guitar
Reck: Rhythm Guitar
Jim Staley: Trombone

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