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Baby Face Willette 「Face to Face」(1961)

 おっとりとファンキーなオルガン・ジャズ。

 リーダー作はブルー・ノートに2枚、アーゴに2枚。サイドメンもブルー・ノート時代に2枚のみ。録音は寡作で71年に37歳で他界したベイビー・フェイス・ウィレットの初リーダー作。
 ワン・ホーン・カルテットの編成だ。次作"Stop and Listen"(1961)でも、リズム隊は同じくグラント・グリーン(g)とベン・ディクソン(ds)だが、二人ともこの当時のバンド・メンバーか。

 サックスを吹くフレッド・ジャクソンはあまり他に録音の無いミュージシャンで、リーダー作は"Hootin' 'n Tootin'"(1962)のみ。
 ただし彼は元々R&B屋で、50年代はリトル・リチャードのバンドに在籍。60年代以降もジャズだけでなくソウルのアルバムにもいろいろと参加している。
 A2で強烈なタンギングでリードをぺちゃぺちゃ鳴らすあたりが、いわゆるストレート・アヘッドなジャズとは違うアプローチ。だけど別に、特にジャズっぽさが少ないわけじゃない。

 本盤の録音は61年1月30日に録音。A3だけスタンダード、あとはすべてウィレットのオリジナルになる。
 デビュー作にして力のこもった構成を取った。他のアルバムでも多寡はあれ自作曲をあれこれ投入しており、プレイヤーであると同時に作曲家志向が強かったようだ。

 アルバム全体のイメージは大人しい。スローかつムーディに迫るでもなく、熱く手なりで暴れるでもなく。もっと冷静沈着に全体を見つめてる感じ。
 ワンホーンのアレンジもきっちり整っており、奔放に吹かせず、細かなところまでウィレットが各奏者に構造を提示してたっぽい。

 その一方で突飛もしくは斬新な風景を目指さず、ブルーズ色の強いアプローチなのが面白いところ。才気走り独自の世界を狙うよりも、既存の音楽をクールに磨き上げる趣味だったのでは、と感じた。
 指はくるくる回る。ベース・ペダルもシンプルだが粘って、グルーヴを出した。ちょっとドタバタするアンサンブルに思える点もあるけれど、精緻なテンポ感よりも直観的に走ったりモタったりって味わいだ。
 
 それはサイドメンも一緒。テナーが最も安定感があり、ドラムとギターはウィレットと似たようにぎくしゃく揺れる場面があちこちにあり。
 にもかかわらずアンサンブルがそれなりに成立してる。あまり手慣れた感じはしないので、むしろクラブで演奏しまくった後に満を持して録音したレパートリー、ではなく録音当日にパッと渡された楽曲群をその場で解釈したぎこちなさ、ではないか。

 ウィレットのオルガンもこじんまりまとまらず、時に暴れる。A3でロングトーンを伸ばしながら、アドリブを重ねる荒っぽさが逆に素敵だ。
 初のリーダー作レコーディング・チャンスを掴み、全身全霊を込めたアルバム、ではないか。

 この盤は単純に音だけ聴いてもそつなく楽しいが、録音日や演奏メンバーを念頭に置いて空想を膨らませながら聴くと、深読みができて楽しい。

 そもそも本盤に至るウィレットの録音日が、せわしない。
 61/1/23 "Here 'Tis"(ルー・ドナルドソン)
 61/1/28 "Grant's First Stand(グラント・グリーン)
 61/1/30 【本作】

 一週間かそこらで、アルバム3枚にウィレットは参加した。そのうち1枚が初リーダー作だ。どれほど気負っても不思議じゃない。
 グリーンも上記盤がデビュー作。ドナルドソンのバンドはグリーンとウィレットが参加、グリーンの盤はホーン隊がいなくて本盤と同じトリオ。ウィレットは1曲を提供した。
 
 つまり一気に仲間内で集中して録音のチャンスを与えられ、張り切ったのではと推測する。
 アイディアを全て注ぎ込んだ。多少粗くてもご愛敬。気ぜわしく次々と、しかし作り込みは忘れない。そんな躁状態さと、端正な音楽を冷静につくる視点、双方がせめぎあっていたのでは。
 このフレーズの走りっぷりはノリが先に立ち、このイントロの整ったアレンジは作曲家志向か。音の端々に空想を膨らませながら聴くと、本盤のおっとりした全体像の影も、急に掘りが深くなる。


Track list
A1 Swingin' At Sugar Ray's 6:35
A2 Goin' Down 7:24
A3 Whatever Lola Wants 7:21
B1 Face To Face 6:17
B2 Somethin' Strange 6:42
B3 High 'N' Low 7:07

Personnel
Baby Face Willette – organ
Grant Green – guitar
Fred Jackson - tenor saxophone
Ben Dixon – drums

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