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Van Morrison 「Magic Time」(2005)

 五目味を狙ったか。挑戦しつつも軸はぶれない。

 アメリカではゲフィンから発売。ヴァン・モリソンは心機一転として、売れ線狙いでいろんな要素を織り込み、歳相応ながらもいくぶん派手さを試みたのでは。

 ロックやブルーズ、ケルト音楽。楽曲によって方向性を変えた。悲しいのは歌声の衰えがあちこちでジワッと滲むところ。
 この時期のヴァンはアルバムごとに企画盤的な色を作り、メリハリを出していた。いっぽうで惰性な要素も否めない。ぼくはヴァンのファンではあるが、どうもこの盤は辛口になってしまう。

 新しい地平を自ら作り出すよりも、蓄積した音楽そのものの歴史と、自分自身の懐深さでアルバムを作ってる。内省的に自分を見つめ直すよりも、もっと安直に才能に任せてあれこれと提示したって感あり。
 変に若ぶらず、新機軸を打ち出して痛々しくならない頑固さは高く評価する。本盤はファンならば楽しめる。しかし歳相応の落ち着きも漂わせた。
 
 あくまで等身大の表現、かつ売れ線を意識した客観性って意味では確かな成果を本盤で出している。
 還暦を迎えようって人に、新しいものを求めるのも変な話だ。その点でヴァンはむやみに自分を飾ってはいない。
 もしヴァンを知らないならば、この盤へ最初に触れるべきではない。いや、そもそも彼の場合は、時系列で聴いたほうが楽しめる。生きざまも込みで。

 不満めいた感想はここまで。あとは誉め言葉を並べよう。繰り返すが、本盤は決して悪い内容ではない。無理ないスタンスで聴きやすいアルバムを作ったのは間違いないのだから。

 (1)や(5)では危なっかしい音程も、(2)では朗々と喉を震わせた。たぶん丁寧に録音したら、老いを感じさせないこともできたはず。だがヴァンはそのへん、大ざっぱというかめんどくさがってるようにも感じる。
 細けえことはいいんだよ、と。

 ライブ感あるサウンドだが、けっこう細かくスタジオで作りこんでるっぽい。特にミックスは注意深く行い、歌声を前面に出しつつ様々に飾った。ドライに放り出したり、エコーで包んだり。アレンジごとにヴァンの歌声が良く聴こえるように、配慮されている。
 全編を包むのはブルーズ感覚。時にストリングスやホーンで飾りながら、華美になり過ぎない。

 60分弱のCDサイズに13曲詰め込み、過不足ないたっぷりしたボリュームを味合わせた。
 (9)のように強烈なセンチメンタリズムも堂々と入れながら、アルバム全体はカラッと整えた。
 その(9)はファッツ・ウォラーのカバー。(6)もファッツがカバーしており、なんだかさりげなく彼の色で一貫性を持たせた。
 なおもう一曲、(5)もシナトラが歌ったカバー。
 アルバム中央にカバーを固めて、全体の流れは緩やかにメリハリをつけた。

 しみじみとヴァンの歌声を楽しめるのが、アルバム後半(10)以降から。あまり声量が無く衰えた喉が悲しいけれど、それは仕方ない。受け入れよう。
 とりあえず最終曲の(13)で、この時点では最良と思えるシャウト気味の歌いっぷりも披露してくれてるし。
 大ラスでヨーデルを口ずさんで、おどけて笑うライブっぽさを残して軽やかに本盤をまとめた。

Track list
1 Stranded 5:34
2 Celtic New Year 6:10
3 Keep Mediocrity At Bay 3:44
4 Evening Train 2:48
5 This Love Of Mine 2:45
6 Just Like Greta 6:25
7 Gypsy In My Soul 4:04
8 Lonely And Blue 3:41
9 The Lion This Time 4:56
10 Magic Time 5:06
11 They Sold Me Out 3:11
12 Carry On Regardless 5:54

Personnel
Van Morrison - vocals, electric guitar, acoustic guitar, harmonica, alto saxophone
Mick Green - guitar
Foggy Lyttle - guitar
Michael Fields - Spanish guitar, lute
Martin Winning - tenor and baritone saxophones
Matt Holland - trumpet
Paddy Moloney - whistle
Myles Drennan - piano, Hammond organ
Brian Connor - piano, keyboards
Dave Lewis - piano
John Allair - Hammond organ
Jerome Rimson - bass, backing vocals
David Hayes - bass
Liam Bradley - drums, backing vocals
Noel Bridgeman, Johnathan Mele nee Jonathan Mele, Bobby Irwin - drums
Johnny Scott, Siobhan Pettit, Olwin Bell, Crawford Bell, Aine Whelan, Karen Hamill - backing vocals
Irish Film Orchestra - strings

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