TZ 8006:John Zorn "Magick"(2004)

 ジョン・ゾーンの現代音楽集。オカルティック趣味全開な室内楽2曲を収録した、30分あまりの短い盤。


 前半は弦楽四重奏曲、"Necronomicon"(2003)。
 クトゥルフ神話の始祖である、ラブクラフトが創作した書物の名前から取られた。アブドゥル・アルハザードが著した架空の魔道書だ。
 本曲は5楽章に分かれ、副題は「呪文/魔術師/思念体/ゆりかご/アスモデウス(悪魔の名前)」と名付けられた。

 複雑なアンサンブルが行き来する楽曲は、おそらく数理的にも整合性が取られた楽曲と思われる。高速スピードの超絶技巧のみならず、和音や対位法に気を配った精密な曲。
 正直、聴き手の耳に優しくは無い。激しい跳躍や、急峻な場面転換などゾーンらしいおどろおどろしさが滲んでる。

 断片の旋律が素早く積み重なり、大きな世界を作る。緻密なアプローチで幻惑を作り上げる。感情でなく知性でオカルティックなムードを構築した一枚。
 脈絡の掴みづらい展開だが、繰り返し聴くほどに何となくつかみどころが出てきそうな気がする。

これは13年、JACK Quartetによる演奏風景。終演で歓声が聴こえるが、どこか小さめのスペースで演奏っぽい。


 後半は単一楽章で9分弱の単一楽章な曲、"Sortilege"(2001)。魔法、とか妖術って訳語らしい。
 バスクラリネット二重奏。クラリネット特有の、青白い響きがそこかしこに振り撒かれる。
 互いが音を撒きつかせるように、落ち着かない雰囲気で次々に音符が宙を舞う。テクニックとしては抜群の演奏だが、リードミスを誘発しそうな激しい跳躍と鋭いタンギングが怖くて、単純に聴いててハラハラする。たぶんこれ、サックス2本だともっと心穏やかに聴けたと思う。
 
 クラリネット特有の鋭い緊張感が映えた作品。これもメカニカルな数理作曲が施されてるのかもしれない。楽想としては論理一貫性がありそうで、どうにもつかめない複雑怪奇な展開だ。しかしノイジーな音色は一切使わず、純粋に楽器としてクラリネットを存分に響かせた作曲術が美しい。
 バスクラにもかかわらず、高域をふんだんに使うことで力強い浮遊性を演出した。
 
 これは別の奏者による09年の演奏。
 

Personnel:
Crowley Quartet
Jennifer Choi: Violin
Fred Sherry: Cello
Jesse Mills: Violin
Richard O'Neill: Viola

Tim Smith: Bass Clarinet
Mike Lowenstern: Bass Clarinet


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