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Acid Mothers Temple & The Melting Paraiso U.F.O. 「Wild Gals A Go-Go」(1999)

 オムニバス風に鋭さと温和を並列させ、混沌と浮遊を描いた。

 ロシアの映画監督Ivan Piskovのポルノ映画"Дикие Девочки А ГО-ГО"のサントラ、なていを取っているが、これは架空の設定。

 コミューンのようにわさわさと多様なメンバーがいた、アシッド・マザーズ・テンプル初期の盤。
 もともとは自主製作で1300枚限定のCDにて99年に発売。04年に米Eclipseが1000枚のLP限定で、06年に英SwordfishはCDで再発した。

 AMTがらみにしか参加クレジットをDiscogsで見つけられないミュージシャンが何人もいる。
 Ayanoは同時期に河端や東と、"宇宙"を結成。2枚のアルバムあり。
 Kaneko Tetsuya(漢字がわからない…)も当時、河端とトリオ編成でFloating Flowerも結成。AMTより2枚のアルバムを残した。
 吉田正幸はAMTより、ギューン・カセットの須原敬三寄りの人脈。後に山本精一の羅針盤にも参加した。

 バンドよりも河端ソロの色が濃い。基本の作曲者は河端。曲によって津山や小泉、コットンなどがクレジットされた。たぶん河端がほとんどのトラックを作り、そこへ各々が河端のディレクションで音を重ねたのでは。

 たるっと酩酊感漂うアルバムながら、ジャムっぽいルーズさは無い。コンボ編成の楽曲もあるが、アンサンブル的なダイナミズムも希薄だ。もっと個人の心の中へ沈殿していく、空虚な喪失感を、美しく音楽で紡いだ。

 全7曲入りだが、曲調はバラバラ。
 フォークっぽい爪弾きから女性コーラスをふうわりとサイケに漂わせる曲、後のAMTに繋がる猛烈なギター・ソロを中心に暴れ倒すセッション、など。
 音絵巻もしくはコンセプト・アルバムな統一感よりも、さまざまなアイディアを各曲にまとめ、そのまま無造作にアルバムへまとめた感じ。
 バラエティさを意識したコンピレーション風の面持ちだ。

 しかし散漫さは無い。あちこちにベクトルが向いていながら、ミニマルやドローン、インプロなど河端が好む志向は比重を変えつつ、各曲に通底した。
 起承転結よりもとりとめなく掴みどころ無い進展をそのまま曲として封じ込めた。

 アルバム前半は牧歌的な長閑さを強調した。
 (1)は静かなアコギの音に、残響感が豊富な女性の唸り声が足されてシンセが彩る。60年代っぽい古めかしいサイケ風味で、素朴な表情をみせた。
 途中で爽やかなギターのストロークと爪弾きに変わり、英国っぽい冷静な明朗性もあり。

 だが(2)は前半がギター・トリオのインプロっぽい風情に。女性の叫びをうっすら漂わせながら、じわじわとエレキギターが浸食してきた。歪みは控えめ。リバーブを強め。
 後半はインドのドローンっぽい怪し気さが濃い雰囲気に。津山が唸り出すと、英国トラッド的な妖しさも足された。これがコラージュ要素に移り、つかみどころはますます希薄に。

 (3)は女性二人のスキャットを軸のギター・アンサンブル。シンセが漂う。(1)と(2)を足した、とも取れる。

 アルバムの流れは、どんどん様子が変わっていく。(4)でヘヴィなギターを軸の轟音インプロを炸裂。そこから15分前後の長尺2曲を並べて、没入さを煽った。
 (5)はポスト・ロック寄りのスケール大きな風景を、歪んだギターが朗々と噴出させる。気怠い喪失感を持って、ざくざくとえぐるギターの鋭さがカッコいい。

 (6)になると。女性二人のスキャットを冷たい風のように吹き荒ばせ、ギターは音数を減らす。淡々としたリズムで寂しさを演出した。(3)のバリエーションと解釈しようか。

 後追いでAMTを聴いてる身としては、中盤以降の炸裂サイケをつい期待してしまう。しかし前半部分の荒ぶらない平坦な世界観も、癖になる吸着力に浸れる。

 アルバムの最初と最後は"Reverse Of Universe"と冠され、あたかも双方がバリエーションのよう。しかし後者はディレイと歪みで暴れ倒すエレキギターの本流で、音を聴くとそれぞれは真逆と分かる仕掛け。

 はじめは間口広く構えて、親しみ深く聴かせる。しかし中盤からグイっと暗黒へ引きずり込む。その大きな流れが本盤の狙いかもしれない。


Track list
1 Reverse Of Universe.1 6:53
2 Space Bambino / Intersteller Over Dope 10:09
3 Sweet Juicy Lucy 7:11
4 Mammary Intercourse 6:27
5 Hare Hare Hallelujah / Blow Out Super High 18:23
6 Good-Bye Ice Cream / Stone Blind Blue Heaven 14:29
7 Reverse Of The Universe II 6:08

Personnel
河端一: Producer, Engineer,electric guitars, bowed sitar, q'anoon, electric organ,keyboard, RDS900Cotton Casino: vocal, synthesizer
津山篤: bass, vocal, acoustic guitar, cosmic joker
小泉一: drums, monk
東洋之: synthesizer, fishing rod
吉田正幸: keyboards
須原敬三: inpatient
Kaneko Tetsuya: tabla
YoKo: drone machine, photo
Ayano: Space Hi!
Father MOO: telstar gnome
Eddie & Bill (COA): French voices

Recorded at Acid Mothers Temple Oct. 1998 - Aug. 1999

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