音楽の再発と強度

 「再発盤のあれが安い、これがお得」は下品だ。もう控えよう。ミュージシャンへの敬意に欠ける、とかきれいごとはさておく。なんかもう、きりがないなと今回Amazon見てて思った。


 愕然としたのがデジタル・ミュージック。ジャズは、なんかもう凄いことになっている。「12 Classic Albums 1956-1962」ビル・エヴァンスが360円。代表的なアルバム12枚が入って、この値段だ。今度から「ジャズの入門盤って?」聴かれたら、これ薦めよう。牛丼一杯かそこらの値段だ。ためしにリンク先を見てください。


 音質がどんなもんかは知らない。ジャケットや解説も無い。前者はともかく、後者は音楽とは別次元の価値観だ。パッケージ込みの所有欲であり、デザインの鑑賞だから厳密には音楽と関係ない。

 もう再発はパッケージとかレア音源とか、本当の意味で新しい価値観を付与しないと商品が成立しないなあ、と思いながら再発盤をチェック。なんか知らんが、色々と出てる。
 まずジョージー・フェイム「コンプリート・レコーディング1963-1966」。これは興味深い。『大量のボーナス・トラックを追加したデビュー・アルバムからの4作に、デモやアウトテイク集をつけた全5枚組。』だそう。お値段¥10,800。
 これがもう、高いか安いかは分析してもしかたない。一曲当たり幾らってのも、スイカのたたき売りみたいで嫌だし。金出す価値があるかを決めればいいや、と。



 続いて「Marvin Gaye 1961」¥ 3,720。安っす。ああいかん、言っちまった。いかん。紙ジャケ7枚組でデビューからのLP7枚を収録。ノーザン一辺倒になる前の盤って、個別リイシューあったとしても聴くのにためらいあった。こういう箱でまとめて聴くのも良いな。


 次はシカゴ。「The Studio Albums 1979」¥ 5,450。13から32までを収めた10枚組Box。80年代以降のシカゴはややこしいが、要するに「13/14/16/17/18/19/21/Night & Day/30/Stone of Sisyphus」の10枚らしい。2012年に出た初期盤10枚組の続編か。
 

 
 もいっちょ。Taste「I'll Remember」¥ 5,138 、4枚組。このバンドは寡聞にして知らない。ロリー・ギャラガーが参加のグループだそう。アイルランドではともかく日本の知名度はマイナーだった。だが4枚組とか「ワイト島ライヴ 1970」などが今回、リイシューされる。こういう過去のカタログに価値観つけて再商品化こそが、再発ビジネスの醍醐味だろう。
 音楽的にはともかく、売れ行き的にはこのテイスト盤が一番興味ある。世界でどのくらい売れるんだろうね。
 

 ビーチ・ボーイズの「ペット・サウンズ」は80年代当時、誰も知らなかった。知る人ぞ知る、じゃない。ほんとに評価されてなかった。ところが今や価値転換が激しく起こり「至高の名盤」と称えられる。今回、テイストの再発はどのくらい新たな価値を生むだろう。

 最後に、この日記で一番書きたかったこと。
 今のBGMはV-Disc集。V-Discは太平洋戦争中に米軍の戦意発揚で当時のミュージシャンが協力した音楽を指す。つまり70年前の音楽だ。これが今でも強度を持って聴けるのは、ちょっと首をかしげる。自分の中で、価値の転換がなされてない。
 前も日記で書いてるが、ぼくが音楽聴き始めたのは80年代。当てはめると1910年代の音楽に強度と同義になる。

 80年代ですら「ドント・トラスト・オーバー30」って言葉は強度を失ってた。今は70代のミュージシャンも現役だし。音楽分野だけでいうと一体いくつ以上が、若い連中は仮想敵だろう。
 ロックは体制反抗の象徴だった時代を、ぼくはリアルタイムで知らない。パンクやヘビメタもファッション化しかてけた。しかしヒップホップは鋭利だったし、その後にドラムンベースなどクラブ・ミュージックも価値転換の舞台になってたと思う。

 だが今の若い連中が「ジジイには分からねえよ」と聴く音楽は何だ。ヴェイパーウェイブか。ボカロか。まさかAKB48ではあるまい。「新しい音楽は死んだ」なんて言うのは年寄りの繰り言だ。ぶっちゃけ、それを考えるのは若いもんの仕事だ。
 今の若いのが熱中する音楽ジャンルってなんだろう。知りたい。聴いてみたい。それを楽しめなかったとき、本当にぼくは歳を取ったことになる。

関連記事

コメント

非公開コメント