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Steve Coleman And Five Elements 「World Expansion (By The M-Base Neophyte)」(1987)

 ジャズ業界からファンクへの接近を試みた盤。

 1987年はプリンスが"ign "O" The Times"をリリースした年。ジョン・ゾーンは"Spillane"を発表、ネイキッド・シティはその3年先。
 30年以上たった現在、本盤の時代感が薄れて逆に古めかしく聴こえてしまう箇所もあるけれど。当時をプリンスやジョン・ゾーンの盤を基準に、同時代的における本盤の過激さを思い起こそう。

 スティーヴ・コールマンとファイヴ・エレメンツの2nd。まだ粗削りで、M-Baseの方法論も成立していない。参加ミュージシャンは後年に馴染みの顔触れが並ぶけれど。
 ポリリズムと変拍子。デジタルなビート感を導入して、フュージョンの爽やかさとは明確に一線を画す。
 一方で生演奏を大切にしつつ、ハードバップやフリージャズの路線には安直に乗らない。

 さらにほとんどの曲でボーカルを投入し、楽器のアドリブ・ソロも形骸化させた。アルバムの中央部分では、そうでもないけれど。
 バブルにはまだ少々早い。しかしシャレオツで軽薄な空気感は確かに香ってた。右肩上がりの勢いを見せながら、ごったなミクスチャーでの異物感までは行かない。
 コールマンは自らの美意識と才覚で、本盤を作り上げた。

 M-Baseは商業的にさほど成功せず、そのまま時代の仇花と廃れてしまった。近年に、菊地成孔がDCPRGで少しオマージュをみせたけれど、M-Baseそのものは主流には程遠い。
 ぼくが本盤を聴いたのはもう少しあと。90年代前半かな。すでにM-Baseが尖りを持ちえなかった頃合いのため、きちんと本盤へ迎えていない。流行足りえなかった実験精神、とバイアスかけて聴いてしまうから。

 久しぶりに本盤を聴いてみたのも、ちょっとした気まぐれ。
 時代を超えた名盤、と持ち上げづらい。特にボーカル入りの曲は、中途半端な構築性がもどかしい。
 だが時代の仇花と切り捨てるには惜しい魅力はある。ジャズが力を持たず、ウィントン・マルサリスがジャズを芸術もしくは過去の遺物とたてまつった中で、いかに躍動感を持たせるか。
 そんなコールマンの意地を感じるからだ。

 コールマンは本盤で、ジャズそのものに生命力を注ごうとしていない。演奏とアドリブって要素を歌に込め、P-Funkらのわさわさっとしたパワー、EW&Fの無菌室な精緻さを混淆させ、テクニカルで複雑なファンクを本盤で目指した。
 プリンスが密室的なファンクで時代を引っ張り続けたのと、違う方向で。ジョン・ゾーンがジャズを解体し、即興の制御で風景の塗り替えを図ったのと異なる視点で。

 本盤を聴いてて、コールマンはバンド・サウンドに希望を持っていたように思える。打ち込みやダビングに頼らず、一発録音のせめぎあいに可能性を感じていたのではないか。
 実際のところ本盤は、歌などはダビングっぽいところもあるし、打ち込みを利用の曲もあるけれど。

 フリー・ジャズに走り、一部の好事家狙いではない。歌モノで逆にマーケットに媚びもしない。前衛もしくは先鋭さを意識しながら、聴きやすさも目指す。
 絶妙なバランスと落としどころを狙いつつ、自分の創作意欲も満足させる。そんな細い道を敢えて選び、アイディアを次々に放り込んだ。

 本盤はアルバムの完成度や、一曲をたっぷり聴かせるって方法は取っていない。
 小品をズラリ並べ、ヒップホップやファンクを横目に、ジャズ側でも落ちぶれちゃいないぜって意地をみせた。

 確かに今の耳で聴くと、かなり温い。もしくは、味気ない。本盤を踏み台の一つに、ジャズも音楽も進歩し続けたから。でも、例えばグラスパーを聴いたあとに本盤を聴くと、コールマンの狙った鋭く硬質なジャズは、現代に続いてたって感じないかな。
 ジャズって方法論に縛られず、あれこれ取り入れサウンドを引締めてる点に。

 最終曲でメンバー紹介が、次々に行われる。このライブっぽい終わり方は、コールマンが自分と仲間に自信持ってる表れで好ましい。

Track list
1 Desperate Move 6:15
2 Stone Bone Jr. 1:11
3 Mad Monkey 3:34
4 Dream State 6:34
5 Tang Lung 2:47
6 Yo Ho 4:02
7 And They Partied... 4:15
8 In The Park 2:07
9 Just A Funky Old Song 2:23
10 Urilai Thrane 1:50
11 To Perpetuate The Funk 7:01
12 Koshine Koji 1:41
13 Tlydor's Bane 4:14
14 Park (Pt. II) 0:56
15 Fire Theme (Intro) 1:56

Personnel
Steve Coleman - alto saxophone, vocals
Graham Haynes - trumpet
Robin Eubanks - trombone, backing vocals
Geri Allen - keyboards, piano
Kelvyn Bell - electric guitar
Kevin Bruce Harris - electric bass, backing vocals
Mark Johnson - drums
D. K. Dyson (tracks 1, 5, 6, 11 & 13) Cassandra Wilson (tracks 3, 4 & 9), Jimmy Cozier (track 2) - vocals
Malik Cozier, Kelana Jackson, Tameka Jackson - backing vocals (track 2) 

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