TZ 7341:John Zorn "Filmworks XIII: Invitation To A Suicide"(2002)

 凛とした美しさとエレガンスが匂いたつ。マーク・リボーのギターが冴え渡った。

 ジョン・ゾーン映画音楽集の13作目は馴染の仲間を集めた、淑やかなラウンジ系音楽。ライナー読むとゾーンもこの作品には強い手ごたえあったらしい。
 曲構造はシンプルで、むしろそっけない。抜群の演奏力でミニマルなリフが繰り返され、ソロが上に載っていく。ほぼ、その構成をアルバム通して踏襲した。テーマは時に変奏され、ソロを取る楽器やアレンジを微妙に変えて現れた。

 ソロとバックのインタープレイよりも、ソロって表現がふさわしい。淡々とバックは演奏し、ソロがつながる。バッキングはソロに反応せず、冷徹にテンポは変わらない。へたすればアルバムを通して、ってくらい、テンポ感のトーンはずっと一定だ。
 そしてアルバム最後に、歪んだエレキギターの炸裂するアップなロックンロールでかっこよく幕を下ろす。この楽曲でエンディング・ロールだろうか。

 ともすれば単調でやっつけな音楽になりかねないコンセプト。しかしゾーンのセンスとミュージシャンの演奏で、素晴らしくスリルある美しさを産み出した。
 切ないメロディはクレツマーよりラテンを連想する。帯でTZADIKは本盤のサウンドをエンリオ・モリコーネやピアソラ、ニーノ・ロータを引き合いにだした。

 ブライトな音色が奏でる上品さ。だからこそときどき、エレキギターの歪んだ音色が引き立つ。たるっと酩酊に誘われ、ときどきの変化にビクッと心揺らされる。
 アコーディオンの艶めかしさも、チェロの頼もしさも本盤の魅力だ。しかしギターの渋い骨太さにやられた。
 
 リボーはバッキングでもソロでも、抜群のニュアンスを醸し出す。下手に揺らさず、それでいて冷たくない。アクセントかボリュームか譜割か。どの妙味だろう。もう一度聴きながら確かめよう。繰り返し聴いて、この素敵さにやられる盤だ。

 なお肝心の映画はLoren Marsh監督の、ブラックユーモア作らしい。公開は04年とあるため、本盤の発売が先だ。
 図らずも映画の宣伝をゾーンがしてる恰好か。トレイラー見ても今一つ内容が掴めない。なお分割だが全編がYoutubeに上がっているようだ。

  



Personnel:
Rob Burger: Accordion
Trevor Dunn: Bass
Erik Friedlander: Cello
Marc Ribot: Guitar
Kenny Wollesen: Vibraphone, Marimba, Drums

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