TZ 7602 V.A. "Hallelujah, Anyway- Remembering Tom Cora"(1999)

 98年に逝去したトム・コラへ2枚組の追悼盤。未聴でしたら必聴です。


 トム自身の演奏、彼のカバー、彼を追悼した新曲。さまざまなアプローチで、多面的に偉大な才人トムの栄誉を称えた、素晴らしい企画と音楽が詰まった盤だ。カーリューやスケルトン・クルーやサード・パーソンなど彼の演奏を随所にはさみ、さらに新たな追悼曲を並べる。

 日本でのライブも多かった彼らしく、日本人も色々と参加。TZADIKでは本盤しか現れぬ顔ぶれも多い。またNYダウンタウン・即興シーンの初期、ジョン・ゾーンらが売出し中の時期と思われる貴重な音源も多数収録した。当時のNYシーンのショーケースとしても本盤は機能する。

 急転する時代を切り取った、刺激的なオムニバス。
 以下の収録クレジットだけで、ワクワクする人がいるはずだ。そしてその期待は十二分に応えられる。この盤はいずれ、一曲づつ細かく感想を書きたい。かなり時間かかるのでまずは箱と一部の感想、あとはクレジットを列挙して暫定アップします。

1-1 Lesli Dalaba "Cuimhnean Phiobair"
Composed By Sean Potts
Trumpet Lesli Dalaba

 作曲のSean Pottsはチーフテンズの元メンバーなトランペット奏者。なぜこの曲をトップへ持ってきたかは不明だが、東欧音楽に親しみを持ってたトム・コラへの讃歌か。
 ここでは二分足らずの短い時間で、うっすらエコーをかぶせて朗々とトランペットを鳴らす。特にフェイクもさせず、のびのびと鳴らして。98年、本盤用の録音。

 tp奏者のLesli Dalabaは80年代からNYを拠点に、ウェイン・ホーヴィッツやエリオット・シャープ、もちろんトム・コラとも共演を重ねたという。TZADIKからは"Timelines"(2004)のリーダー作が有り。

1-2 梅津和時 & Band "The Gospel Of Gone"
Composed By Tom Cora
Accordion 近藤達郎
Alto Saxophone 林栄一、梅津和時、多田葉子
Baritone Saxophone 野本和浩
Bass Clarinet 清水一登
Percussion れいち
Soprano Saxophone 中尾勘二
Tenor Saxophone 片山広明
Trombone 大原裕
Tuba 関島岳郎

 不勉強にしてこの音源用に結成か、前からのバンドかは不明。「街や風のざわめきをカットしないでください」と梅津が言うとおり、音楽の前後にノイズが聴こえる。98年、おそらく本盤のための路上録音。メンバーは凄まじく豪華だ。梅津の人脈による幅広い顔ぶれがそろい、整ったバスキング・サウンドを演奏する。
 ソロ回しは無く、賑やかに切なく穏やかに。トム・コラの楽曲を伸び伸び演奏した。チンドンとは違う整った響きだ。名演。
 しかし野本と大原も鬼籍か・・・。

1-3 Roof "Halts"
Cello Tom Cora
Bass Luc Ex
Drums Michael Vatcher
Voice Phil Minton

 97年、トム晩年の演奏。独ブレーメンでトムのバンドRoofのライブだ。この名義では以下2枚のアルバムを残した。
1996 "The Untraceable Cigar"
1999 "Trace" ‎
 ざっくっと空気を揺さぶるチェロと、ドラム/ベースのフリーな演奏にポエトリー・リーディングとヴォーカリーズで奇妙な前衛世界を作る。混沌とした世界だが、ひりひりする緊迫感がもたらす刺激は伝わってくる。

1-4 Fred Frith / Catherine Jauniaux "Talking To The Tree"
Guitar Fred Frith
Voice Catherine Jauniaux

 98年のトム・コラ追悼コンサートでのライブ録音。盟友フリスによる抽象的なギターは、音列や和音では無くひっかきが続く。弓弾きっぽい響きも。Catherine Jauniauxが啄むような囁き声を出した。
 ガツンとエレキギターが強く一音鳴り、低くCatherineが迫りくる瞬間がスリリングだ。

1-5 Curlew "Saint Dog"
Cello, Composed By Tom Cora
Bass Ann Rupel
Drums Pippin Barnett
Guitar Davey Williams
Saxophone George Cartwright

 トムのバンドCurlewによる90年の録音。4thアルバム"Bee"から転載だ。朗々とチェロが鳴る後ろで、もう一本チェロがいるかのよう。ダビングだろうか。ひとしきり独奏を聴かせたあと、ドラムが入ってニューウェーブ風の乾いたサウンドに変わった。
 ぼくはCurlewを聴いたこと無く、バンドとしての位置づけはコメントできない。
 どこか引っかかるリズムが、奇妙な揺らぎを施してると思う。
 
 ひりひりした乾きとバスキング風のセンチメンタリズム。相反する情感と冷静さが、絶妙に絡んでクールな響きを出した。ジャズの文脈だがスイングでは無く、違う方向と法則でグルーヴを出した。拍子が取りにくいが、三拍子で合ってるかな?

1-6 Amy Denio / Jeroen Visser "Seafaring"
Voice, Percussion, Guitar, Alto Saxophone Amy Denio

 Jeroen Visserはコラージュとマスタリングを担当し、音楽は全てAmy Denioの多重録音。テープ・サンプリングっぽいオーケストラと、ヴォーカリーズを載せる。抽象的だが使う音は具象音楽。コラージュっぽい仕上がりだ。ある程度の構成はあるものの、基本ははじまりも無く終わりも無い。
 Amy Denioは初めて聴いたが自主レーベルSpout Musicを主宰し、独自の活動を行う作曲家/マルチ奏者。鍵盤と木管、弦楽器を操る。98年、本盤のための新録音。

1-7 Tom Cora "Two-Day 'Til Tomorrow"
Accordion Tom Cora

 74秒の少品でアコーディオン・ソロ。フェイド・インで途中から始まる。83年の録音でCurlewのアルバム"North America"からの引用。チェロだけでなくアコーディオンでバスキング風の音楽をしたためる、トムの様子を偲んだ。
 音楽はさほど展開無く、ぶわぶわと無造作にアコーディオンが鳴らされる。

1-8 Gonogonogo "In Memory Of"
Performer いとうはるな, Samm Bennett

 二人のユニットSKISTとは別のバンド。当時にGonogonogo名義でどの程度の活動かは勉強不足で知らない。98年、本盤のための新録だ。
 シーケンサーでシンプルなリズムを刻み、そこへ電子音や断片的なメロディにヴォイスを載せる。今聴くとノイジーなエレクトロニカとカテゴライズしたくなるが・・・98年当時にこの音楽は、斬新なテクノ風味の電子音楽だったと思う。
 
1-9 Ululating Mummies "Jim"
Composed By Tom Cora
Accordion Barry Bless
Bass [String] Dave Yohe
Bass Clarinet George Lowe
Drums Pippin Barnett
Percussion, Keyboards Robbie Kinter
Tenor Saxophone Danny Finny

 Ululating Mummiesは2枚のアルバムを残した。
1995:Sacred Snacks ‎
1999:We Are Not Dead ‎
 このアルバムで初めて聴くバンド。録音日のクレジット無いが、たぶん本盤への新録だろう。トムが作ったこの曲は、Curlewのレパートリーと言う。ドラムのPippin Barnettが元Curlewメンバー。
 かっちりしたアンサンブルだが、テンポを無暗に詰めず穏やかな雰囲気を残した。一部大仰な展開もあり、中間部のソロ以外はアドリブ要素も低い。寛いだチェンバー・プログレの趣きだ。ほんのり切ないメロディが揺れる。
 
1-10 Shock Exchange "Just A Dream"
Double Bass John Edwards
Saxophone Caroline Kraabel

 Shock Exchange名義の単独アルバムはDiscogsでは見つからず。録音クレジットは無いが、たぶん本盤への新録でShock Exchangeの自作曲だ。
 素朴に音階を登る旋律が、淡々と行われる。奇妙な実験性でトムを偲んだか。特にサックスの揺れるピッチがむず痒い。あくまでアイディア一発の少品。とはいえ3分半ほどの尺だが。

1-11 Chris Cochrane / Zeena Parkins "Today"
Producer Tom Cora
Composed By George Cartwright
Piano Zeena Parkins
Voice, Arranged By Chris Cochrane

  87年の録音でトムはプロデュースを担当した。ピアノ伴奏のSSWっぽいアレンジだが、左手の重たい旋律と無秩序にひらひら鳴る右手の対比が、奇妙におどろおどろしいピアノだ。歌声は素朴にまっすぐ伸びる。クリアでシンプルな音像は、薄いリバーブを加え不思議な響きをもたらした。
 トム在籍バンドCurlewのメンバー、George Cartwright作曲。未発表に終わった、クリス・コッカレーンのアルバム用の音源を発掘した。

1-12 Oriental Fusion "Marseille Shout"
Alto Saxophone Edmond Hosdikian
Cello Tom Cora
Double Bass Barre Phillips
Drums Ahmed Compaore
Lute, Voice Hakim Hamadouche

 トムのセッション音源で97年の録音。仏マルセイユの地元ミュージシャンとの演奏とある。不勉強で共演者のキャリアは不明。音像としては無秩序なかき鳴らし。トムへ集団で襲い掛かるような構造か。フレーズの断片は出るものの、完全即興だ。
 アイディア一発ではなく、それなりに構成めいた安定感もあり興味深く聞ける。

1-13 Wayne Horvitz "Love, Love, Love"
Piano Wayne Horvitz

  サティを連想する、剥き出しでざらついた素朴なピアノ独奏曲。美しい和音を使いながら、どこかひずんだ歪みや響きを、そこかしこで感じさせる。調和と破綻、コントロールと即興を上手く渡り歩いた、トムへの追想ゆえのアプローチか。
 98年録音、トムへの追悼曲。

1-14 Tom Cora / Fred Frith / John Zorn "Casey R."
Alto Saxophone, Performer [Game Calls, Mouthpieces] John Zorn
Cello Tom Cora
Instruments [Homemade] Fred Frith

 マウスピースの鈍いロングトーンの無機質な響きが、ぱっと耳に残る即興。つかみどころ無く、抽象的な音像が漂う。リズムや譜割の解釈はほとんどなく、今日の赴くまま、楽器を絞って音を滲ませた感じ。低音の軋みや這うすごみが、じわりじわりと動いた。
 88年、NYのFM曲WKCR用で録音。ジョン・ゾーンが各種マウスピースを鍵盤のように使い分けてた頃の作品。後年の派手な自己主張は控え、音の一要素としてうまく溶け合ってる。
 フレッド・フリスの自主製作楽器とは、どの音だろう。トムのチェロそのものも、うまく聞き分けられない。結局、ゾーンの生み出す音が前に出ている。

1-15 Third Person "Weaklings"
Cello Tom Cora
Drums, Sampler Samm Bennett
Guitar Marc Ribot

 前曲と違和感なく即興の幕が開いた。ドラムのランダムな響き、チェロのうねり、エレキギターの爪弾き、電気仕掛けのビート断片がスペースを刻み合う。
 サード・パーソンの90年、ニッティング・ファクトリーでライブ音源。ゲストにマーク・リボーを招いた。CD"The Bends"からの転載。


1-16 A-Musik "Der Glater Bulgar"
Composed By Dave Tarras
Bass 小山哲人
Clarinet 大熊亘
Drums 中尾勘二
Guitar 春日博文
Keyboards 千野秀一
大正琴 竹田賢一
Saxophone Hiroshi Iwate

 このコンピは曲のつなぎ方も絶妙だ。やはり違和感なく日本の即興バンド、A-Musicとの共演セッションに音楽がつながった。トムは参加なく、95年に吉祥寺GOKスタジオでの録音。クレヅマー作曲家Dave Tarrasの作品演奏だが、どこかチンドンめいた解釈の演奏が彼ら流か。木管2管が同時進行でソロ取る瞬間がスリリングでいい。本盤用の未発表音源、かな?
 ギターの春日って、RCサクセションの人?なんか意外な人間関係だ。

1-17 Tom Cora / Wadada Leo Smith / Richard Teitelbaum / Carlos Zíngaro "The President Of The United States"
Cello Tom Cora
Synthesizer Richard Teitelbaum
Trumpet Wadada Leo Smith
Violin Carlos Zíngaro

 DJミックス風にカットアップで展開する即興。どこか艶めかしい響きを持つ。抽象的な中心を持たぬ断片が飛び交うインプロながら、旋律の断片がごくわずかポップな色を残した。これがトム流の集団即興か。2分半あたりの強いアルコ弾きで、ぐっとトムは存在感を主張した。
 93年5月のライブ。晩年、よく共演した二人にレオ・スミスがゲストで加わったカルテット編成だ。

1-18 Curlew "Light Sentence"
Cello, Composed By Tom Cora
Bass, Producer Fred Frith
Drums Rick Brown
Guitar Mark Howell
Saxophone George Cartwright

 Curlewの83年アルバム"North America"より。
 前曲から一転、ドライなギターのリフから始まる。わずかに変奏しながら繰り返されるギターへ、チェロがぐぐっと絡んだ。チェロ以外はきっちり譜面のある曲か。ベースもギターとユニゾンでテーマを奏で、ドラムが加わると混沌へ突入する。

1-19 Thierry Azam"The Week Tom Died"
Instruments [All] Thierry Azam

 メカニカルな電気仕掛けのリフに、ピチカートで静かにメロディを奏でる弦。夢見心地なミニマリズムが美しい。
 98年に自宅で多重録音の、トム追悼曲。弦の穏やかな響きがトムの象徴か。あえて周辺は賑やかかつ硬質な自由度でまとめた。切ない無機質さ、と相反する要素の混在が見事に描かれている。

1-20 Tom Cora "There Will Be A Happy Meeting"
Cello Tom Cora

 Disc 1最後はトムの独奏で90年の録音、アルバム"Gumption in limbo"収録曲。アメリカの伝承曲を素材に、軽快で明るい響きを聴かせた。バンジョーあたりが似合いそうな軽快なメロディを、チェロを軽々と操り多彩な奏法で盛り上げる。

 低音とメロディが同時に鳴るのは複弦奏法か。弓とピチカートが混在する場面もあるし、ダビングかな?ほんのり揺らぐ音程もご愛敬。総じてトムのチェロは流麗で重心軽く、奔放にメロディを溢れさせた。フレーズはほとんど崩さず、ごくわずかなフェイクに白人ジャズっぽさを滲ませる。ファンキーなグルーヴでなく、カントリー的な陽気さをこめて。

2-1 The Ex "The Flute's Tale"
Bass Luc Ex
Cello Tom Cora
Drums Katrin Ex
Guitar Andy Moor, Terrie Ex
Vocals GW Sok

2-2 Tom Cora "Burning Hoop"
Cello Tom Cora

2-3 The Chadbournes "Pitter Patter Panther"
Composed By Duke Ellington
Alto Saxophone, Soprano Saxophone, Clarinet, Performer [Game Calls] John Zorn
Cello Tom Cora
Drums David Licht
Guitar, Voice, Tape, Effects Eugene Chadbourne
Organ, Voice Kramer

2-4 Miya Masaoka / Larry Ochs / Bob Ostertag "Tomcat"
琴 Miya Masaoka
Sampler Bob Ostertag
Tenor Saxophone Larry Ochs

2-5 Gerry Hemingway "Tom Wood"
Percussion Gerry Hemingway
Recorded By Gisburg

2-6 Elliott Sharp / Frances-Marie Uitti "Mr. TC"
Cello Frances-Marie Uitti
Guitar Elliott Sharp

2-7 Skeleton Crew "Jelly Roll Stomp"
Composed By Jelly Roll Morton
Accordion Tom Cora, Zeena Parkins
Violin Fred Frith

2-8 Zeena Parkins "Fence"
Violin Sara Parkins
Cello Margaret Parkins
Harp Zeena Parkins
Mixed By Elliott Sharp

2-9 Tom Cora / Iva Bittová "Vepiranka"
Cello Tom Cora
Violin, Voice Iva Bittová

2-10 Nimal "Intenda"
Accordion Bratko Bibic*
Cello, Composed By Tom Cora
Bass Jean 20 Huguenin
Drums Pippin Barnett
Guitar Jean-Maurice Rossel

2-11 Nicolas Collins "Tromba Marina A Cora"
Electric Guitar [Backwards] Nicolas Collins

2-12 Pidgin Combo "Hoppas Att Det Går / Total Preparation"
Composed By Lars Hollmer
Voice, Cello, Composed By Tom Cora
Baritone Saxophone 篠田昌已
Bass 西村卓也
Chorus, Marimba Rorie*
Chorus, Piano 大熊亘
Drums Shinya Kimura

2-13 Hahn Rowe "Yellow Smile"
Instruments [All] Hahn Rowe

2-14 Tom Cora / Wolfgang Mitterer "Two Days 'Til Tomorrow"
Cello Tom Cora
Piano, Piano [Prepared] Wolfgang Mitterer

2-15 Tyson Rogers "Jesus Speak To Me"
Piano, Arranged By Tyson Rogers

2-16 Thomas Dimuzio "Radiotraces"
Computer, Edited By Thomas Dimuzio

2-17 Tom Cora / Chris Cutler / Fred Frith "One More Time"
Cello Tom Cora
Drums, Computer Chris Cutler
Guitar Fred Frith

2-18 Kramer & Tess "Tom's Lament"
Engineer, Producer Kramer

2-19 Skeleton Crew "Zach's Flag"
Cello, Drums, Performer [Contraptions] Tom Cora
Fiddle [Coda] Rebby Sharp
Guitar, Drums, Recorded By Fred Frith

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