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Starship 「Knee Deep in the Hoopla」(1985)

 どんすか喧しいシンセ・ドラムが時代な、パワー・ポップ。

 サブスク時代で無ければ、聴き返さないアルバムだ。今、これこそが至高!ってファンは全世界に何人くらいいるだろう。発売当時はとても売れたし、80年代の懐メロとして需要はあるにしても。
 ジェファーソン・エアプレインから幾星霜。権利問題でジェファーソンの名前が使えなくなり、ジェファーソン・スターシップから名称変更して「スターシップ」となった初のアルバム。

 とにかくA1はくっきり耳にこびりついてる。"シスコはロックシティ"だ。なんてダサい邦題だろう、と当時から思ってた。
 A2もヒットしたな。当時はヒットチャートに興味を無くしてた、高校生だったぼく。しかしこの曲は覚えてる。レコードを買った記憶は無い。PVのイメージも頭にないので、MTV系の番組で見たわけでもなさそうだ。ラジオで聴いたのかな。
 その程度の興味でも、この曲は印象に残った。今回聴き返したのも、ふとこのメロディが頭をよぎったから。

 プロデュースはピーター・ウルフ。70年代後半にザッパのバンドに参加し、"Baby Snakes"などで痛快な鍵盤を奏でてた彼だ。
 バンドのメンバーはジェファーソン・スターシップから直結。エアプレイン時代から見ると、関係する顔ぶれはグレース・スリックのみ。いちばん残りそうにないサイケ時代のアイコン的なイメージだった彼女が、残ってたなんて。

 さて本盤。聴き返すとまず耳に残るのは、つるつるした音処理と、シンセ・ドラムの派手な響き。PC上のデジタルな音処理なんて無い時代のはずだが、シンセを駆使してみっちりとプラスティックな肉厚を出している。
 グレースは本盤で歌のみ、鍵盤は弾いていない。もっとも本盤で、あんまり存在感はないのだな。ツイン・ボーカルの片割れ、ミッキー・トーマスの声ばかりが印象に残る。 

 打ち込みでなく生演奏のため、バンド的なダイナミズムはあり。その分、肉感的。だがフレーズをサンプリングしまくりって風情な、メリハリ効きすぎた編集のアレンジがアナログな醍醐味をだいぶ希薄にした。
 ヘルシーなマッチョ感が全編に溢れるパワフルなサウンドで、哀愁とか内省って方向とは全く逆。不良っぽい荒々しさも無い。アイドル・バンドでもなかろうに。ひたすら前向きにグイグイ押す曲が並んだ。

 悲しいことに年代的に、この手の作品がぼくの青春時代の想い出の曲ってことになってしまう。だけど聴き返しても、ノスタルジーはサッパリ覚えないなあ。
 軽薄かつ表層的な享楽を良しとする風潮だった、嫌な空気しか思い出さない。悲しい。 
 なら聴き返さなきゃいいじゃん、ってのも正解の一つ。単に振り返ってみたかっただけなんだ。
 敢えて時代的な思い入れを振り捨てて聴くと、グランジ的な汚れや汗臭さが無く、アイドル・ポップな売れ線とは違うベテラン勢の「真剣な産業ロックづくり」が奇妙で面白い。
 彼らも売れようと思って作ってたはず。しかし手を抜いていいかげんにはしてなかったはずだ。新生バンドの第一弾なのだから。

 A面はなまじ記憶に基づく時代風景が脳裏をよぎり、素直に聴けない。でもB2あたりは緩やかな甘酸っぱさが、いい塩梅で耳に馴染んだ。サイケやパンク、ニューウェーブの屈折や、自家中毒の密室ポップとは違う、清々しい開き直りがいっそ心地よい。
 通して聴く中で、あからさまな捨て曲と感じる瞬間が無い。どれもキャッチーなサビと歯切れ良く聴きやすいポップ・ロックを目指してる。

 とはいえドンスカなるシンセ・ドラムが邪魔臭い。生ドラムだったら、もう少し普遍的な音になったろうに。ハイハットも目立たない。
 もちろん分厚いシンセも邪魔。シンフォニックさは時として面白いけれど、70年代プログレよりも逆に大仰過ぎてトゥーマッチである。仕方ないね、こういう時代だ。
 こういう当時の最先端を狙った機材こそ、古びてしまう。もっとも彼らは長期視点よりも、目先のナンバーワン・ヒットこそ望みだったはず。
 
 そして実際にA1で彼らは全米1位という結果を見事に出した。
 なんだかんだ言って、本盤を聴いてもう一度繰り返したくなるのはA1であり、A2である。すまん、想い出補正やっぱり入ってしまった。

Track list
A1 We Built This City 4:53
A2 Sara 4:48
A3 Tomorrow Doesn't Matter Tonight 3:41
A4 Rock Myself To Sleep 3:24
A5 Desperate Heart 4:04
B1 Private Room 4:51
B2 Before I Go 5:30
B3 Hearts Of The World (Will Understand) 4:21
B4 Love Rusts 4:57

Personnel
Mickey Thomas – vocals
Grace Slick – vocals
Donny Baldwin – drums, electronic drums, vocals
Craig Chaquico – guitars
Pete Sears – bass guitar, synth bass

Peter Wolf – keyboards
Les Garland – DJ voice on "We Built This City"
Peter Beckett, J. C. Crowley, Siedah Garrett and Ina Wolf – additional backing vocals on "Tomorrow Doesn't Matter Tonight" and "Love Rusts"
Kevin Dubrow – additional vocal on "Rock Myself to Sleep"
Dave Jenkins – additional backing vocal on "Desperate Heart"
Simon Climie, Lorraine Devon, Phillip Ingram, Martin Page, Chris Sutton and Oren Waters – additional backing vocals on "Love Rusts"

Peter Wolf – producer, arrangements
Jeremy Smith – producer, engineer

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